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» 2020年06月03日 10時08分 公開

人事部門のRPA活用事例集【後編】:RPAの真の活用は雇用の喪失ではなく高齢化の支援をもたらす

RPAが普及し組織での利用が拡大するとどうなるのか。正しく活用するなら、それは雇用を奪うものではないという。先進事例からRPA活用の在り方を考えよう。

[SA Mathieson,Computer Weekly]
iStock.com/wildpixel

 前編(Computer Weekly日本語版 5月20日号掲載)では、3つの企業のRPA成功事例を紹介した。

 後編では、Results Companiesのさらなる挑戦と慈善団体、自治体の取り組みを紹介する。

 Results Companiesはまた、人事分野で別の用途も見いだした。コンタクトセンターの従業員は契約通りのカバー率を守るため、休憩のタイミングも含めて決められた時間に従って勤務する必要がある。自動化されたプロセスによって、従業員がいつ「順守から外れた」かが自動的に報告されるようになり、ブラウン氏によればこの測定の結果、実績がある程度改善された。

 ブラウン氏によると、反復的で複雑性が低く、継続的な入力があるプロセスは自動化に最も適している。「1人が1カ所で1つのことしかしていない独自のプロセスは、必ずしも候補として最適ではない。だが人事のように、世界中で同じようなプロセスが行われていて、同じ情報を複数のターゲットに入力し、それを正確にやらなければならない組織の場合、間違いなく大きな違いを出すことができる」

福祉事業のサービス向上

 専門スタッフを多数抱える組織にも、人事を自動化すべき十分な理由がある。英ヨークシャーとハンバーサイドで自閉症の人の介護と雇用支援を行っている慈善団体Autism Plusは、350人の雇用に加えて年間約90万ポンド(約1億2000万円)を代理店の従業員に支払っている。「われわれは介護団体として、需要への対応と成長に重点を置いてきた。われわれは主に、書類ベースのシステムと『Microsoft SharePoint』のようなオフィスソフトウェアをベースに成長してきた」。CEOのフィリップ・バーティー氏はそう話す。

 当初は管理情報の改善を目的として、Autism PlusはSalesforce.comのCRM導入を含む管理業務全般の刷新を進める途上にある。人事についてはKainosと組んでWorkdayのソフトウェアを導入している。この選定は、「Salesforce」との親和性も一因だった。

 新しいソフトウェアによって管理情報の向上や採用プロセスの改善、職員を引き付けてつなぎ留める能力の向上が見込めるはずだとバーティー氏は言い、「旧来の業務のためにわれわれが獲得できなかった人材が大量にいる」と話す。

 職員の大半は利用者の自宅で介護に当たっている。オンラインで情報の提供とリクエストができるようになれば、時間の節約になるはずだとバーティー氏は言う。「今は利用者の介護をすべきときに書類の記入に追われている職員もいる」

 同社はまた、クラウドベースのシフト勤務表作成を手掛けるHumanity.comのソフトウェアを利用して、ローテーション表の作成も自動化する計画だ。

 バーティー氏によると、Autism Plusは長期的なパートナーと見なすWorkdayと交渉して、相当額の値引きを引き出した。これは重要だ。なぜなら中央政府の資金提供に関する決定のために、英国の社会福祉事業者の資金繰りは10年以上前から非常に厳しくなり、多くの組織は管理業務の近代化を思いとどまっている。「ほとんどはデジタル化を必要としており、そのことを認識している。だがそのための資金を確保できない。組織としての未来への投資に必要な利益が確保できていない」とバーティー氏は打ち明けた。

スウェーデンのセーデルテリエ

 政府機関は利益と利益率を考慮する必要はないかもしれない。だがスウェーデンの自治体セーデルテリエは人事部門の自動化に着手した。ストックホルム西部を管轄する同自治体はまず、フィンランドのプロバイダーDigital WorkforceのRPAを給与管理プロセスと欠勤報告および雇用終了に採用した。

 これによって、ほぼ1人分の業務時間が節約された。セーデルテリエのコミュニケーション・デジタル化マネジャー、マリア・ダール・トガーソン氏は「まだ始めたばかりなのに、この違いは非常に大きい」と話す(訳注)。

訳注:セーデルテリエにおけるトガーソン氏の取り組みについてはComputer Weekly日本語版 5月6日号でも少し触れている。

 同自治体はRPAをより広範に利用して、例えば医療機関を受診するためのタクシー代補助を申請する高齢者のために職員が訪問する時間をソフトウェアで選ぶ実験をしている。セーデルテリエに教会を創設したとされる中世の聖人のスウェーデン王女(訳注)にちなんで“ラグンヒルド”と命名されたこのソフトウェアロボットは、職員のカレンダーから空き時間を選んで予約票を印刷する。ただしこれは送付する前に人間がチェックする。

訳注:聖ラグンヒルド(?〜1117年ごろ)。「ハルステンの娘」「スウェーデン王インゲ2世の妻」とされている。スウェーデンには同時期にハルステンという王がいたが彼はインゲ2世の父であり、ハルステン王の娘とすると夫インゲ2世のきょうだいになってしまう。当時のスウェーデン王家であるステンキル家におけるラグンヒルドの系譜上の位置付けは明確になっていない。

 トガーソン氏によると、一部には自動化に抵抗するプロセスもある。給与を含め、一部のケースでは古いITシステムを使っている。自動化は高額過ぎて導入できず、その場合はシステムの入れ替えを待つ。短期の失業保険金給付のようなプロセスは自動化できるが、インターネットを通じた申請が10%にとどまる現状では導入に見合った価値の創出は見込めない。この割合が25%に増えれば費用対効果が見込めるようになる。

 人事管理にRPAを使い始める他に、人口問題を解決するためにもRPAは欠かせないとトガーソン氏は見る。富裕国の多くで人口の高齢化が進む中、社会的責任を持つ組織は引退した高齢者のためのサービスを増やし、労働年齢の人向けのサービスを減らすことを強いられる。

 「これは人口の高齢化について何かするための方策になると思う。人口動態の未来のため、それ以外の選択肢はない。ラグンヒルドのようなソフトウェアロボットは雇用を奪うのではなく、引退後に必要とする支援を確実に受ける手助けをしてくれるかもしれない」。トガーソン氏はそう話している。

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