AWSを忌避する企業もあれば、積極的に活用している企業もある。だが政府はAmazonに疑念を抱き、介入を強めている。
第2回(Computer Weekly日本語版 3月20日号掲載)では、AWSから顧客を奪うGoogleとMicrosoftの動向を紹介した。
第3回では、競合他社をも魅了し顧客を獲得するAWSの底力と、Amazonへの圧力を強める規制を取り上げる。
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AWSの企業顧客には、直接Amazonと競合関係にありつつもAWSのクラウドを使用する企業も確かに存在しており、特筆すべき例が幾つかある。
映画とテレビ番組のストリーミングサービスを提供するNetflixは、中核事業が直接「Amazon Prime Video」と対立関係にあるものの長年AWSを利用している。
自社商品をAmazonで販売するために利益競合を脇に置く小売業者が多数存在することも注目に値する。Amazonは2019年1月初頭、インターネット規制に関する英国貴族院通信委員会の公聴会に出席し、その点について説明している。
Amazon UKとAmazon Irelandの公共政策担当ディレクターであるレスリー・スミス氏が公聴会で示した数字によると、Amazonで購入される全項目のうちサードパーティーの小売業者(個人出品者と大衆向けブランドを含む)が占める割合は50%を超えるという。
スミス氏は、Amazonの目標は顧客に「必要なものや欲しいものを全て」オンラインで提供することであると委員会に語り、このためにはそうしたブランドと対立するのではなく協力することが必要だと述べた。
「競争には勝ちたいし、ユーザーも魅了したい。競合他社を排除するとは少しも考えたことがない。ビジネスはそういうものではない」
スミス氏は、地域の郵便局や生活協同組合のスーパーマーケットでAmazonの品物を受け取れるようにする「Click and Collect」サービスの導入を紹介し、英国大衆市場で勢いをつけるために小売業者と協力している例を示した。
「ユーザーが使えるのはAmazonだけ、そして品物を受け取れる場所は自宅に限られるということはない。選択肢は非常にたくさんある」(スミス氏)
進んでAmazonと提携し、商品を販売し、Click and Collectの受取場所を設置する小売業者が非常に多いのは、各社の利益のために事業を展開しているという信頼がAmazonブランドにあるためだ。AWSが2019年度に力を入れるのは、契約を結んでいる小売業者との信頼を同じくらい高く築くことになるだろう。
CCS Insightのマクワイア氏は次のように語る。「2019年は、AWSが市場の至るところで信頼を構築しなければならない。Amazonがかき乱した業界では特にそうだ」
「AWSはAmazonという企業体の中の組織として、将来的にデジタル変革とクラウドをさらに深く追求していく中、企業が信頼できるプラットフォームにどうやって成長していくのだろうか」
Amazonなど多くのIT系大企業は昨今、その規模や影響力が市場の独占につながっているという懸念により、米国と欧州の規制当局によって労働慣行の調査を受けている。
英国貴族院通信委員会がAmazonとの会談でこの話題を出したが、スミス氏は強い口調で否定し、Amazonがクラウドもオンライン小売業界も独占していないことを宣言した。
欧州委員会の競争担当委員は2018年9月、Amazonの小売りプラットフォームが業者データを使用する方法の調査準備に入ったことを認めている。
貴族院の公聴会でこの件について尋ねられたスミス氏は、Amazonのプラットフォームで商品を販売しているサードパーティー業者の売上高データにAmazonはアクセスできないと述べた。
「当社がそのようなデータにアクセスすることは不可能だ。マーケットプレース販売者が自身の商品の販売状況を見ることはできても、当社のマーケティング担当者が、各マーケットプレース販売者に関連した売上高データを表示することはできない」(スミス氏)
このような宣言がなされてはいるが、Amazonの影響力とデータ使用に関する懸念を払拭(ふっしょく)する解決策として、業界専門家は企業の分割を何度も提案している。
だがマクワイア氏は、そのような措置を取ったところで小売業者によるAWSとAmazonの見方は変わらず、監査機関なしに分割が実現する可能性は低いと考えている。
「実際のところAWSと小売りビジネスは、世間で言われるよりは関係が薄い。だがAWSの優れた利益構造への依存は大きいため、内部から分割が起こることはない」と同氏は話す。
「本当に企業分割が起こるとすれば政府の介入に大きく頼る必要があるため、EUの判断が重要になる」(マクワイア氏)
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