「Oracle Alloy」登場 Oracle Cloudを自社サービスとして提供可能にOracle CloudWorld 2022 レポート

Oracleが発表した「Oracle Alloy」は、企業の成長を支える新たな武器になるかもしれない。クラウドへの規制が各国で強まり、企業のクラウド移行が困難になっている。この状況を打破するために登場したのがOracle Alloyだ。実際に同サービスを利用しているイタリアの通信会社大手、TIMの事例も紹介する。

» 2022年10月20日 14時06分 公開
[関谷祥平ITmedia]

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 Oracleは2022年10月19日(現地時間)、新たなクラウドインフラストラクチャプラットフォームである「Oracle Alloy」を発表した。同サービスを利用することで、サービスプロバイダーやインテグレーターなどはもちろん、金融機関や通信事業者などの組織がクラウドプロバイダーとして自社の顧客に新たなクラウドサービスを提供できるようになる。

 同サービスが誕生した背景、特徴、顧客の声が分かった。

本稿はOracle主催イベント「Oracle CloudWorld 2022」の基調講演とその後のインタビューを基に作成した。

マグワイク氏とバッタ氏が語った クラウドベンダーに襲い掛かる規制強化と対応策

クレイ・マグワイク氏(筆者撮影)

 Oracleのクレイ・マグワイク氏(エグジェクティブバイスプレジデント)は講演の中で「世界でクラウドベンダーへの規制が強まっている」と危機感をあらわした。同氏はEU(欧州連合)やインドにおけるクラウドベンダーへの規制強化を例に挙げ、「政府は自国の企業が自国のクラウドベンダーを使うことを望んでいる」と続けた。

 同氏は「このような状況が今後も世界で加速していけば、企業におけるクラウド移行はこれまで以上に難しくなる。各国でクラウドサービスを提供できるパートナーシップが重要になる」と警鐘を鳴らす。

 Oracle AlloyはOracleのパートナー企業が独自にサービスを構築して自社の顧客に提供できる。この形態であれば限られた少数のクラウドベンダーが市場を独占することなく、クラウドサービスを拡大することができる。

 「企業はクラウドベンダーによる独占を望んでいない。柔軟性と独立性が求められている」(マグワイク氏)

図1 講演するクレイ・マグワイク氏とスライド「This is your Cloud」(筆者撮影)

 企業はOracle Alloyでカスタマイズした独自のクラウドサービスをパッケージ化して提供でき、それぞれの企業の市場や業界特有のニーズを満たす製品設計が可能だ。自社のデータセンターでOracle Alloyを独立して使用できるため、各国の規制要件などに柔軟に対応できる。

 マグワイク氏によれば、同サービスは「データコントロールに関心があるパートナー」や「大手のSler」「インターネットサービスプロバイダー」を中心に拡大することを想定しているようだ。

インタビューに答えるカラン・バッタ氏(筆者撮影)

 カラン・バッタ氏(プロダクトマネジメント バイスプレジデント)はOracle Alloyに関して「規制強化が進む中で、企業のビジネスをサポートするには各国にクラウドベンダーが存在する必要がある。さらに業界特有のニーズを満たすためにもOracle Alloyは重要なものになる」と期待を寄せた。

 例にも挙がった「まずはEUやインドを中心にビジネス拡大を狙うのか」という質問に対して同氏は、「規制は変化していくし当然ビジネスは世界で拡大したい。ただまずはEUやインドを中心に取り組むことになるだろう」と見解を述べた。

 規制強化の問題はOracleだけでなく、他のクラウドベンダーにとっても課題だ。

 同氏は「もちろん、他のクラウドベンダーが追従する可能性はある。その時にどのベンダーを選ぶかはその企業次第だ。ただOracleはこれまで多くの投資を行い、他の企業よりも速いスピードで成長してきた」と自信を見せた。

 講演でマグワイク氏は「クラウドベンダーからの独立」「ベンダー同士のつながりを強化して柔軟性を向上させる」といった点を強調した。

 これまで、異なるクラウドプラットフォーム同士のインテグレーションは困難が多く、ユーザーはどのクラウドを使用するかを選択する必要があった。同氏は「MySQL HeatWave on AWS」や「MySQL HeatWave for Azure」を柔軟性や独立性の例に挙げた。両サービスはOracleが提供する「MySQL HeatWave」を「Amazon Web Services」や「Microsoft Azure」で利用できるものだ。

図2 Oracleにおける他ベンダーとのつながり(筆者撮影)

 「これからのクラウドは、たくましく、ユーザーが求める場所で他のベンダーとも協力して動くものが求められる。Oracleはより柔軟で使いやすいクラウドへと変化を続ける」(マグワイク氏)

図3 マグワイク氏が語る未来のクラウド条件(筆者撮影)

実際にOracle Alloyを使用している企業はどう感じているのか

エリオ・スキアーボ氏(ビデオメッセージより筆者撮影)

 「私たちの望みは市場の中でユニークな存在になり、情報通信に関わる全てのサービスを提供できる国内で唯一のプラットフォームになることだ」――。マグワイク氏の講演の中で公開されたビデオメッセージでこう語るのは、TIMのエリオ・スキアーボ氏(エンタープライズ イノベーション チーフオフィサー)だ。

 同氏は成功への秘訣として「マルチクラウドによるビジネスへのアプローチに加え、サイバーセキュリティへの対策、データセンター、クラウドアプリケーションのつながりが重要だ」と話し、「Oracleはこれらの条件を満たす」と続けた。

 「プライベートやパブリック、ハイブリッドクラウドが合わさることが柔軟性とイノベーションを促進する」

 同氏は今後の企業のミッションとして「時間を削減しその時間を人々に返す。そしてその時間を他のことに使い、ビジネスの進化に生かすこと」だと指摘した。これを実現するためには「聞くこと」が欠かせないと同氏は説明する。

 「私たちは顧客に耳を傾け、彼らのニーズや挑戦、課題、熱意などに関する理解を深めなければならない。そしてともに解決策を見つけるのだ」

(取材協力:日本オラクル)

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