連載
» 2019年04月24日 07時00分 公開

半径300メートルのIT:「お金を払ってセキュリティを学ぶ」のは平成で終わり? ある無料教本が神レベルで優れている件 (3/3)

[宮田健,ITmedia]
前のページへ 1|2|3       

読むべき理由4:ここに目を通すだけで姿勢が変わる? リアルな攻撃のシナリオを紹介

 ビジネス向けセキュリティに特化した本テキストでは、章が進むごとに、個人向けの黄本とは構成が変わってきます。

 特に第3章では、

サイバー攻撃に遭うと、被害は自分や会社が持つお金や情報を奪われてしまうだけと思っているかも知れませんが、実はそれだけではありません。

 と指摘した上で、標的型メール攻撃、フィッシング攻撃、不正アクセス、不正送金、ランサムウェア、Webサイト改ざん、DDoS攻撃など、一通りのシナリオを紹介しています(72ページ)。万が一攻撃を受けたときにどこに相談し、届け出るべきかということにも触れています(80ページ)。

 恐らく、本テキストを読んだかどうかで企業のサイバー攻撃対応スキルは大きく変わるのではないでしょうか。

コラムだけでも目を通してほしい

 この他にも、本テキストは「組織の一員としてSNSとどう付き合っていくべきか」といった点をはじめ、経営者のデジタル相続としての「終活」にまで触れています。これらは単独のコラムとしてまとめられていますので、コラムを読むだけ十分な知識を養えると思います。

 個人的には、本テキストが「フリー素材とコンテンツ利用のスキル」における無断使用のリスクに触れつつ、コラムで「プロの仕事の謎を解明し、身に付ける」とし、コンテンツそのものではなくテクニックを学ぶべきということにも触れている点に関しては、バランスよく取り上げていると感じました。

 多くの経営者は「セキュリティは難しい」と感じているでしょう。あまりに幅が広く、どこから手を付けていいのか分からないというのが本音だと思います。私は本連載でなるべく最新のトピックを取り上げようと考えていますが、その結果として、各話が個別の話題に特化した「点のセキュリティ」のように見えてしまうかもしれません。それらを網羅するように線でつなぐ行為が本の執筆だとすると、その長さや範囲の広さが重要になります。

 その意味で、NISCの「小さな中小企業とNPO向け情報セキュリティハンドブック」は、私がこれまで読んだ本の中でも抜群に“広い”本です。これが無料で配布されていることは本当にうれしいことです。同時にそれは、国民全体のセキュリティレベルを上げていく必要がある、という日本政府の意志のあらわれともいえます。

 本テキストの前書きには「サイバーセキュリティは全員参加! セキュリティは『公衆衛生』の時代に」という宣言が書かれています。専任のセキュリティ担当者がいない中小規模の企業で活躍する皆さん、大企業にお勤めの皆さん、そしてそのご家族全員にお勧めしたい良書です。

著者紹介:宮田健(みやた・たけし)

『Q&Aで考えるセキュリティ入門「木曜日のフルット」と学ぼう!〈漫画キャラで学ぶ大人のビジネス教養シリーズ〉』

元@ITの編集者としてセキュリティ分野を担当。現在はフリーライターとして、ITやエンターテインメント情報を追いかけている。自分の生活を変える新しいデジタルガジェットを求め、趣味と仕事を公私混同しつつ日々試行錯誤中。

2019年2月1日に2冊目の本『Q&Aで考えるセキュリティ入門 「木曜日のフルット」と学ぼう!〈漫画キャラで学ぶ大人のビジネス教養シリーズ〉』(エムディエヌコーポレーション)が発売。スマートフォンやPCにある大切なデータや個人情報を、インターネット上の「悪意ある攻撃」などから守るための基本知識をQ&Aのクイズ形式で楽しく学べる。


前のページへ 1|2|3       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ

マーケット解説

- PR -