DX、クラウド、アドオン開発――「古くて新しい」ERPの話をしようアナリストの“眼”で世界をのぞく

コロナ禍の影響を脱した2022年のERP市場にとって注目のテーマは3つ。特に「アドオン開発なし」は難しいチャレンジだが、理想は追求すべきだと筆者は提言する。多くの企業が苦労しつつもアドオン開発なしに挑む理由は何か。そこから得られるメリットとは。

» 2022年07月29日 09時00分 公開
[小林明子矢野経済研究所]

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この連載について

目まぐるしく動くIT業界。その中でどのテクノロジーが今後伸びるのか、同業他社はどのようなIT戦略を採っているのか。「実際のところ」にたどり着くのは容易ではありません。この連載はアナリストとしてIT業界と周辺の動向をフラットに見つめる矢野経済研究所 小林明子氏(主席研究員)が、調査結果を深堀りするとともに、一次情報からインサイト(洞察)を導き出す“道のり”を明らかにします。

筆者紹介:小林明子(矢野経済研究所 主席研究員)

2007年矢野経済研究所入社。IT専門のアナリストとして調査、コンサルテーション、マーケティング支援、情報発信を行う。担当領域はDXやエンタープライズアプリケーション、政府・公共系ソリューション、海外IT動向。第三次AIブームの初期にAI調査レポートを企画・発刊するなど、新テクノロジー分野の研究も得意とする。



 ERPは筆者が矢野経済研究所の研究員としてもっとも長期にわたって担当するテーマだ。さらに言えば、矢野経済研究所では1990年代後半の第1次ERPブームの頃から毎年ERPの調査レポートを発刊しており、筆者は何代目かのERP担当研究員になる。

 IT市場では数年おきに「バズワード」が生まれる。2012年にビッグデータをテーマに初めてレポートを執筆したが、それも今は昔となった。ERPほど息が長く、注目度が下がらないテーマはまれだ。2022年7月12日に発刊した矢野経済研究所のERP市場調査レポートから、最新の市場動向を紹介する。

2021年のERP市場はコロナ禍の停滞から完全に脱した

 2021年のERPパッケージライセンス市場は、1278億円(エンドユーザー渡し価格ベース)、対前年比10.1%増となった。2020年は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響でユーザー企業の業績が悪化する懸念などから案件の先送りが発生したため対前年比1.4%増とほぼ横ばいだったが、2021年は一転して2桁成長となった。

 2021年以降は、ウィズコロナが常態化し、コロナ禍の影響は低減した。先送りされた案件の多くが無事スタートし、2020年の先送り分が特需的に上乗せされたことが市場を押し上げる要因となった。コロナ禍による停滞を脱して成長軌道に戻りつつあり、2022年のERPパッケージ市場は1345億円で対前年比5.2%増になると予測する。

 本稿では、市場成長の背景にある「DX」「クラウド」「Fit to Standard」の3つのトレンドを取り上げる。“古くて新しい”ERP市場にとっては耳新しいトピックスではないが、2022年のERP市場ではホットな話題だ。

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