Anthosについて、ヘルツル氏の後、基調講演に立ったGoogle Cloudエンジニアリング、クラウドサービスプラットフォーム部門 バイスプレジデントのイヤル・マナー氏が、次のように説明した。
「企業のワークロードはまだ80%がオンプレミス環境で動いているが、3年後には75%がハイブリッドおよびマルチクラウド環境で動くようになるとの予測もある。ただ、そうなると大変なのは、どうやって管理していくかだ。できれば一元的に行えるのが望ましい。また、マルチクラウドではAPIがそれぞれ異なることから、アプリケーション開発への負担が増えてしまう。さらにセキュリティの整合性も重要な課題となる。Anthosはこうしたハイブリッド、マルチクラウド環境で懸念される問題を解消するためのソリューションだ」(マナー氏)
さらに、マナー氏の次の説明も印象深かった。
「AnthosはKubernetesベースのコンテナ技術を活用しており、オンプレミスのシステムをモダナイズするのに最適だと、私たちは考えている。ハイブリッド、マルチクラウドを利用する前に、Anthosでまず既存のIT環境をコスト効率よく短期間でモダナイズするご支援も、パートナー企業とともに積極的に手掛けていきたい」(マナー氏)
Google Cloudから「既存のIT環境をモダナイズするご支援も……」というメッセージが出てくること自体が新鮮だが、同社もそのように言うほどハイブリッド、マルチクラウド時代に入ってきたということだろう。
ちなみに、マナー氏は基調講演終了後、Anthosに関する記者説明会を開き、図2を示しながらその特徴を改めて説いていた。先ほど示した図1はGoogle CloudとAnthosが同格だったが、図2のようにAnthosから見ると、Google Cloudはマルチクラウドの1つという位置付けになる。それとともに、左側に記されている「Anthosはアプリケーション、モダナイゼーションのためのプラットフォーム」とのメッセージが印象強い。
とはいえ、同社はやはり「AnthosからGoogle Cloudへのクラウドジャーニー」を推し進めるのが本音ではないか。そう思ったので、記者説明会の質疑応答で単刀直入に聞いてみた。すると、マナー氏は次のように答えた。
「もちろんGoogle Cloudを選んでいただければありがたいが、ハイブリッド、マルチクラウドのニーズに対しては、クラウドを選択できることが最優先事項だというのが、私たちの考え方だ。従って、まずはAnthosによってクラウド活用に向けた既存ITのモダナイズで、多くのお客さまのお役に立てればと考えている」(マナー氏)
オープンを第一義とするGoogle Cloudらしい回答だが、Anthosを広げていけばクラウド化が促進され、ひいてはGoogle Cloudの躍進につながる、との確たる自信も感じた。
今回の年次イベントは、Anthosの登場にも象徴されるように、エンタープライズ向けソリューションが相当拡充されるとともに、さまざまなユースケースも見られるようになり、まさしくGoogle Cloudが勢いづき始めたという印象を強く持った。そして同社の最大の強みは「ブランド力」である点を端々に感じた2日間だった。
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