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» 2021年01月12日 13時00分 公開

【特集】2021年、DXのビジョンは:SOMPOは自らを壊し「保険のない世界」を目指す――グループCDO/CIO 尾股 宏氏

既存事業を破壊する中からしか未来は生まれない。そう語るのは保険業界で唯一DX銘柄に選出された企業のCDOだ。同社がこだわるのは同社独自の定義による「リアルデータ」だ。同社グループ CDOの尾股氏にその意図を聞いた。

[吉田育代, 原田美穂,ITmedia]

 保険業界で唯一「DX銘柄2020」に選出されたのがSOMPOホールディングスだ。

 SOMPOグループは現在「お客さまの安心・安全・健康に資する最高品質のサービス」を提供し、社会に貢献することをグループ経営理念として掲げ、「安心・安全・健康のテーマパーク」の実現を目指し、グループ全体の事業構造を変えるような大胆なデジタルトランスフォーメーションを推し進めている。とはいえ、「テーマパーク」と聞いてもすぐにはその意図するところは理解しにくいかもしれない。

 「安心・安全・健康のテーマパーク」は、「そもそも損害のない状況が社会にとっては望ましい」という視点に立ったとき、顧客に提供すべきなのは有事の補償ではなく、日常の安心や安全、健康である、との考えに基づいている。抽象的な「安心・安全・健康」をどう把握し、どう捉えるかを考えたときに必要になるのが、先進技術とデジタルの力だ。

 「SOMPO Digital Lab」でのオープンイノベーションの取り組みや国内外のTech企業との提携、サイバーセキュリティ事業への参入などの取り組みが進む同グループは何を考え、これからどこへ向かうのか。本稿は、SOMPOホールディングス グループCDO(共同) グループCIO 執行役常務 尾股 宏氏に話を聞いた。


2020年、保険業界で唯一DX銘柄に選出されたSOMPOホールディングス が迎えたCDOのデジタル遍歴

 もともと尾股氏は広告代理店大手の電通がデジタルマーケティングを担う専門組織として立ち上げた電通デジタルの設立準備、創業に尽力した人物だ。組織立ち上げ後は経営に携わってきた。その後、日本IBMでは執行役員チーフ・デジタル・オフィサー(CDO)を務め、AI(人工知能)を生かしたデジタルマーケティング施策を推進してきた経験も持つ。デジタルデータを事業推進のドライバとして生かし続けてきた経歴の持ち主だ。

 その尾股氏がSOMPOホールディングスに参画した理由は「“保険が必要ない世界”を目指す」と語る同社のグループCEO執行役社長の櫻田謙悟氏の考えに共感し、DX推進を牽引しているグループCDO執行役常務である楢﨑浩一氏の意気込みに感銘を受けたことが大きいという。

 企業内にCDOを置く組織はまだまだ少ない中、同社は楢﨑氏、尾股氏の2人のCDOが国内外、社内外の全方位でのデジタル変革を進める体制を取る。

――「DX銘柄2020」に選定されましたが、貴社は以前からAIの活用や技術ベンチャーとの協業などに積極的だった印象です。

尾股氏 「安心・安全・健康のテーマパーク」構築というビジョンは、2016年の中期経営計画で初めて掲げられたものです。トランスフォーメーションに向けた施策を着々と進め、2020年で5年になります。「デジタルトランスフォーメーション銘柄(DX銘柄)2020」 に35社中の1社に選出されました。ちなみに保険業界で唯一の選出です。

1 SOMPOホールディングス グループCDO(共同) グループCIO 執行役常務 尾股 宏氏

損害発生ポイントだけが顧客接点では不十分

尾股氏 このビジョンを掲げた背景には、強烈な危機意識があります。データの時代にあって、事業柱である損害保険が持つ情報は限られます。顧客に何らかの事故や損害が発生したときにしか接点を持てない仕組みです。平時に顧客がどんな課題を持ち、何に困っているか、何を解決したいかを知るすべがないのです。

 近年は自動車の自律走行の実現が視野に入ってきています。あくまで個人的な見解ですが、自動運転になったとき、事故の責任の所在はどこになるでしょうか。運転が自動車メーカーのサービスになり、さまざまな情報を基にしたファイナンスサービスの一つに保険が組み込まれるかもしれません。保険会社の存在意義が根底から揺さぶられる可能性もあり得ると考えています。だからこそ、外部からディスラプトされるよりも先に、自分たちで自分たちの事業をディスラプトして新たな未来を切り開くべきだと考えています。

 2020年8月に発表した、MaaS×保険によるブロックチェーン活用実証実験もその一環です。SOMPOホールディングス、損害保険ジャパン(以下、損保ジャパン)、ナビタイムジャパン、LayerXの4社が協業して、MaaS社会の到来を見据えた保険の新たな顧客体験の可能性を検証していく取り組みです。

2 MaaS領域における保険金支払い自動化の技術検証の概要

AIはSOMPO DXの重要コンポーネント

――SOMPOホールディングスは早くからデータを活用した顧客体験の再構築やビジネスモデルの再構築に積極的でした。特にこの数年の同社の動きは各方面に、DXの「種」をまいてきたように思います。例えば一例を挙げると早くからグループ専用AI工場「エッジAIセンター」を立ち上げ、AIの力を使って保険体験を変える取り組みを積極的に進めてきました。

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