多くの企業が今、マルチクラウド戦略に舵を切っているが、その複雑性が課題になるケースも多い。これを解消する鍵は何か。Dell Technologiesの副社長がポイントを語った。
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編集者注:本稿は、Dell Technologiesのコーポレート戦略担当副社長、ミンディ・カンシラ氏によるゲスト記事です。
マルチクラウドの世界では、企業はプライベートクラウドとパブリッククラウドに投資している。リアルタイムで生成される膨大なデータを管理するために、エッジでスピンアップする新しい機能が次々と登場し、クラウドコンピューティングの威力を発揮している。
そして今、さらに多くのクラウドが登場している。テレコムやソブリンクラウド、その他、医療、金融、政府、小売、メディアに特化したサポート、アプリケーションおよび要件を提供する垂直産業クラウドなどだ。
これはクラウドへの投資価値を最大化し、重要なビジネス目標を達成しようとする企業にとって朗報である一方、マルチクラウドの状況を複雑にしている要因でもある。非常に専門性の高いクラウドの普及によって、企業がクラウド間でデータやアプリを自由に移動できなければサイロ化が進む可能性がある。
企業は堅牢なマルチクラウド戦略によって、柔軟性や拡張性といったパブリッククラウドの効率性の恩恵を受けつつ、パフォーマンスやコントロール、セキュリティなどの利点をオンプレミスで実現することが可能になる。
クラウド戦略を構築するとき、1つのプラットフォームと1つのプロバイダーを選び、そのアプリと少数のパートナーに依存するという、モノリシックなクラウドアプローチが当然の答えだと言う人もいるかもしれない。
しかしこれではイノベーションが阻害される。クローズドなプラットフォームは、クラウドと開発者のエコシステムにおけるいわゆる「ウォールドガーデン」(壁に囲まれた庭)であり、エコシステム全体の統合を減少させ、ベンダーロックインにつながる。
上記のプラットフォームは当初、簡単に運用できると思えるかもしれない。しかし企業は独自のサービスセットに制限されるため、将来的に業界の革新を取り入れたり採用したりする能力に影響が及び、長期的には損失を被ることになる。
複数のクラウドやサービスに投資している企業は、多くの場合そのバラバラの部分を自分たちで解決することになる。その回避策のために、イノベーションや生産性に投じるべき時間とリソースが奪われる。
IDCの調査によれば、3分の2の企業(66%)がより少数の戦略的なデジタルインフラやクラウドベンダーと取引したいと考えており、68%がベンダーロックインを避けることが重要だと回答している。
企業はこれらのクラウドやアプリケーション、プラットフォーム、サービスをシームレスに連携させたいと考えている。また、マルチクラウドをデフォルトではなくデザイン(設計仕様)で実現したいと考えている。
しかし彼らは、必ずしも単一のサービスプロバイダーを望んでいるわけではない。複数のクラウドにわたってデータやアプリケーションを管理し、オーケストレーションする、よりシンプルな方法を求めている。
理想は単一の視点を得ることだが、より現実的な目標はクラウド管理とオーケストレーションのための独自のサイロ化したツールの数を減らし、価値を向上させることにあるだろう。
私たちはマルチクラウドの複雑性に対する解決策を違った角度から捉えている。サイロを取り払い、幅広いパートナーシップやコラボレーション、イノベーションで繁栄するオープンなエコシステムを構築する。
マルチクラウドは、パブリッククラウドのランダムな集合体でもなければ、それらのクラウドがプライベートクラウドに緩やかに接続されているものでもない。マルチクラウドは、クラウド間で拡大し続けるイノベーションのセットにアクセスし、モダンITを実現するためにエコシステム全体の能力が必要であることを認識することだ。
そこで登場するのがオープンなエコシステムだ。オープンエコシステムは、ソリューションやサービス間の相互運用性とより深い統合を可能にし、さまざまなプロバイダーからの革新的なテクノロジーに容易にアクセスできるようにする。
こうしてテクノロジーは単に機能するだけでなく、企業が本当に必要とする方法で機能するようになる。クラウドコンピューティングを活用したAI(人工知能)と自動化によって、データ駆動型のブレークスルーを実現したいのであれば、そうする必要がある。
一企業やイノベーターがテクノロジーの約束を果たすことはない。また、そうあるべきでもない。それこそが、テクノロジー産業が信じられないほど活気にあふれている理由で、世界最大の課題を解決する可能性の境界を押し広げる絶え間ないイノベーションなのだ。
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