デジタル時代に企業が行うべきこと 価値創造のための3つのステップとはWeekly Memo(2/2 ページ)

» 2019年01月28日 13時00分 公開
[松岡功ITmedia]
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「固有の価値×長期的な価値×広範囲な価値」を目指せ

 第2のステップは、価値を継続して高めていくこと。つまり「長期的な価値」だ。同氏は、「ユーザーがより長期的に価値を感じ続けることが重要だ。利用状況を継続的にモニタリングし、ユーザー特性に適合したサービスにチューニングしていくことが必要になる」と説明。また、「その過程で思いもしなかった新たな使い道を見いだすこともある」とも語った。

 ただし、長期的な価値を創るうえでも陥りやすいワナがあるという。商品やサービスの提供開始時点で全ての機能を備えた「完成品」だと認識する傾向があることや、PoC(実証実験)のような試行段階においても最初にユーザーの反応が芳しくないと撤退してしまいがちなことだ。

 そうしたワナに陥らないために、同氏は、サービス内容は提供後も変更可能なものだと考え、小さく始め、継続的にアップデートしていくことや、サービスそのものの中に機能を後からアップデートしていく仕組みを作っておくことが重要になると説明した。

 そして、第3のステップとなるのは、価値の幅を広げていくこと。つまり「広範囲な価値」だ。これについては、「ユーザーの行動は連続的で幅広く、ある企業が提供するサービスのカバー範囲はユーザーの行動のごく一部にすぎない。そのカバー範囲を広げていくことによって、より高い価値が提供できるようになる。それには、他社のサービスと連携することが有効だ。APIなどによって他社との連携が簡単になりつつあるので、活用できるようにしておくべきだ」と説明した。

 ただし、この広範囲な価値を創るうえでも陥りやすいワナがあるという。品質確保やデータ活用ルールを考慮しすぎ、自社に閉じたサービスを創ってしまうことだ。このワナに陥らないためには、自らのサービスを開放し、他社のサービスも積極的に取り込むことが重要だと語った。

 そのうえで本間氏は、「デジタル時代においては、個を意識して創った固有の価値をベースに、長期的かつ広範囲に広げていくことが有効だ。すなわち、これら3つの価値――「固有の価値」「長期的な価値」「広範囲な価値」の掛け合わせがキーポイントになる」との見解を示した。

 最後に、本間氏が固有の価値の説明の中で紹介した日本の工業デザイン界の第一人者である川崎和男氏の言葉(下記写真)を挙げておこう。『橋をデザインしてくださいという頼み方はしないでほしい。川を渡る方法論を考えるべき〜中略〜さまざまな角度から(方法論を)考えることが本当のデザインである』といった川崎氏の言葉に、固有の価値におけるユーザーへの深い理解の意味を重ね合わせていた。

 医学博士でITにも精通した川崎氏には、筆者もかつてインタビューしたことがある。せっかくなので、その際に印象深かった言葉も一言添えておきたい。

 「情報としてこれから求められるのは、人の生き方のコンテクスト(文脈)のようなものではないか。そこでは“経験の質”が重要な要素になる。そう考えていくと“Quality of Life”というのは、実は“Quality of Experience”にほかならない」

 写真の川崎氏の言葉とともに、読者諸氏の何かの気付きになれば幸いである。

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