1000億円程度ではないGoogleの日本への投資と経済効果編集部コラム

メガスケーラーと呼ばれるクラウド事業者による日本への投資が拡大しています。Googleが発表したデータセンターへの投資額は1000億円ほどといわれますが、投資全体の経済効果はとてつもない額になるようです。

» 2022年10月11日 15時30分 公開
[荒 民雄ITmedia]

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ブログでは「私たちの新しい日本のデジタル化イニシアチブの詳細を岸田総理と共有」したとも(出典:ピチャイ氏のブログ)

 2022年10月7日、Googleが印西市(千葉県)にデータセンターを開設すると発表しました。2023年のオープンを予定しています。

 Googleは既に「7億3000万ドルをデータセンターに投資する」と公表しており、印西市におけるデータセンター建設はその投資の一環です。

 Googleのスンダー・ピチャイ最高経営責任者(CEO)はスマートフォンの発表会のタイミングに合わせて来日していたようで、発表会場にサプライズで登場してデータセンターへの投資を公表しました。同日のうちに日本の経済紙のインタビューにも応え、その内容が大々的に報じられたことからも、日本への投資を重視する姿勢が感じられます。

建設中のデータセンター(出典:ピチャイ氏のブログ)

 なお、ピチャイ氏の発表の翌週に当たる2022年10月11日にはAmazon Web Servicesが日本へのこれまでの投資について発表しています

※本稿は2022年10月11日配信のメールマガジンに掲載したコラムのを基にしています。登録はこちら


「GDPを3030億ドル押し上げる規模」でネットワークインフラ投資を急ぐGoogle

 印西市のデータセンターはGoogleが敷設を進めている独自の海底ケーブル網「Topaz」と接続する計画です。

 ネットワークトラフィックが増える中、データセンター事業者は通信帯域の「取り合い」を激化させています。大規模なサービスを展開する場合は、通信網も独自で設備を持っていた方がコスト効率が良く、サービス最適化もしやすくなるメリットがあるためと考えられます。

 Googleは既に、2010年に運用を開始した海底ケーブル「Unity」、2013年に運用を開始した「South-East Asia Japan Cable」(SJC)、2016年に運用を開始した「FASTER」にも出資しています。

 これらはいずれも複数の企業連合で敷設するものでしたが、これから開通するTopazはGoogle1社の名前で敷設されるようです。Googleは北米大陸と日本の間だけでなく、アジア圏でも日本とシンガポールやグアム島(米国)、フィリピン、台湾、インドネシアを結ぶ海底ケーブル「Apricot」計画も発表しています。

海底ケーブル「Topaz」はバンクーバー市(カナダ)から茨城県、三重県につながる予定。2023年の稼働開始を見込む(出典:Google Cloudのブログ)

 同様の海底ケーブルへの投資は日本の通信会社も手掛けています。データセンター事業を持つ企業としては、例えば直近ではNECがカリフォルニア州(米国)と茨城県、三重県を結ぶ「JUNO Cable System」の利用契約を締結しています。

 2001年、Googleは米国外で最初のオフィスを渋谷区(東京都)に構えていましたが、データセンターはいままで国内にありませんでした。アジア地域は香港とシンガポールに次いで印西市が3番目の拠点となるそうです。

 ピチャイ氏はブログで、Analysys Masonの調査を引用して「Googleの日本におけるネットワークインフラへの過去と現在の投資により、2022年から2026年の間にGDPを3030億ドル増加させる可能性」があると記しています。

 Googleはこれらのインフラへの投資と並行して、エンドユーザー拡大に向けた取り組みも推進しています。例えば日本の中小企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)を支援する「Grow with Google」プログラムは2022年までに1000万人にトレーニングを提供することを目標に掲げており、既に700万人超がトレーニングを受けたとしています。これらの何割かがGoogleのサービスを使い続けるようになる前提で海底ケーブルへの投資を進めていることでしょう。

 クラウドの利用が一般化する中、顧客を維持するために各社がサービス提供品質の高度化への投資を本格化させています。競争が進めば、ユーザーであるわれわれもメリットを享受できることでしょうから、他のサービスと良い競争が生まれることに期待したく思います。

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