「データ分析はクロスクラウドが基本」老舗ベンダーが語るモダンデータ基盤の姿(2/2 ページ)

» 2022年10月28日 08時00分 公開
[谷川耕一ITmedia]
前のページへ 1|2       

VantageCloudはマルチクラウドではなく「クロスクラウド」

 ところで、コンピュートとストレージを分離するアーキテクチャは、「Snowflake」や「Amazon Redshift」といった分析に特化したクラウドデータベースソリューションも同様だ。今や分析系データベースでは、このアーキテクチャが定番ともいえる。分離することで、コンピュートとストレージを別々に拡張、縮小でき、性能や容量の面で大きな柔軟性をもたらす。

 Lake Editionは、この高い拡張性に加え、Teradataの長い歴史と経験から生まれた高性能分析エンジン「ClearScape Analytics」を備える。これは、Lake Editionだけでなく、VantageCloudプラットフォーム全体で利用できるものだ。

一般に処理性能が高ければ、それだけCPUやメモリなどのリソースを削減できる。少ないリソースで済めば、AWSなどのインフラ利用料も削減される。「結果的にLake Editionは他の分析ソリューションよりも価格性能比が高くなり、TCO(総保有コスト)を最低限に抑えられる。そのことを証明するベンチマークレポートが、既にいくつかあります」(アシュトン氏)

 オープンであることも、ClearScape Analyticsの特徴だ。「Dataiku」や「Python」「H2O.ai」など、さまざまな言語やツールが使用できる。これらをVantageCloud上で動かすことで、ClearScape Analyticsの高い性能の恩恵を受けられるのだ。「アナリティクスのパフォーマンスはかなり違ってくる。あるユーザーは、別の環境で36時間かかっていた分析処理をClearScape Analyticsで動かしたら、たった12分で完了したという例もある」とアシュトン氏は自信を見せる。

 ClearScape Analyticsは機械学習の処理も可能だ。VantageCloudから機械学習用データを抽出し、別の機械学習用ツールに移動する手間も発生しない。別途、機械学習用環境を用意する必要がなく、これもTCOを下げることにつながる。

 また、他のクラウド上のデータ活用ソリューションでは、データを手元の自社クラウドに移動させて利用するのが一般的だ。一方Teradataは、データをオープンにつなげることを意識している。「Teradata Data Fabric」を使い、データがどこにあってもVantageCloudで利用できるようにしているのだ。場所を問わず透過的にアクセスできるアーキテクチャにより、分析のために分散しているデータを集める必要はなく、アナリティクスを実現するまでの時間はかなり短くなる。

 現状、多くのデータ分析ソリューションがマルチクラウド対応をうたう。この場合のマルチクラウド対応は、さまざまなクラウド上でそのデータ分析ソリューションが動くことにすぎない。対してTeradataは、Data Fabric機能により「1つのクエリでマルチクラウドのデータを活用できる点は、他製品との最も大きな違いだ。弊社はこれをマルチクラウドではなく、『クロスクラウド』と呼んでいる」とアシュトン氏は言う。

「Teradata VantageCloud」の2つのエディション比較(出典:Teradata提供資料)

パートナーのイメージを変え幅広くLake Editionの価値を伝える

 Lake Editionでターゲット領域を拡大したため、Teradataは営業スタイルを変える必要がある。エンタープライズ企業向けには、これまで通り個別にニーズをヒアリングして手厚いサポートをするハイタッチ営業体制が継続される。より幅広く情報を届けなければならないスモールスタートのニーズには、デジタルマーケティングなどの手法を最大限に活用することになる。

 このようなアプローチを、Teradataはあまり経験してこなかっただろう。IT部門担当者なら、Teradataの認知度はそれなりに高い。しかし業務部門の担当者には、そう広く認知はされていないはずだ。そのようなターゲットにいかにLake Editionの価値を伝えるのか。これはTeradataにとって新たなチャレンジとなりそうだ。

 さらに、日本で幅広い顧客にアプローチするには、パートナーの力が欠かせない。まずはパートナーのTeradataに対するイメージをLake Editionで払拭(ふっしょく)するところから入る必要もありそうだ。アシュトン氏は、「Lake Editionは、まずは既にTeradataを導入している企業の業務部門などに使ってほしい。その上で、新しいビジネスのために実験的なデータ活用を行いたい人たちにも使ってもらいたい」と話す。まだまだ「高価で手が出ない」というイメージが付きまとうTeradataだが、そのハードルをいかに下げられるか。従来のイメージを覆せれば、競争力には自信があるようなので、同社による新たな市場獲得も成功するだろう。

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ