企業のDXにおいてデータの有効活用がますます重視される中、「最高データ責任者(CDO)を置くべきだ」との声が高まってきている。そう訴えるPwCコンサルティングのレポートを取り上げながら、CDOの必要性について考察してみたい。
企業がデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進していく上で、その役割を担うポジションとして「最高データ責任者(CDO)」が注目されるようになってきた。CDOは、全社的なデータガバナンスと、資産としてのデータの利活用を統括する役職だ。日本企業ではまだ数少ないが、グローバル企業では経営戦略の中枢を担う立場として非常に重視されている。
では、日本でも今後CDOが必要になってくるのか。そんな視点で、PwCコンサルティングが先頃公表したレポートの内容が非常に興味深いものだったので、本稿ではその概要を紹介しながら、CDOの必要性について考察してみたい。
ちなみに、ここで紹介するレポートは、同社が発行した「Strategy & Foresight vol.22」の「特集:DXが創出する新たな価値と未来」の一部である。同社ではDXを「デジタル化によりビジネスパフォーマンスを加速させ、新たな事業価値の創出へと導いていくことであり、その結果としてビジネスモデルを抜本的に変え、新たな産業構造を生み出していくこと」と定義している。
以下、同レポートの概要を紹介していこう。レポートではまず、CDOが注目されるようになってきた背景として、次の5つを挙げている。
以上のような背景から、「データは資産である」という認識が企業間に浸透してきたとしている。
また、企業内で資産としてのデータを管理するには、管理者に専門性と企業内を統制するだけの権限が必要であるとの認識も広まっている。すなわち、社内外に散在するデータを適切に収集、保管、分析、加工、提供して経済的価値を創出するのは、経営が担うべき重要な役割であると考える企業が増加しているのである。
では、CDOが企業に期待される役割とはどのようなものか。レポートでは、次の6つを挙げている。
1つ目は、「データの探索、収集、保管の監督」。これは、経営が決定した事業戦略の詳細を理解し、それをデータニーズに転換することだ。また、社内外に点在するデータのうち、自社に必要なデータを探索、収集し、使用およびアクセス可能な形に体系化して保管することなどが求められる。
2つ目は、「データカバナンスの方針決定、仕組みの構築および監督」だ。実際にインシデントが発生してしまうと、企業の継続を根本から脅かしかねないため、データガバナンスは経営の責務である。ただし、その責務は、業務プロセス上もIT環境上も広範囲をカバーする必要があるため、データセキュリティ管理に特化した最高情報セキュリティ責任者(CISO)とIT管理に特化した最高情報責任者(CIO)、そしてCDOが共同で担うケースもある(図1)。
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