IKEAのサプライチェーン部門が3年がかりで始める「協業」の中身

IKEAのサプライチェーン部門が3年越しの構想の実現に向けて動き出した。テキサスを舞台に物流を変える技術の検証を進める。

» 2022年11月16日 08時00分 公開
[David TaubeTransport Dive]

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Transport Dive

 IKEAのサプライチェーン部門が、あるパイロットプロジェクトを米国内で実施した。構想から3年を経ていよいよ実運用に向けた技術検証が進む。

IKEAのサプライチェーン部門が3年がかりで検証にこぎつけたプロジェクト

 Kodiak Robotics(以下、Kodiak)は、テキサス州で1週間、IKEA製品の自律配送テストを開始した。KodiakとIKEAの3カ月にわたる協業(2022年8月8日〜11月8日)に基づくものだ。

 ドライバーは荷積みされたトレーラーをピックアップして自動運転トラックに同乗する。毎日の輸送は、ヒューストン近郊のベイタウンにあるIKEAの配送センターから始まり、午後にダラスのフリスコ店で終了する。

協業について発表するkodiakのWebサイト 協業についてのKodiakの発表(出典:KodiackのWebサイト)

 このパイロットテスト(試験運用)は、IKEAが配送パートナーと共に自動運転トラックによる配送の規模を拡大する可能性を評価するのに役立っている。Kodiakは「Transport Dive」編集部の取材に「現在、長期契約に向けて話を進めている」とメールで回答した。

 KodiakとIKEAのサプライチェーン部門は、パイロットテストのはるか前から自律型トラック輸送について話し合いを始めていた。「両社が米国における自律型トラックの可能性について話し合いを始めたのは2019年だった」とIKEAの広報担当であるマルガレータ・ランツ氏は電子メールの取材に回答している。その時から自律配送まわりの技術は発展し続け、今回のパイロットテストが実現した形だ。

 自動車メーカーと荷主およびトラック運送会社は現在、実際のシナリオでこの技術をテストしており、安全性とオンタイムでの配送率について評価している。2022年だけでも、Kodiakは輸送会社10 Roads Express(注1)やWerner Enterprises(注2)といった企業とパートナーシップを締結している。競合のWaymoやTorc RoboticsもSchneider NationalやJ.B. Hunt Transport Servicesなどの企業との提携を進めている。

 車両メーカーや輸送会社各社は「テストが成功すれば、ドライバーを長距離路線から地方路線にシフトさせるなど、労働力の大幅なシフトにつながる可能性がある」と期待を寄せる。

 「私たちは共に安全性を高め、ドライバーの労働条件を改善して、より持続可能な貨物輸送システムを構築できる。自律型トラック輸送技術を採用すれば、ほとんどの人が希望する地元の運転業務に集中でき、ドライバーの生活の質を向上できる」と、Kodiakの創設者兼CEOのドン・バーネット氏はニュースリリースで述べている。

 この協業は、小売業者(IKEA)がテクノロジー企業の顧客として関与する関係にあると、Kodiakの担当者は電子メールで「Transport Dive」編集部に伝えた。

 このパイロットテストは、安全性と定時配送の面で既に成果が出ている。これに加えて「燃料節約やドライバーの労働条件、交通安全、異常接近や事故回避などの性能を評価していく」とランツ氏は記している。

 この試みは、運送会社がドライバーの雇用で継続的な問題に直面している中で実施された。しかし、自律走行トラックが労働問題の改善に役立つと指摘しているのは運送会社だけではない。ランツ氏は、ドライバーが家族や大切な人と離れて夜を過ごす長距離輸送とは対照的に、自律走行ルートにおいては、地域に密着したルートを採用して機会を提供すると述べている。

 「業界がどのように変容していくのか、全ての答えを持っているわけではない」とランツ氏はつづっている。「自律走行車はこの不均衡を解消して、輸送業界を将来、魅力的な職場へと移行させ、多様な人々を引きつけて、成長、キャリア開発、ワークライフバランスの機会を提供する鍵となる可能性がある」

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