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» 2020年05月20日 10時00分 公開

コンポーザブルインフラの登場【後編】:今すぐコンポーザブルインフラに手を出すべきではない理由

コンポーザブルインフラによってコンピュータのあらゆる構成要素を動的に再構成できるようになれば、ワークロードに最適なリソースを割り当てられるようになる。だがデメリットもある。

[Daniel Robinson,Computer Weekly]

 前編(Computer Weekly日本語版 5月6日号掲載)では、データセンターが直面している課題とその解決策としての異種(ヘテロジニアス)コンピューティング、そしてコンポーザブルインフラを紹介した。

 後編では、コンポーザブルインフラの現状と長所と短所、可能性を解説する。

コンポーザブルインフラの現状

 では、現状のコンポーザブルインフラとはどのようなものだろう。先ほど述べたように、現時点ではパフォーマンスを犠牲にすることなくプロセッサからメインメモリを切り離す実用的な技術は存在しない。そのため、初期のコンポーザブルプラットフォームは標準的なx86サーバをコンピューティングリソースとして使用し、構成可能なストレージの独立したプールと組み合わせることで妥協してきた。

 こうした例が、「HPE Synergy」と「Dell EMC PowerEdge MX」だ。これらの製品は、コンピューティングとストレージの各スレッドを組み合わせて専用の筐体に収めるように設計されている。ブレードサーバに似ているが、コンピューティングとストレージの両コンポーネントの接続にスイッチングSASファブリックを備えている。そのため、さまざまな構成でSASドライブをコンピューティングスレッドにリンクできる。

適切なファブリックの選択

 コンポーザブルインフラは、連動させるためにコンポーネントを相互接続する方法が重要になる。SynergyとPowerEdge MXは、コンピューティングとストレージの両スレッドがスイッチングSASファブリックによってリンクされている。別のコンポーザブルインフラ企業DriveScaleはイーサネットファブリックを使っている。

 ただし、ストレージ以外もコンポーザブルにするなら、もっと柔軟性の高い接続ファブリックが必要になる。その選択肢の一つがPCI Express(PCIe)だ。これはプロセッサに機器を直接接続する高速インタフェースとして開発されたものだが、現在では外部ハードウェアの接続にも採用されるようになっている。

 このアプローチを推進している企業がLiqidだ。同社はPCIeスイッチを中心にコンポーザブルインフラを構築している。このアプローチにより、GPU、FPGA、ストレージなどのハードウェアをデータセンターラックの個別の筐体に収め、複数の標準x86サーバでの共有を可能にしている。PCIeスイッチは、必要な構成を実現する制御点として機能する。

 GigaIOも同様のアプローチを取る。同社が開発した独自の相互接続技術「FabreX」はPCIe Gen 4をベースとする。PCIe Gen 4で利用可能な帯域幅により、自社のプラットフォームでHPC導入をターゲットとすることが可能になる。

 ビッグデータ分析や機械学習などを組み込む最新のワークロードをサポートするのに最適なプラットフォームを求めるIT部門は、コンポーザブルインフラが持つこのような柔軟性に魅了されるだろう。

 Gartnerでリサーチ部門のバイスプレジデントを務めるジュリア・パルマー氏は次のように語る。「ワークロードの要件の変化と進化に応じてハードウェア構成を適切に変更できるようになるため、コンポーザブルインフラと最新のワークロードはかなり相性が良いと考えている」

 「また、高価なコンポーネントを使うことで、ベアメタルハードウェアのリソースの適切な利用率、継続的な最適化に関する要件が高まっている。それがコンポーザブルインフラ特有のメリットの一つだ」と同氏は話す。

長所と短所

 だが、慎重に検討することなくコンポーザブルインフラを導入すべきではない。パルマー氏によると、コンポーザブルインフラにより、既存のシステムとは別に管理しなければならない他のサイロがデータセンターに生まれるリスクがあるという。

 その理由は、コンポーザブルインフラ製品の中には自動化が組み込まれておらず、Infrastructure as Codeやインテリジェントなインフラ機能を実現するためにサードパーティー製自動化ツールの追加インテグレーションが必要になるものがあるためだ。

 「コンポーザブルインフラは実現技術だ。コンポーザブルインフラをフル活用できるのは、完全に自動化されたサーバビルドサービスを抱える準備が整っているIT部門だけだ。そのようなサービスは、ベンダー独自のAPIのため標準が存在しない。『Redfish』エコシステムに希望はあるが、全てのベンダーが今後これを完全に利用するかどうか判断するのは時期尚早だ」(パルマー氏)

 Redfishは、ソフトウェア定義ITインフラ(コンポーザブルインフラ含む)管理用の標準APIを用意するために、DMTF(Distributed Management Task Force)が草案を作成した仕様だ。Redfishは、OpenStackのベアメタルプロビジョニングサービス「Ironic」、Red Hatの自動化ツール「Ansible Automation Platform」、一部のサーバ内部のベースボード管理コントローラーがサポートしている。

 コンポーザブルインフラはまだほんの初期段階の技術だ。それは、現状のプラットフォームではCPUとメモリリソースを分離して個別に構成できないことからも分かる。

 メモリファブリック「Gen-Z」の使用など、この問題を解決しようとする動きがある。Gen-Zは、単純なポイント・ツー・ポイントリンクからラックスケールのスイッチベースのトポロジーに至るまで、多種多様な接続でメモリセマンティックな操作を可能にするよう設計されている。

 まとめると、GPUやFPGAなどの高価なアクセラレーターハードウェアが求められることにより、コンポーザブルインフラのニーズが高まる可能性がある。ただしGartnerが推奨するように、企業はコンポーザブルインフラのコストとメリットを、対応する従来型インフラと比較して慎重に評価しなければならない。

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