今後5年でデータの価値は飛躍的に向上 データ活用の「準備ができている」企業はわずか14%――Splunk調査(1/2 ページ)

Splunkは、来たる「データの時代」に向け、企業のデータ活用状況に関する調査レポートを発表した。大多数(81%)が今後データは極めて価値があるものになると考える一方、過半数超(57%)はデータ管理能力がデータ増加のペースに追い付けないと懸念していることが分かった。

» 2020年09月15日 07時00分 公開
[金澤雅子ITmedia]

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 データ分析プラットフォームベンダーのSplunkは2020年9月11日、企業のデータ活用状況に関する調査レポート「Data Age - データの時代に備える」を発表した。

 同社は、今後はデータ活用の巧拙がビジネスの成功を左右する「データの時代」が本格化すると提唱し、既にその波が始まっているとしている。

 同調査は「データの時代」に向け、データ活用への理解の進展状況や企業が直面する課題を明らかにするとともに、データを有効活用してビジネスで成功を収めるための対策について考察する目的で、米国、フランス、中国、オーストラリア、英国、ドイツ、日本、オランダの8カ国で、小売、金融、ヘルスケア、製造、政府/公共機関の5業界にわたり、ビジネスマネジャーとITマネジャー2259人を対象に行われた。

データの価値を認識していても、取り組みは遅れがち

 同社によると、データの時代は、膨大な量のデータを“受け止め、そして生み出す”最新テクノロジーによってけん引される。中でも重要なテクノロジーは、「エッジコンピューティング」「5Gネットワーク」「IoT」「AI(人工知能)/ML(機械学習)」「AR(拡張現実)/VR(仮想現実)」「ブロックチェーン」の6つ。今後数年間で、これらのテクノロジーがデータ活用における変革を生み出し、生活と仕事の両方を一変させると同時に、データの飛躍的な増加を引き起こす可能性があると予測する。

 そして、データの時代に成功を勝ち取るには、「組織内の全てのデータを可視化し、インサイトをリアルタイムで取得して、すぐに行動を起こす」ことが求められており、そのために、これらの最新テクノロジーを積極的に理解して導入し、データを最大限に活用することが望ましいとしている。

 しかし、そうしたデータの価値は理解していても、実際には、データの時代の到来で避けられないデータの大量発生に対応できないなど、データ活用に向けて“準備不足”に陥っている企業が多いと指摘する。

 今回の調査では、世界各国の回答者の3分の2(67%)が「2025年までにデータ量が約5倍に増加する」と予測していることが分かった。また、大多数が、データ量の急増とともにその価値が向上すると予測しており、データは「組織全体の成功(81%)、イノベーション(75%)、サイバーセキュリティ(78%)にとって『極めて』または『とても』価値がある」と回答している。

Photo 図1 世界各国、特に中国と日本は「データには価値がある」と認識しており、今後その量が増大すると予測している(出典:Splunk資料「Data Age - データの時代に備える」より)

 一方、現在のデータ増加ペースから見積もった今後のデータ量や新しいテクノロジーの導入によってもたらされる今後のデータ量に対して「組織全体で準備ができている」と回答したのはわずか14%で、33%はデータの急増に対して「現在準備中」と回答。つまり、残り53%の組織が準備を「始めてすらいない」ことになる。さらに、準備できていない86%の組織のうち、「近々準備が完了する自信が大いにある」と回答したのも8%にとどまった。

Photo 図2 データの時代に対する準備の度合い(出典:Splunk資料「Data Age - データの時代に備える」より)

 また、66%のIT/ビジネスマネジャーが「組織内のデータの半分以上がダークデータ(活用できていない、もしくは把握すらできていないデータ)である」と回答。この傾向は前年比で10%増加しているという。

 さらに、過半数超の回答者(57%)が「組織の管理能力がデータ増加のペースに追い付いていない」と懸念しており、47%が「今のペースでデータが増加し続けると、いずれ競争から脱落する」と回答している。

Photo 図3 データ増加やデータの新しい波に対応できない可能性があるとの回答は過半数となった(出典:Splunk資料「Data Age - データの時代に備える」より)

データ活用の準備状況、業界による違いは?

 データを活用するために6つの最新テクノロジーについては、約半数(49%)の回答者が「使用したい」と回答したものの、これらのテクノロジーを「十分理解している」と回答した割合は、6つの最新テクノロジーを平均してわずか42%にとどまった。

 また、テクノロジーの導入状況をみると、全業界で利用率が最も高いのはIoTだったが、それでもわずか全体の28%にとどまった。

 5Gは、利用率が最も低かったものの、導入タイムラインが平均2.6年と最も短く、「今後5Gを利用する予定」との回答の割合が62%に上ったことから、将来のユーザー数の増加が見込まれるとしている。

Photo 図4 5Gは、6つの最新テクノロジーの中で最も現在のユーザー数が少ない一方、将来のユーザー数の増加が見込まれる(出典:Splunk資料「Data Age - データの時代に備える」より)

 業界別では、金融サービス業界で、6つの最新テクノロジーのうち5Gを除く5つで、他の業界よりもユースケースの開拓が進んでいた。特にAI/MLについては「専門的な知識がある」または「よく理解している」と回答した割合が、全体平均の42%に対して、金融サービス業では52%に上る他、ユースケース開発についても、進捗(しんちょく)度は小売業界を上回っていた。

 小売業界でも、6つのテクノロジーのうち5つでユースケース開拓が進んでおり、全業界の中で上位2つに入ったものの、AI/MLの導入については、下から2番目で、公共機関をわずかに上回るという顕著な遅れがみられた。

Photo 図5 AI/MLの現在の利用率は全体に低いものの、将来利用についての期待は高い(出典:Splunk資料「Data Age - データの時代に備える」より)

 ヘルスケア関連企業では、今後5年間で「データ量が増加する」と考える回答者の割合が全業界の中で最も少なかったものの、61%と半数を超えた。ただし、データの管理や活用スキルの自己評価については下から2番目の低さとなった。この結果は、ヘルスケア組織のダークデータの多さを考えれば当然といえると指摘。実際、「所有するデータの半分以上がダークデータで、データの管理と活用に苦心している」と回答した割合は62%に上った。

 製造業界では、今後「データ量が増加する」と回答した割合は78%と、5つの業界のうちトップだった。さらに、4分の3以上に当たる76%が「データの価値は今後も高まり続ける」と回答。このことから、データの時代にはデータの量とともに価値も増大するという関係を認識している点で、金融サービス業を上回る結果となった。

 政府/公共機関では、データ管理やリソース不足などでデータ活用について大きな課題を抱えており、最新テクノロジーの導入が民間企業に後れを取っていることが分かった。6つの最新テクノロジーうち5つのテクノロジーで利用率が20%に届かず、また、6つ全てのテクノロジーで導入タイムラインの予測期間が最長だった。また、今後「データ量が増加する」と予測する割合は60%で他業界よりも低く、予測増加率も、全体平均は約5倍であったのに対して、公共機関では3.5倍だった。

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