「データ分析はクロスクラウドが基本」老舗ベンダーが語るモダンデータ基盤の姿(1/2 ページ)

スケーラブルなデータ活用を目指してモダンなデータ分析基盤を構築する動きが活発だ。老舗ベンダーが新たに、モダンなデータ基盤とデータ分析における「クロスクラウド」のアプローチを示した。マルチクラウドではなし得ない価値があるという。

» 2022年10月28日 08時00分 公開
[谷川耕一ITmedia]

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 2022年8月30日、Teradataがクラウドネイティブアーキテクチャの新製品「VantageCloud Lake」を発表した。これは、従来「Teradata Vantage」で対象としてきたエンタープライズ向けのワークロードだけでなく、より幅広いユースケースで利用できるセルフサービス型のアナリティクスデータプラットフォームだ。VantageCloud Lakeの特長や提供する狙いなどについて、Teradataの製品最高責任者であるヒラリー・アシュトン(Hillary Ashton)氏に話を聞いた。

Teradata 製品最高責任者 ヒラリー・アシュトン(Hillary Ashton)氏(出典:Teradata提供資料)

今までと異なる実装を持つ「Lake Edition」を発表した意味

 TeradataはVantageCloud Lakeの提供に合わせ、製品構成を整理した。従来のエンタープライズ向けのアナリティクスデータプラットフォームTeradata VantageはEnterprise Editionになり、VantageCloudのブランドの下で新たにLake EditionとEnterprise Editionの2つを置く構成となった。

Teradataのクラウドアナリティクスデータプラットフォームの最新ラインアップ(出典:Teradata)

 この2つのエディションは単なるライセンスの違いではなく実装そのものが異なる。

 Lake Editionは、主にオブジェクトストレージを活用することで、さまざまなタイプのデータを柔軟に分析できる。セルフサービス型で利用でき、小規模なアドホック分析から始めてニーズに応じ拡張するような使い方に向いている。

 Enterprise Editionは、主にブロックストレージを活用することで、従来のデータウェアハウスのように大量データに対する特定のクエリを高速に処理できる。サービスレベルを維持した環境を構築しやすく、IT予算などの予測も立てやすい。既にEnterprise Editionを使っていて、より柔軟なデータ活用のために新たにLake Editionを組み合わせられる。

「Teradata VantageCloud」の「Lake Edition」と「Enterprise Edition」。「レイク」から「ウェアハウス」まで(出典:Teradata提供資料)

 TeradataはLake Editionの開発に2年ほど前から取り組んできた。それ以前からクラウドに対する要望はあり、Enterprise Editionをクラウドに最適化し、「AWS」(Amazon Web Services)や「Microsoft Azure」などのパブリッククラウドで利用できるようにしてきた。

 新たなLake Editionでは、「コンピュートとストレージを完全に分離したことで真の弾力性を発揮できるようになり、柔軟なスケールアップやスケールダウンが可能になる」とアシュトン氏は説明する。この柔軟な拡張性がクラウドネイティブアーキテクチャを掲げる理由だとも言う。

「VantageCloud Lake」の分析をスケーラブルに革新(出典:Teradata提供資料)

 これまで多くの顧客が、Teradataの製品を使ってデータウェアハウスを実現してきた。それらのデータウェアハウスは、主に莫大なデータを高速処理することで、レポーティングや不正の検出、BIツールなどを用いた分析などの用途で使われている。こうした用途は、“自由で実験的”というよりも、どちらかといえば“定型的”だったり“限定的”だったりすることが多い。

 Lake Editionは、データウェアハウスに蓄積してきたデータに対し、従来の分析やレポーティングの業務を脅かすことなく、トライ&エラーをするような実験的な利用も可能にした。つまり、機能が豊富で堅牢だったTeradataのデータ活用環境に、Lake Editionによるモダンなクラウドアーキテクチャを加え、定型的と自由なデータ活用の両立を果たしたのだ。

 Lake Editionは、Teradataの既存顧客がデータウェアハウスのデータを活用しながら、新たなAI(人工知能)モデル開発の実験を行いたいといった要望に応えられる。また、新たな市場にチャレンジするスタートアップ企業が、AIを含めた機械学習などの新しい技術を利用する際にも、これを支援する。「Lake Editionは、部門レベルの小さなニーズもターゲットにする。IT部門はもちろん、マーケティングや財務、サプライチェーンといった事業部門も顧客対象だ」とアシュトン氏は言う。

 新しい市場にチャレンジできる企業は、ビジネスの先が見通せないため、大規模なデータウェアハウスをいきなり構築しないのが普通だ。未知なるチャレンジは、スモールスタートが定番なのだ。そのニーズに対応するため、Lake Editionは月額5000米ドル未満という安価な価格から利用できる。エンタープライズ向けで高額なイメージのTeradata製品を安価に利用できるのも、Lake Editionの特徴であり、従来の同社のイメージを一新するものだろう。

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