日本は何位? 世界暗号資産普及指数から読み解く暗号資産の今

暗号資産は世界で成長しているのか。どこの国が注力しているのか。結果から見えた3つの注目すべき点とは。

» 2022年10月04日 08時00分 公開
[関谷祥平ITmedia]

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 Chainalysisは2022年9月14日(現地時間)、「2022 Geography of Cryptocurrency Report」を発表し、暗号資産普及率を基準とした世界各国のランク付けを公開した。

 同資料は、暗号資産を投じている金額の割合が最も高い人々が存在する国はどこなのかを計測するとともに、個人投資家がデジタル資産を最も活用している国はどこかということにも着目している。

指標の算出方法

 2022 Geography of Cryptocurrency Reportは5つの副指標で構成される。これらを用いて154カ国を順位付けし、各国の5つに副指標の順位の相乗平均を取り、その最終値を0から1の範囲で正規化して最終的な順位を決定した。最終的なスコアが1に近いほど国の順位が上位になる。

 5つの副指標の計算方法は「1人当たりの購買力平価(PPP)で加重した、中央集権型取引所受領のオンチェーンの暗号資産の受信金額」「1人当たりのPPPで加重した、中央集権型取引所受領のオンチェーンの個人受信金額」「1人当たりのPPPおよびインターネットのユーザー数で加重した、ピア・ツー・ピア(P2P)取引所の取引額」「1人当たりのPPPで加重した、DeFiプロトコルから受領のオンチェーン暗号資産総額」「1人当たりのPPPで加重した、DeFiプロトコルから受領のオンチェーン個人取引総額」だ。

2022年世界暗号資産普及指標 上位20カ国 日本のランクインは?

 2022年世界暗号資産普及指標の上位20カ国は図1のようになった。

図1 上位20カ国(出典:Chainalysis「2022 Geography of Cryptocurrency Report」)

 注目すべき点は3つある。「弱気相場で世界的に普及が減速するが、強気相場以前の水準は維持」「新興市場が世界暗号資産普及指標に与える大きな影響」「ベトナムが最上位を維持、米国は5位に浮上、中国がトップ10に復帰」だ。

弱気相場で世界的に普及が減速するが、強気相場以前の水準は維持

 以下のChainalysisのデータ(図2)は2019年半ばから順調な拡大を見せてきた暗号資産の世界的普及が2021年以降に横ばい状態になっていることを示している。同データは全154カ国の指標スコアを四半期ごとに合計し、今回の指標の導出方法を全体に適用した後にその数値を再度指標化して、世界の暗号資産の普及が拡大する様子を時間の経過と共に示した。

図2 四半期別グローバル指標スコア(出典:Chainalysis「2022 Geography of Cryptocurrency Report」)

 世界における暗号資産の普及は2021年の第2四半期をピークに、それ以降は変動を見せている。同年第3四半期は落ち込んだが第4四半期には反発、そして再度下落局面へと転じている。とはいえ、2019年の水準を大幅に上回っている点には留意する必要がある。

 Chainalysisはレポートで、「2020年および2021年の価格上昇にひかれた多くの人々が、依然として資産のかなりの部分を暗号資産に投資していることを示唆する。多額の暗号資産を長期に保有する投資家は弱気相場でも保有し続ける。こうした保有者が市場の回復を楽観視し、市場のファンダメンタルズが比較的健全に保たれている」という見解を示した。

新興市場が世界暗号資産普及指標に与える大きな影響

 世界銀行によれば、各国は所得や全般的な経済発展状況に応じて、「高所得国」「上位所得国」「下位中所得国」「低所得国」の4つに分類される。この枠組みに当てはめると、図1の国々のうち、10カ国(ベトナム、フィリピン、ウクライナ、インド、パキスタン、ナイジェリア、モロッコ、ネパール、ケニア、インドネシア)が下位中所得国となる。8カ国(ブラジル、タイ、ロシア、中国、トルコ、アルゼンチン、コロンビア、エクアドル)が上位中所得国、2カ国(米国、英国)が高所得国だ。

 下位中所得国および上位中所得国のユーザーの場合、「自国への送金」「自国通貨の不安定さ」「地域経済の固有の金融ニーズを満たす」といった理由で利用されるケースが多い。

 Chainalysisは「これらの国々はBitcoinやステーブルコインに頼る傾向が強くなっている。今後数年間で、高所得国および低所得国での利用を増やすために暗号資産業界がどのようなソリューションを構築できるかに関心が集まるだろう」と指摘する。

ベトナムが最上位を維持、米国は5位に浮上、中国がトップ10に復帰

 ベトナムは2年連続で暗号資産普及国の1位だ。同国の副指標の順位を見ても、集中型、DeFi、P2Pなど暗号資産全般にわたり、購買力や人口調整後の普及率が際立って高くなっており、ベトナムが暗号資産を好んで利用していることが分かる。

 World Economic Forumが2022年に発表した「These are the countries where cryptocurrency use is most common」によれば、ベトナムの消費者のうち21%が暗号資産を利用または所有しており、これはナイジェリアの32%に次ぐ数字だ。今後も普及率は増加すると考えられ、特に「P2E」(Play to Earn:遊んで稼ぐ)や「M2E」(Move to Earn:動いて稼ぐ)といった暗号資産ベースのゲームなどが東南アジアの国々で人気なのが大きな理由だ。

 米国は2021年の8位から2022年は5位への順位を上げた。先進国としては米国が指標の中でも群を抜いて最上位に位置し、英国と共にトップ20入りを果たした。

 中国は2022年に10位となり、2021年の13位から順位を上げた。中国政府は2021年9月に暗号資産取引の禁止を発表するなど、暗号資産業界に対して取り締まりを強めているが、副指標をみると中国における集中型サービスの利用は高く、購買力調整済みの全体と個人取引の両方で2位となってる。

 Chainalysisは「中国政府による暗号資産取引禁止などの規制は効果がないか、強制力が弱いことが分かる」とした。

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