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» 2019年06月15日 07時00分 公開

CIOへの道【フジテックCIO 友岡氏×クックパッド情シス部長 中野氏スペシャル対談】:リーダーに大事なのは「IQより愛嬌」? 変革の大敵、“変わりたくない人々”を巻き込む方法 (3/4)

[吉村哲樹,ITmedia]

ステークホルダーの納得を得るには理性ではなく感情に訴えかける

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友岡 変化の時代には、「改革」や「改善」という言葉がよく使われますが、この2つの言葉の持つ意味をCIOは知っておくことが重要ですね。現場も含めて皆が喜ぶのは「改善」の方。逆に「改革」や「イノベーション」となると、反対する人が多くなります。

 でも、僕の感覚としては、反対が5割を超えていると「俺は結構、ヤバいことをやっているぞ」という気持ちになって、反対が8割ぐらいになると「相当ヤバいぞ。でもすごく楽しい!」と気分が高揚してくるんです。

中野 「盛り上がってまいりました!」という感覚ですよね。とてもよく分かります(笑)。

友岡 「自分が面白いことをやっているかどうか」を、いつもそうやって判定しているんです。皆が「良かった!」と言うようなことは、実は大したことではないんです。逆に多くの人に反対されるようなことこそが、改革やイノベーションにつながるんです。さっき「胆力」と言いましたけど、こうやって「反対されることにこそ価値がある」と信じていれば、反発にあうことがまったく怖くなくなってくるんですね。

 ただ、反対する人には反対するだけの正当な理由があるので、そういう人たちに納得してもらうための道筋は一生懸命に探しますね。全員を味方に付けることは無理でも、少なくとも味方が過半数になるような多数派工作はやります。

中野 その際は、影響力を持っている中心人物の理解を得ることが重要ですね。

友岡 そうですね。あとはやっぱり、一人ひとり丁寧に話し込んで、口説いていくしかないですね。結局、応援してもらえるかどうかって、「いかにビジョンを示すか」といったことも重要ではあるんですけど、松下幸之助が言っているように「愛嬌」が重要なのではないかと思ってるんです。人を説得する際には、「お前、賢いなあ」よりも、「お前、おもろいやっちゃなあ」の方が効くんですね。僕はよく「IQより愛嬌」と言っています。

 コンセンサスマネジメントって、最後は「納得するかどうか」の世界ですけど、納得はとてもエモーショナルなもので、理性じゃないんですよね。そもそも理性的に話しても納得してもらえないからもつれるわけであって、そこに分け入れるのが愛嬌なんです。だから、愛嬌のある振る舞いができないとダメなんです。

中野 変化の大きい施策をやる時の「理解はできるが納得できない」問題というのがありますね。人間は「思考レベルでの理解」だけでは、なかなか行動までつながらないんですよね。理解するだけではなく、感情まで動かないと物理的な行動にまで至らないのだと思います。

 感情は「心と体」「情報と物理」の真ん中にあるもので、「これは正しい」「これは面白い」という価値判断にまで至って感情を喚起しない限り、人間はアクションを起こさない。そしてアクションを起こさないと、結局は結果も出ない。これは坐禅から学んだことなんですけど、自分の中を洞察していると多分そうなっていると思います。

 だから単純に「ロジックとして正しい」「コンセプトが洗練されている」というだけでは、大抵の場合はうまくいきません。行動を起こし、現実を変えられるだけの熱量を引き出せないんですね。外部からコンサルタントを招いたけど失敗してしまったERPプロジェクトなどは、大体このパターンですね。きれいな絵は描けているけど、誰も躍らない。皆「コンサルタントが言っていることが正しいのは分かるんだけどねえ」と言うだけで、結局は誰も躍ろうとしない。

友岡 コンサルタントに言われるまでもなく、皆、とうの昔に、問題点もあるべき姿も分かっているんですよね。

中野 そうなんです。別に、誰も何も考えていないわけではなくて、コンサルタントにわざわざ指摘されるまでもなく、問題の所在は誰もが分かっているし、ちょっと頭を使える人ならあるべき姿も見えている。そしてちゃんと勉強している人なら、解決策までちゃんと分かっている。それを実行することによるメリットとリスクの比較も、もう社内で議論され尽くしている。もう、「皆が聞き飽きていること」であるにもかかわらず、それをあらためて絵に描かれたところで、今さら何も進まないですよ。問題が長年問題であり続けているのはそれなりの理由がある。

友岡 分かっている上で、「それはうちではできっこない」と皆が確信しているから、誰もやろうとしないわけですからね。でも、そこであえて、炎上するのを覚悟で突っ込んでいって痛い目に遭えば、反対派の中にも「あいつ、なんか一生懸命やっててかわいそうだな」みたいな同情が生まれてくる。そうなると、同情票から賛成票にだんだん転じてくるわけです。そういうことも、多数派工作では必要なんですよね。

中野 そういう、真っ先に危険地帯に突っ込んで行く“ぶっ飛んだ人”の覚悟に心を動かされることって、確かにありますよね。逆に言うと、人の心を動かそうと思ったら、ときにそうしたリスクをあえて顧みない行動も必要なのかもしれません。保身を考えずに火中の栗を拾う様な行動です。

友岡 そう考えると、システムに関わる人は、ロジカルな部分だけではなくて、そういうエモーショナルな部分まで含めて人々を躍らせないといけないわけですから、もはやCIOの仕事は「総合芸術運動」とすら言えますね。

中野 われわれがやっているのは、実はワーグナーのオペラのような総合芸術だったんですね。これは大変な話ですね(笑)。

友岡 そうそう。芸術運動のプロデューサーなんですよね。

中野 私達の仕事は技術やロジックを積み重ねて、戦略というシナリオを描いて、舞台に上がる役者もそろえて、スポンサーから予算を引っ張ってきて、最終的には観衆を感動させるところまで持って行くと。

友岡 そう考えると、本当に楽しい仕事ですよね。仕事の性質上、つらいことも多いですが、そのつらさから逃げてもいけない。それは、楽しさのためのつらさなんです。CIOは酸いも甘いもかみ分けながら、組織全体を躍らせるのがミッションなんですね。

中野 そう考えると、本当にやりがいのある仕事ですよね。いわゆるCxOの中でも、CEOは別格として恐らくCOOに匹敵するぐらいの存在感がありますね。きちんとやろうとすると、カバー範囲が広い、ほぼ会社の全領域ですし、実業務・オペレーションにも食い込むわけですから。

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