イベントを通して強調された「Oracleの変化」 競合他社との差別化で独自の進化をOracle CloudWorld 2022 レポート

Oracle CloudWorld 2022が閉幕した。同イベントはOracleにとって新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行後、初めてとなる対面での大規模イベントだ。イベントを通して感じたOracleの変化、そして日本オラクルの社長を務める三澤氏が語った今後の展望を紹介する。

» 2022年11月01日 08時00分 公開
[関谷祥平ITmedia]

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 Oracleは2022年10月18〜20日(現地時間)、年次イベントである「Oracle CloudWorld 2022」を米ラスベガスで開催した。3年ぶりとなる対面イベントでは、多くの基調講演で登壇者から「対面でうれしい」との声が聞かれた。

 年次イベントはどの企業にとっても新たなサービスや製品を発表する重要なイベントだ。世界中からパートナーやメディアなどが集まり、主催企業の進化を見に来る。特にOracleはクラウド領域において競合他社と比較しても後発であり、「今後、他のベンダーを抜いていこう」という立場だ。このような背景もあり、Oracle CloudWorld 2022への期待はメディアの中でも大きなものがあった。イベントに参加して感じた、「これまでのOracleとは違う新たな一面」と日本オラクルの三澤智光氏(取締役 執行役 社長)が語ったこととは。

イベント会場の周りの街並み(筆者撮影)

カスタマーセントリックで新たなサービスを生み出すOracle 

 今回のイベントにおける基調講演などで、筆者が多く耳にした言葉は「社会のために」「ヘルスケア産業を改革して多くの命を救う」といったものだ。同イベントで公開された新たなサービス「Oracle Alloy」はパートナー企業が独自のクラウドを顧客に提供することができるサービスで、規制が強まるクラウド業界に新たな可能性をもたらした。また、同社でCTO(最高技術責任者)を務めるラリー・エリソン氏の講演では、「ヘルスケア産業への積極的な姿勢」が強調され、Oracleが目指す将来像が強く語られた。

三澤智光氏(筆者撮影)

 また、三澤氏は日本記者団の取材に対し、「このイベントを通して、Oracleに変化が起きていると再認識した。パートナーにフィーチャーし、カスタマーセントリックに取り組んでいる。ユーザーの成長を支えるためにはマルチクラウドが重要で、各インダストリーに特化したサービスの提供が求められている」と語った。

 今回のイベントで発表されたサービスのうち、同氏が「日本向きだ」と話すサービスがOracle Alloyだ。同サービスを利用することで、パートナーは独自のクラウド環境を構築して自社の顧客に提供できるようになり、これによって各業界が持つ特徴や課題に柔軟な対応が可能になる。

 三澤氏はこれについて「今、日本で討議されている話を解決できる唯一のソリューションではないだろうか」と期待を寄せる。

 「日本の企業からは『日本のベンダーに自社のデータを管理してほしい』という声をよく聞く。先日、日本の『ガバメントクラウド』に選定された企業がOracleを含め全て海外のベンダーであることに対し、ネット上などではデータの安全性を危惧する声も上がった。Oracle Alloyは初めて企業のブラックボックスを無くし、最先端の技術をユーザー自身が管理することができる。データの運用管理に慎重な企業や組織は同製品に深い関心を持つだろう」(三澤氏)

OracleはOracleの強みで成長を

 依然として「Amazon Web Services」(以下、AWS)や「Google Cloud」が日本国内のクラウド業界では存在感を持っているが、それでも三澤氏は「Oracleはかなり大きな事業者へと成長している。OracleのCerner買収もわれわれの大胆な挑戦の表れだ」と期待を寄せた。医療IT企業であるCernerはSalesforceやGoogleも買収に積極的な姿勢を見せていたようで、北米だけでも今後40兆円規模のマーケットになるといわれるヘルスケア産業においてはOracleが一歩先を行くようだ。

 また日本市場での事業拡大に向けて同氏は「AWSやGoogle Cloud、『Microsoft Azure』がどこを強みに事業展開しているかは分かっている。一方でOracleの強みはこれらの企業が参入してこれないところにある。NRI(野村総合研究所)が導入しているシステムなどはOracleでしか動かせない」と自信を見せる。

 「今後は競合他社が取れない分野で成長を続ける。また『ミッションクリティカルはOracle』というイメージの強化に取り組む。目的別データベースではもう『B2B』には対応できない。全てのサービスが統一されることが求められている」(三澤氏)

(取材協力:日本オラクル)

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