「何のためにやるのか」――HPEの新サービスに見る企業ITのマルチクラウド化の要件Weekly Memo(2/2 ページ)

» 2019年06月03日 11時00分 公開
[松岡功ITmedia]
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全ての出発点は「何のためにやるのか」から

 では、今回の新サービスであるRight Mix Advisorの中身から、企業のITシステムにおけるマルチクラウド化の要件を探ってみたい。小川氏に続いて説明に立ったのは、日本ヒューレット・パッカード Pointnext事業統括ハイブリッド製品統括本部 A&PSビジネス開発本部長の狭間崇氏である。

 図3が、Right Mix Advisorの概要である。図の見方としては左から右へと移行していく。まず、左側の「マルチクラウド化全体計画」について、狭間氏は次のように説明した。

Photo 図3 Right Mix Advisorの概要

 「お客さまからご相談をいただく中で多いのは、経営トップが“クラウドファースト”を掲げ、とにかくクラウド化を進めなければいけない状況になっているケース。パブリッククラウドへ全面的に移行することが目的になってしまっているケースも少なくない。そうした中で、私たちは『まず、何のためにクラウドを利用するのか』という基本に立ち返ってコンサルティングをスタートさせる」

 そして、こう続けた。

 「その目的がどこにあるのか。コストを削減する、可用性を高める、スピードを上げる、急なトランザクションの変化に対応できるようにする……。それらの要素をブレークダウンし、さまざまな条件を踏まえた上で、企業のITシステム全体の中でどこをどういう形でクラウド化していけば、そうした目的に対して効果的なのかを明らかにするアプローチで進めていくのが、私たちのコンサルティングの特徴だ」

 この狭間氏の説明について、筆者があらためて強調しておきたいのが、「何のためにクラウドを利用するのか、という基本に立ち返る」ということだ。何を今さら、と思う読者もおられるだろうが、実際に筆者も日々の取材の中で、肌感覚としてこの考え方がユーザー企業の間で揺らいでいるのではないかと感じることがある。この「何のためにやるのか」が、今回最もお伝えしたかったことである。

 あと、もう1つ。図3の中央の部分に、PoC(Proof of Concept:概念実証)ならぬ「PoV(Proof of Value)」という言葉がある。直訳すれば「価値実証」で、このサービスに当てはめれば「クラウドを利用した場合に得られる価値を事前に検証する取り組み」といえよう。このPoVを通じた実効性の高い計画を立案することが、新サービスの目玉の1つとなっている。

 ただ、このPoVについては、「今後のキーワードになるかもしれない」という筆者の勘で、具体的にどのような取り組みを行うのかはまだ説明を聞いていない。折りを見て取材したい。

 ちなみに、図4がRight Mix Advisorの成果物のサンプルである。コンサルティングによってどんな成果物が出てくるのか、イメージしていただけるのではないだろうか。

Photo 図4 Right Mix Advisorの成果物のサンプル

 ただ、重ねて申し上げておくが、全ての出発点は「何のためにやるのか」である。それを強く感じた新サービスの会見だった。

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