「デジタル革新がビジネスにおける“信頼”のハードルを上げる」――富士通の次期社長が自社の年次フォーラムの基調講演でこんな問題を提起した。果たして、どういうことか。
「デジタル革新が進めば、ビジネスにおいて信頼を守るというハードルがこれまでより一層上がる」
こう語るのは、2019年6月24日に富士通の社長に就任する時田隆仁副社長だ。続けて、こうも述べた。
「企業のITシステムにおける信頼の確保においても、従来とは違う難しさがこれから浮き彫りになる」
これらは、富士通が同年5月16、17日の両日、東京・千代田区の東京国際フォーラムで開催した年次イベント「富士通フォーラム2019」の基調講演での発言である。
今回は、時田次期社長が提起したこの2つの問題が非常に印象深かったので、これらに対する富士通の取り組みとともにフォーカスしたい。
2つの問題には共通する言葉がある。「信頼」だ。実は、同社は今回のイベントにおけるキーワードとして「Trust(信頼)」を挙げており、時田氏の問題提起はそれを受けたものだ。同氏は信頼についてまずこう語った。
「信頼は、ビジネスにおいてあらゆる取引や事業活動の基本となる。ICTはそのビジネスを支える信頼の一つだと考えており、私自身もICTの果たすべき責任の重さを感じながら、これまで仕事をしてきた」
そうした中で浮かび上がってきたのが、上記の2つの問題だ。まず「デジタル革新が進めば、信頼のハードルが上がる」とはどういうことか。「デジタル革新が進めば、これまでにない価値を生み出せるようになる半面、サービス提供のためのサプライチェーンが長く複雑になりがちになる」というのが同氏の見解である。
では、この問題にはどのような対策があるのか。同氏はその1つとして「Co-creation」を挙げた。業界を越えた企業同士の“共創”活動が、互いにリソースを有効活用することによって、サプライチェーンの問題にも対処できるようになるという。
もう1つの問題である「企業のITシステムにおいて信頼を確保する難しさ」とは何か。同氏は「人工知能(AI)の進化が加速する中、学習に使うデータの質によって、ビジネスの信頼が大きく左右されるようになる」との見解を示した。さらに「データには正確性の他、偏見やセキュリティ脅威などの不安もつきまとう」と指摘。その上で「私たちは技術に対する信頼を再構築し、引き続き、顧客のビジネスの信頼を支えていきたい」と強調した。
時田氏によれば、「技術に対する信頼を再構築」するために、富士通は3つの取り組みを行っていくという。
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