ハンディは一切なし、IBM製AIと人間が“討論”でガチ対決 20分間の激論を制したのは?IBM Think 2019(2/5 ページ)

» 2019年02月15日 08時00分 公開
[高木理紗ITmedia]

3ラウンド勝負で説得力を比較 AIと人は、それぞれどう準備した?

photo 「Project Debater」

 「こんにちはHarish。あなたはこれまで人間相手のディベートでは輝かしい成績を収めてきたけれど、機械と対戦したことはないでしょう? 未来へようこそ」(Project Debater)

 ディベートの最初、沈黙を破ったのは、AIが低い女性の声で放った不敵なジョークだった。固唾(かたず)をのんで見守っていた聴衆から笑いが漏れ、場の緊張は一気にほぐれた。

 「Project Debaterには、あらかじめ『機械であること』『AIであること』といった題材を使ったジョークの文章をプログラムしてあります。しかしそれをいつ、どんな順番で、どんな内容を組み合わせて使うかはAI次第です」(IBM Research Project Debater開発チームマネジャー Ranit Aharonov氏)

 試合は3ラウンド制で、1ラウンド目では双方がそれぞれ4分間意見を述べ、2ラウンド目で同じく4分間を使って相手の意見に反論。3ラウンド目では2分間でそれぞれ最終弁論を行う。勝敗は、試合の前後に司会が会場からスマートフォン経由で投票を集計し、観客の意見がどう変化したかで決める。

photo Harish Natarajan氏は、2012年に欧州のディベート選手権で優勝し、2016年には世界ディベート選手権で決勝に進出した実績を持つ

 双方はディベートの開始15分前にトピックについて知らされ、各ラウンドの前に数分間の準備時間を与えられた。

 Project Debaterは、「Watson Speech to Text」を使って人の話す内容を聞き取って理解する。

 インターネットには接続せず、過去8年間に出版された4億件程度の新聞や雑誌などから学習した内容を使って組み立てた議論を、既に学習した100億を超える文章を使って分かりやすく明確な表現に落とし込む。また、各ラウンドで対戦相手が行った議論を理解し、説得力のある反論の文章を練り上げる。今回の場合、「前もって用意してあったのは、最初に対戦相手にあいさつするフレーズだけ」だったという。

※編集部註:初出時に「400億件程度の新聞や雑誌などから学習した100億を超える文章を基に、各ラウンドで対戦相手が行った議論に対して説得力のある反論の文章を練り上げる」としていましたが、内容を修正しました。(2019年2月16日)

 今回のトピックは、「保育園や幼稚園に補助予算を出すべきか?(Should we subsidise preschool?)」。Project Debaterは「賛成(先攻)」、Harish氏は「反対(後攻)」の立場を割り当てられた。

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