DXの波から取り残されてきたアナログな情報がAIの力を借りて徐々にデジタル化し始めている。「手書き書類」に次いで、顧客の「生の声」を分析する目処が立ってきた。今後コンタクトセンターなどの業務を大きく変えるポテンシャルを秘める。BtoB事業の拡大を目指し、体制を強化するLINE AIカンパニーに技術展望と日本企業のDX支援の現状を聞いた。
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LINE AIカンパニーがBtoB向けサービスを強化する。
LINE AIカンパニーは、2017年に発表したスマートスピーカー「CLOVA」に代表されるようにコンシューマーサービスの印象が強いが、この数年はAI-OCRを使った企業のワークフローのデジタル化支援や、日本語の自然言語処理技術を生かしたコンタクトセンター業務の最適化など、BtoBビジネスでも存在感を高める。
2022年7月1日から道下和良氏が参画し、BtoBビジネスでのソリューション展開を強化する。道下氏は日本オラクルでエンタープライズ向け営業部長、CRM事業本部長を歴任したのち、セールスフォース・ドットコム(現・セールスフォース・ジャパン)で常務執行役員として製品営業部門やエンタープライズ営業部門をリードしたことでも知られる。直近は「デジタルアダプション」をコンセプトとしたWalkMeの日本市場での展開を手掛けていた。
LINE AIカンパニーを率いるCEOの砂金 信一郎氏はMicrosoftで「Microsoft Azure」のエバンジェリストとして活躍。日本語AI bot「りんな」にも関わった。2人は日本オラクルからIT業界のキャリアをスタートさせた同志だ。セールス&マーケティングリーダー、エンジニアリングのリーダーとして、同じ事業をみていたこともある。LINE AIカンパニーは道下氏の他、コンタクトセンターソリューションの経験が長い飯塚純也氏(カンパニーエグゼクティブCRO AI事業推進室 副室長)も在籍する。飯塚氏はジェネシスでコンタクトセンターソリューションを見てきた人物でもある。また、道下氏と飯塚氏はSalesforce時代に「Service Cloud」ビジネスの立ち上げを共にした仲でもある。
「今までのIT業界におけるキャリアの中で、道下も飯塚も私も、現在さまざまな業界で企業のDXに注力する方々のほとんどが、何らかの取り組みでご一緒させていただいたことのある直接の知り合いです。直接つながっていなくても1ホップでつながる方がほとんどです。私たちがハブとなってビジネスをより良くしたいと考える方をつなぐことも重要だと考えています」(砂金氏)
企業の中に残るデジタル化されてこなかった領域をどうDXにつなげるか――。LINE AIカンパニーが仕掛ける日本企業のDX支援の姿、同社の今後のビジネス展望について砂金氏と道下氏に聞いた。
――直近は日本語のOCRや自然言語処理技術を生かした音声認識、音声合成などの領域での取り組みが目立ちます。AI-OCRにおいては、企業受けの帳票デジタル化で事例を積み上げつつ、国立国会図書館の蔵書のデジタル化にも貢献しています。ただし、日本語のOCRや自然言語処理の技術を持つ企業は他にも存在します。LINE AIカンパニーはその中でどうビジネスを推進する考えなのでしょうか。
砂金氏: AI(人工知能)の研究開発の成果を基にプロダクトを作って外部のお客さまあるいはZホールディングス、LINEなどのグループ企業のサービス品質改善に取り組んでいます。ずっと言い続けてきた私たちの価値基準は「人にやさしいAI」であることにあります。この点はずっとぶれずに取り組んできた点です。われわれが手掛けるAIは人を支えるものであり、工場の中の歩留まりを検知するとか、自動運転に寄与するといった産業向けのプロセス改革ではなく、人々のコミュニケーションやプロセスを対象としてきました。
事務手続きなどの、エンドユーザーに不便を強いがちな領域にLINE AIカンパニーのソリューションを展開することで、ユーザビリティやユーザー体験を変え、不便を便利に変えられる。AIによって便利に改善できる余地があるところを見つけてDXを支援するのがわれわれの今の使命だと考えています。こう考えた時にBtoBの領域では道下さんがよく知るSalesforceのようなSFAやCRMとの連携は、今後も注力したい領域の一つです。
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