フードTech業界も協働ロボが進出 疲れ知らずの調理アシスタント誕生チポトレがAIキッチンシステム、位置情報技術をテスト

人件費が高騰する米国において、レストランチェーンのオペレーション自動化が進む。Tech企業への投資も増え、ついに協働ロボットが調理アシスタントや接客補助に使えるかどうかを本格検証する企業が出てきた。配膳ロボなどよりも一歩進んだ人を支援するロボットは普及するだろうか。

» 2022年10月24日 12時30分 公開
[Julie LittmanRestaurant Dive]

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Retail Dive

 米国のレストランチェーン「Chipotle Mexican Grill」(チポトレ・メキシカングリル、以降チポトレ)は、店舗のオペレーションを合理化し、顧客や従業員の負担を減らすために設計された複数のテクノロジーを試験的に導入している。

フードTech業界にも協働ロボが進出 疲れ知らずの調理アシスタント誕生

 これらのテクノロジーには(ビジョンAI〔人工知能〕を活用した食品産業のプロセスオートメーションソリューションベンダーである)PreciTasteのキッチン管理システムや、商品ピッキングサービスを展開するFlybuyが提供する位置情報技術が含まれる。

チポトレが導入に向けて検証を進める調理支援の協働ロボット「Chippy」(出典:チポトレのプレスリリース)

 2022年10月中にはカリフォルニア州ファウンテンバレーの店舗で調理支援ロボット「Chippy」のパイロットテストを開始する予定だ。

 これらの試験導入は、2022年のチポトレの流通トレーサビリティ強化と在庫管理の改善を目指す継続的な取り組みの一環だ。無線通信を使った自動識別技術もここに含まれる。

 2022年第2四半期の決算説明会でブライアン・ニコールCEOは「成長と生産性を高めるためにテクノロジーを追加することは、チポトレの主要戦略の一つだ」と語った。同社は「基本をに忠実かつ強力に実行する体制を強化するテクノロジーを導入している」と同氏は述べた。

店長いらず? 仕込みの分量もAIが最適指示

 カリフォルニア州オレンジ郡の8店舗で試験的に導入するキッチン管理システムは、AIを使って食材の量をリアルタイムでスタッフに知らせ、下ごしらえがどのくらい必要か、いつ調理を始めるべきかを作業員に伝えるものだ。各レストランのリアルタイムでの生産計画も自動化される。

 オハイオ州クリーブランドの73店舗では、Radius Networksの位置情報管理テクノロジーであるFlybuyを試験的に導入している。チポトレのアプリを利用する顧客に到着情報とリアルタイムデータを提供している。このテクノロジーは、注文準備のメッセージ、誤ったピックアップ位置の検出、会計時にリワード(特典)のQRコードをスキャンするようユーザーに促すなどの機能を提供する。これまでのところ、このテストによって店舗内のリワードのエンゲージメント、注文アラート通知が改善され、配送ドライバーの割り当てが早くなっており、効率が向上しているという。

Flybuy Pickupのサービスイメージ(出典:Flybuyを運営するRadius NetworksのWebページ)

旧来の店舗システムも刷新、Tech企業への投資も急ぐ

 同社は、「ステージゲート方式」にならって各ステージで顧客やクルーの声を集め、今後全国でChippyを導入するかどうかを決定する予定だ。そのChippyのテストは、Miso Roboticsとの提携で、トルティーアチップの製造工程を自動化する。

 チポトレは、精度とスループット向上を目指して2022年末までにPOSシステムのハードウェア更新も予定している。また、非接触型決済に対応するため、PINパッドを導入し、シフト管理を改善するために労務管理ツールも追加している。

 チポトレは、同社のミッションに沿った新興のTech企業を支援するために5000万ドルの「Cultivate Nextベンチャーファンド」を設立したことから、市場からはさらなるテクノロジーとイノベーションの創出を期待されている企業だ。このファンドの最初の出資先は、キッチン業務を自動化するフードサービスプラットフォームのHyphenとマッシュルームに特化した食品会社のMeati Foodsに提供された。

 これらをきっかけに「2022年7月の時点でチポトレには200件以上の出資に関する問い合わせがあった」とニコール氏は述べている。

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