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» 2020年04月15日 07時00分 公開

“情シスではなく従業員ファースト”新たなPCサービスは、なぜ中小企業に注目するのかDevice as a Service(DaaS)特集(1/2 ページ)

企業の従業員がPCを使う“体験”を、ソフトウェアもハードウェアも含めて常に最新の状態で提供したい――。そんなDevice as a Service(DaaS)の関係者が注目するのが中小企業向け市場だ。その理由から見えてくる、DaaSと従来の企業向けPCの在り方の「根本的な違い」とは。

[谷川耕一,ITmedia]

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 従来、PCメーカーが「顧客」と捉えていたのは企業の情報システム部門だった。もちろん情報システム部門も顧客の一部ではあるが、本来の顧客は現場でPCを使っている人――つまり従業員全員だろう。最近注目される、PCを企業に「サービス」として提供するDevice as a Service(DaaS)(注)はその点を重視しているというが、デバイスを利用する従業員の体験を変えられるのか。また、取材を続けていると、市場に出たばかりのDaaSに関わる複数の企業の関係者が「特に中小企業のニーズに注目している」と口をそろえる。それは一体なぜなのか。

(注)DaaSにはDesktop as a Serviceを含め複数の意味があるが、本稿では便宜上、DaaS=Device as a Serviceとして表記する。

 「従業員目線」に立つというDaaSを日本市場で展開する際、課題になりそうな点の一つが、今まで「情報システム部門」の都合を重視しがちだったサービスの視点をどう従業員に転換するかだ。情報システム部門にとってのPCは、自分たちが管理しやすいものであって欲しい。PCを管理しやすくすることと、現場でユーザーが高い生産性を発揮できるようにすることは違う。むしろこの2つは矛盾するだろう。

「メーカー頼み」の企業向けPCモデルとDaaSが根本的に違う理由

 「情報システム部門の立場に立ってみれば、できれば全従業員のPCの仕様や設定を統一して管理を楽にしたいと考えるのが自然でしょう。しかしユーザーの中にはテレワークをする人もいれば、そうでない人もいます。通常、情報システム部門はテレワークをしないので、モバイル用のPCにどのようなニーズがあるかの実感がありません」と話すのは、横河レンタ・リースの松尾太輔氏(事業統括本部 ソフトウェア&サービス事業部長)だ。長年企業向けにPCのレンタル事業を手掛けてきた同社は、ベンダーとしてDaaSに挑む姿勢も明らかにしている。

横河レンタ・リースの松尾太輔氏(事業統括本部 ソフトウェア&サービス事業部長)

 松尾氏によれば、従来のように情報システム部門とPCメーカーとのやりとりを中心にしていたPCの消費形態は、どうしても個々の従業員目線に立ったニーズを反映しにくいという。

 例えば、最近の課題の中には、テレワークをしたい従業員に、企業が適切な機能をそろえたPCを必ずしも提供できないというものがある。企業の情報システム部門の中には、テレワークをしているユーザーにヒアリングを実施し、何とか最適なPCを提供しようとするケースもあるだろう。ただし、その場合も情報システム部門が選ぶPCは、ヒアリング結果の最大公約数を反映したものになる。各ユーザーのニーズに最適なPCを個別に届けようとしても難しいだろう。PCメーカー側の立場で考えると、情報システム部門の向こう側にいる現場のユーザーのニーズを把握したくても想像するしかないのが現状だ。そのためPCの提供をサービス化しようとしても、メーカーとしてはユーザーの真の姿を把握できず、準備は十分ではない状態だ。

 また、積極的になれないPCメーカー特有の事情もある。PCの製造、販売のビジネスには「限界費用」があり、PCを売れば売るほど個々のPCの原材料費が増え、売り上げと一緒にコストも上昇する仕組みだ。一方で通常のクラウドのサービスは、基本的に契約ごとの原材料費は発生せず、売れば売るほど利益が増えることになる。

 PCメーカーがDaaSでビジネスを成り立たせようとすれば、コストを計算した上で確実に利益を確保しようとするため、大規模な契約を求めがちだ。また、クラウドのように使わなくなればいつでも止められる柔軟性は提供できず、一度に解約できる範囲を「契約全体の一部まで」といったように制限しなければ利益を確保できない。

 利益を得るために何台のPCを何年間利用してもらう必要があるかを、PCメーカーでは詳細にシミュレーションする必要がある。そのため見積もり作業にも大きな手間がかかり、結果的に大企業向けでなければペイしないのだ。つまりPCメーカーにとってDaaSは利益計上を後ろにずらすだけの手間のかかる方策にすぎず、モチベーションはそれほど高くないのが現実だろう。

 「仮に、PCメーカーがPCの販売代金をまとめて最初に請求する代わりに月額料金に“分割した”体裁でDaaSを始めてしまうと、何らメリットはなく、むしろ途中で解約されるリスクを新たに抱えることになります」と松尾氏は指摘する。

“常にアップデートし続ける”DaaSが月額で提供される「本当の意味」

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