コラボレーションツール導入成功を測る定量的な指標とは事例で見るコラボレーションツール導入【後編】

Royal Bank of ScotlandはWorkplace by Facebookを導入してコラボレーション環境を確立した。同行が導入に成功したと見なす定量的な根拠とは何か。

» 2019年09月18日 10時00分 公開
[Christian AnnesleyComputer Weekly]

 前編(Computer Weekly日本語版 9月4日号掲載)では、従業員エンゲージメント活動を繰り返してもうまくいかなかった組織が「Workplace by Facebook」(以下Workplace)導入に成功した理由を通してコラボレーションツールの導入に必要な要素を紹介した。

 後編では、Royal Bank of Scotlandでの導入事例からコラボレーションツールの進化と活用のヒントを探る。

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早期導入でメリットを得たRBS

 Royal Bank of Scotland(RBS)は長い時間をかけ、さまざまな経験を経て、エンタープライズソーシャルネットワークで効果を上げるに至った。コラボレーション文化を育成し、行員の関与を深めるという願望を持ってWorkplaceを採用したのは2016年だった。

 RBSでWorkplaceの責任者を務めるクレイグ・ホーイ氏は次のように語る。「Workplaceを採用した根本的な理由は、パフォーマンスが非常に高い点だった。どの企業も、もっとオープンな文化を構築したいと考えるのは自然なことで、当行もそうした目的でさまざまなプラットフォームを試した。Workplaceの導入に至るまでは、いずれも部分的にしか成功しなかった」

 「当行が早期導入企業になった動機の一つは、Facebookと協力して、当初はパイロット段階だったWorkplaceの開発をサポートできることだった」

 このようなアジリティーは極めて重要だ。それが可能だった理由の一つは、RBSがこの期間にFacebookと協力できる規模の組織だったことにある。

 「プログラムは繰り返し展開した。プログラムを確立して生産性を高める鍵は、行内に先導者を立てることだった。これに関連して行員に計画立案を依頼し、最高の効果を上げる使い方を考えてもらうことも重要だった」

 4年目を迎えた今、RBSの約3万人の行員がWorkplaceを使用でき、毎週使っている行員は84%に上る。これは効果を最もよく表す指標だとホーイ氏は話す。

 「もっと根本的に言えば、これは日常的にイノベーションを起こしたり、クラウドソーシングしたりすることが可能だということだ。トラブルシューティングや顧客エンゲージメントなどの点で当行の働き方が変わった。以前はプロセスの中で失われていたものも、今や有用である可能性が高くなっている」

 この効果を定量的に計測するのは難しいが、だからといって多岐にわたる明白なメリットを得られないわけではないとホーイ氏は話す。

 「デジタルコラボレーションという文化は、ビジネスリーダーとチームメンバーの団結を大きく高める。行員は業務上の目的を明確に理解し、その結果として恐らくRBSのビジョンにも以前より格段に強く共鳴するようになっている」

 では、具体的にはどのようにプログラムを軌道に乗せたのだろう。「このようなプログラムは常にスムーズに進むわけではなく、試行錯誤が必要だ。だが当行が率先して行員に対してオープンになるべきだということに気付いた。また前もって一人一人への教育も実施し、推進しているのは重要な作業プラットフォームであり、ソーシャルアドオンではないことを理解してもらった。これは一種の旅のようなもので、行き着く先を常に認識していた」(ホーイ氏)

「Archie.AI」チャットbotの事例

 相互運用性も重要な要素の一つだ。4年の間にWorkplaceの機能や新しいツールが増えるのは必然だ。これによってどのような変化が起こったのだろうか。ホーイ氏は次のように語る。「進化の一例を挙げるなら、当行は今Googleの人工知能(AI)駆動型チャットbot『Archie.AI』をWorkplaceと接続している。Archie.AIはITとHR(人事)用のツールとして導入したが、資産などの業務領域にも対応するようになっている」

 「これに加え、モビリティーが定着した方法も大きな変化だった。Workplaceは、より柔軟な働き方を実現して確立するのに大変効果的で、これが真のメリットをもたらす。単にプロセスをオンラインに移行するのではなく、新しい方法で業務と関与する。その方法は大体がシンプルで人間味のあるものだ。行員は、物理的には以前より離れていることが多くても、つながっている感覚は今まで以上に得ている」

 また同氏は、行員間のコラボレーションによって顧客にも大きなメリットが生まれていると話す。答えがすぐに見つからない質問を顧客から受けても、Workplaceが即座に答えを用意できる。

 「行員は、銀行全体を横断して必要な行員とつながることがどれだけ容易かを理解するようになっている。これこそが本当に変わったことだ。多くの大企業に悪影響を与え、従業員同士を遠ざける縦割り型の構造は今やなくなった」

 エンタープライズコラボレーション技術は、コラボレーションの障壁を取り除き、エンゲージメントを促進して情報とアイデアの流れを活性化する。その結果、従業員の働き方を変える可能性がある。Gartnerのロス氏はそう確信している。

 だが現実を見ると、細部に欠点が潜んでいることは多い。1610では、既存のシステムがWorkplaceに置き換わったわけではない。またRBSのホーイ氏が経験したように、効果的なコラボレーションシステムは浸透しにくいこともある。

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