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» 2019年02月15日 08時00分 公開

ハンディは一切なし、IBM製AIと人間が“討論”でガチ対決 20分間の激論を制したのは?IBM Think 2019(3/5 ページ)

[高木理紗,ITmedia]

AI対“優秀な人間”が繰り広げたハイレベルな戦い

 IBMは実際のディベートの映像をWebサイトで公開しているが、Project Debaterが話した様子の一部を抄訳すると、以下のようになる。

 「幼児教育への補助は社会全体に貢献しますし、それは私たちの義務です。行政からの補助は、特定の産業や人々を支える手段でもあります。私はこれから2つの観点から議論したいと思います。1点目は『なぜ、それが投資として有効か』という観点。2点目は貧困を防ぐ観点です。

 まあ、私自身は貧困を直接体験できる立場にありませんし、自分の状況について文句はありませんが、それでも貧困については意見があるんですよ? (中略)National Institute for Early Education Researchが1960年から2013年にかけて行った調査の統計では、質の高い幼児教育の結果、子どもは学業で長期にわたって好成績を修め、社会的にも恵まれた生活を送れる点が示されています……」(IBM Project Debater)

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 Project Debaterは、与えられた4分間を使って最初に自らの意見を述べ、その理由を複数に分けて明示した後、さまざまな論文や統計を引用し、自身が組み上げた論理を裏付ける、という順番で話す。話すスピードは、ラジオやテレビで私たちが耳にする天気予報程度だ。ところどころにユーモアを交えるのも忘れない。聞く側に親しみや共感を抱かせるのは、ディベートの有効な戦略の一つだ。

 「実際に女優に来てもらって録音した音声を基に、話す内容に応じて声のトーンに人間的な感情を持たせる工夫もしています」(Aharonov氏)

photo (左から)司会のJohn Donvan氏、IBM ResearchのNoam Slonim氏、Project Debater、IBM ResearchでProject Debaterの開発チームのマネジャーを務めるRanit Aharonov氏、対戦相手のHarish Natarajan氏

 対するNatarajan氏は、現在は企業向けにリスク分析サービスやセキュリティサービスを提供する「AKE International」で経済リスク担当部門を率いるが、オックスフォード大学やケンブリッジ大学の大学院で経済学や政治、哲学を修め、それぞれ優秀な成績で卒業。2012年には欧州ディベート選手権で優勝した“超強敵”だ。

 同氏は、「幼児期の教育が必ずしも本人の成長に良い結果をもたらすわけではありません。また、予算を使って補助したからといって、必ずしも質の高い幼児教育をあらゆる機関で提供できるとは限りません」「政府が補助に割ける予算は常に限られています。貧困層は助かっても、より多くの税金を払い、幼児教育に私費を投じてきた中流家庭は大きな負担を背負いますよね」と、社会的な課題を挙げながら冷静に反対意見を展開した。

 これに対し、Project Debaterは、「幼児教育が良い効果を生まないこともある、というあなたの意見には賛同しかねます」と、異なる研究データや政治家の格言を引用しながら反論。双方一歩も引かない戦いを繰り広げた。

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