インタビュー
» 2019年03月14日 08時00分 公開

【特集】Transborder 〜デジタル変革の旗手たち〜:東大卒、デュポン、メルカリ経由で梨農園に飛び込んだ 「畑に入らない農家の右腕」の正体 (3/4)

[池田憲弘,ITmedia]

「家業から事業へ」 阿部梨園が抱えていた課題とは?

 「阿部梨園」は9種類の梨と桃を作る梨農家。代表を務める阿部英生さんは26歳の時に梨農園を親から譲り受けて以来、約10年間一人で農園を切り盛りしてきた。オリジナルのパッケージを作ってみたり、取引先を増やしたり、梨づくりの“修行”をしたりとさまざまな施策を行っており、「ボランティアの募集」や「販促イベントの開催」といったテーマのインターンをサポーターズネットワークで募集していた。

 佐川さん自身が阿部梨園に興味を持ったのは、実はインターンの内容ではなく、同園が掲げていた「家業から事業へ」というスローガンだった。家族経営から脱するため、正社員採用を始めた時期だったという。

 「家業というのは、どうしてもその一家に対して最適化したビジネスになります。それ以外の従業員やパートさんなどは、あくまでそれを支える“次点の存在”になってしまう。事業というのは、責任も利益も従業員全員で分かち合うイメージだと考えています。ただでさえ、農業は給与面など労働条件が悪くなりがちです。従業員と一緒に長く働けるような体制ではなかった。その点は、阿部も大きな問題意識を持っていました」(佐川さん)

 農業は大学で勉強してきたものの、現場に深く入り込んだ経験はない。大学の人たちが知らないような経験が手に入るのではないか。そういった考えもあり、4カ月無給という条件ではあったが、佐川さんは阿部梨園でのインターンをスタート。働き始めてすぐに、梨のおいしさと直販での人気の高さに驚く一方で、業務効率や経営の部分に課題があると見抜いた。

photo 阿部梨園の「梨」は贈答用をはじめ、その多くを直販で売り切るほど人気が高い

 「駅からも結構離れているこの農園に、ひっきりなしにお客さんが梨を買いに来るのには本当に驚きました。ただ、その一方で収穫、梱包、出荷といったオペレーションから、注文の取り方、出荷管理といった部分はぐちゃぐちゃ……というか、阿部さんの頭の中にしか『絵』がなく、それを口頭で指示する形だったので、無駄が多く、マネジメントがうまくいっていない状態でした。

 製造業出身だったこともあり、業務効率はまだまだよくできそうだと考えるうちに、集客や企画じゃなくて、まずはこれを改善しなきゃいけないんじゃないかと思うようになりました。そこから、経営改善の話につながっていったわけです」(佐川さん)

 そこで佐川さんは、インターンのテーマを「業務の最適化」や「社内の仕組み作り」に変更することを阿部さんに提案する。腹を割って話し、「本気で経営を変える」という目的で意気投合。インターン終了までに、大小含めて100件の改善を約束した。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ