「もったいない星人」の暗躍で会社が病む 迫りくる2025年の崖RPA化のその前に、今日からはじめる業務可視化(1/2 ページ)

「それ昔、購入したよね。まだ使えるし! まだ動くよ!」とドヤ顔で説明する経営陣のせいで、老朽化したシステムのおもりなどの無駄な業務が発生している――。この「もったいない星人」が暗躍すれば企業は2025年の崖を乗り越えられず、そのまま沈んでいくでしょう。「もったいない星人」にどう対処するのか。

» 2019年09月20日 08時00分 公開
[池邉竜一キューアンドエーワークス]

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著者紹介:池邉竜一 キューアンドエーワークス 代表取締役社長

1971年12月生まれ。大分県出身。慶應義塾大学経済学部卒業。

1999年7月、人材派遣業のアークパワー設立。2001年4月、同社代表取締役就任。2013年4月、キューアンドエーグループ傘下(NECネッツエスアイ連結対象会社)となり、2015年7月、キューアンドエーワークスに社名変更。RPA市場においては「新・雇用創造」を掲げ、「業務の可視化」普及を通じてさまざまな人々の「創造する時間」を生み出し、デジタルレイバーと協働する労働環境をデザインすることによって、真の働き方改革を起こす。2016年7月、一般社団法人日本RPA協会の理事に就任。2019年6月より可視経営協会の代表理事も務める。

 業務の理解度が低いまま、次々と別の担当者に業務が引き継がれてしまうと、業務の目的意識は弱まってしまいます。そのような状態で業務が追加されると、現任の担当者は、「引き継いできた業務自体が、本当に必要なのか? 否か?」の判断もつかずに、全てを抱え込むことになります。日々業務に追い立てられているうちに、いつしかぼんやりと思い始めるのは、「ジョブローテーションの時期を待って、この業務を次の担当者に早く引き継ぎたい!」ということ。改善どころかすっかり業務の「引き継ぎ」が目的となってしまうのです。日本人は、律義なのか、生真面目なのか……。

 前回までは、こうした「引き継ぎの魔物」を抱えてしまうリスクはどこの職場にも潜んでいることに触れました。業務の可視化によって「引き継ぎの魔物」はピンポイントで整理整頓できます。また、管理者が業務エラーに対する過剰な「リスク対策」を求めず、エラーが許容範囲内であればミスの処理を「現場判断に任せる」ようにすれば「引継ぎの魔物」の発生を抑えられることも説明しました。今回は、この「引継ぎの魔物」を生み出すもう一つの要因に目を向けてみます。

(参考)第1回:RPA失敗の構図――あなたの会社にも潜む引き継ぎという名の魔物

(参考)第2回:企業を蝕む「引き継ぎの魔物」、退治する4つの心得を伝授

それ「もったいない星人」の仕業です!

 言わずもがな、技術は日進月歩で進化し続けています。もちろん、企業間の競争も激化している時代に、わざわざ基幹システムをフルスクラッチでウォーターフォール開発するような判断をすれば、その意思決定自体が、スピード感に欠ける印象を与えてしまいます。そのような雰囲気がまん延する情勢の中、情報処理システムの関係者ならば、いかにしてクラウド経由の「○○ as a service 」を採用して、プロジェクトの支援や業務フローの刷新を垂直に立ち上げるかを思考するのは自然の流れです。

 ところが、どんなに便利なクラウドのサービスを導入しようとしても、その導入を地味に阻む存在が社内に居座っているのです。それは、ずばり「もったいない星人」です!この存在を、経営者や財務・管理部門に知らしめることが一番の難関と言えます。

 “Time is money”(時は金なり)とはよく言ったものです。どんなに素晴らしいクラウドサービスやRPA、APIエコノミーを利用する構想も、リースアップ(注)した時代遅れのロースペックな端末がいつまでも現場に居座っていれば、デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進する上で、かなりの障壁となることは火を見るよりも明らかです。

 しかし、経営サイドや管理・財務部門の目には、資産として計上されるリースアップの自社PCが、最新スペックのPCと同じにしか見えないのです。同じにしか見えないのであれば、経済合理性のある「安価」な方を採用したくなるのが世の常です。

(注)リースアップ:リース期間が満了の意味。再リースによって請求額が超割安になる特典あり

日本の基幹システムは要介護状態!?

 2018年、経済産業省が発表した「DXレポート」(注1)では、現在の基幹システムが2025年には使用21年以上を迎えると報告したレポートが話題になりました。経済産業省が「2025年の崖」と称した、いわゆる「基幹システムの高齢化」が急激に進んでいる点を示したのです。

 まさに「もったいない星人」が暗躍することが証明されたとも言える内容ですが、実際のところ、高齢化した基幹システムのおもりに費やされる費用は、現在、年間IT投資全体の6〜8割にも達します。もはや新しいIT投資に向けられる費用は皆無の状況と言えるでしょう。

※注1:経済産業省 「DXレポート~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~」

知らぬが仏。IT投資の舞台裏

 しかし、そのような悲惨な状態を経営陣に確認してみますと、「うちのシステムは、そんなにメンテナンス費用がかかっていないよ」とドヤ顔で説明される方と時折出会います。まさに知らぬが仏。そのつまらぬ節約によって、基幹システムの周辺で一体どれだけの人たちがわざわざやらなくても良いような「ムダな業務」、すなわちシステム化のおもりに関わっていることか――。

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