「宇宙から地球を良くする」 なぜAWSは宇宙事業に取り組むのかAWS re:Invent 2022

AWSにとって宇宙事業は重要なようだ。航空宇宙部門でディレクターを務めるクリント・クロジエ氏に「なぜ宇宙に取り組むのか」「何を目指しているのか」を聞いた。

» 2022年12月01日 13時25分 公開
[関谷祥平ITmedia]

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 Amazon Web Services(以下、AWS)は2022年11月29日(現地時間)、宇宙でのAWSコンピューティングおよび機械学習ソフトウェアのプロジェクトに成功したと発表した。同プロジェクトでは、小型衛星事業を手掛けるイタリアのD-OrbitがAWSコンピューティングおよび機械学習サービスを利用して、人工衛星プラットフォーム「ION Satellite Carrier」が持つ宇宙データの共有や分析を行った。

図1 搭載した人工衛星を放出するD-OrbitのION Satellite Carrier(出典:AWSのWebサイト)

 2022年1月から始まった今回のプロジェクトでは、AWSコンピューティングおよび機械学習ソフトウェアのプロトタイプをAWSとスウェーデンUnibapが構築した。AWSは人工衛星にエッジコンピュータを配置することでデータの共有や分析を可能にした。

 宇宙事業に取り組むAWSだが、狙いはどこにあるのか。何を目指しているのか。AWSの航空宇宙部門でディレクターを務めるクリント・クロジエ氏に聞いた。

宇宙への目的と日本の存在感

クリント・クロジエ氏

 クロジエ氏はインタビューの冒頭で「AWSは常にユーザーの課題解決に取り組んでいる。今回の宇宙での進展は、宇宙を舞台に活躍する企業を力強く支えるものだ。これらの企業にとって、『宇宙で得られた大量のデータをどのように地球に届けるか』は常に課題だったからだ。この課題に対してAWSが協力できていることをうれしく思う」と語った。

 同氏によれば、AWSが宇宙事業を重要視する理由はその「必要性」にある。

 「AWSにとって、宇宙は極めて重要な場所だ。なぜなら世界の人工衛星の数は年々増加しており、現在は約5000だ。多くの専門家は10年後には約1万5000まで増えると予測する。これらが持つ全てのデータを効率的に、高速で組み合わせて活用することが求められている。宇宙事業に取り組む企業はこのような『必要性』から、クラウドへの移行が進んでいる」(クロジエ氏)

 宇宙事業が重要性を増す中で、同氏は日本について、「JAXA(宇宙航空研究開発機構)を中心に、日本は宇宙事業にとって極めて重要だ」と話し、「JAXAはこれまで多くの国際プロジェクトで重要な役割を果たしてきた。また日本という国は多くの可能性を秘めている。これらの経験や可能性は今後の宇宙事業の成長に重要になる」と続けた。

AWSは宇宙事業で何を目指すのか

 クロジエ氏は、AWSが宇宙事業に取り組む理由として「AWSは宇宙事業に取り組む企業の限界をなくして、成功へと導きたい」と話した。

 同氏は「宇宙事業で特に価値を感じる理由」として「世界を知れること」「宇宙のデータを利用して地球をより良い環境にできること」を挙げた。

 「宇宙を理解して、そこからデータを得る。全てのデータを共有して高い精度で分析できれば、地球における自然災害や環境問題の解決につながるかもしれない。だからこそAWSはD-Orbitはもちろん、NASA(米航空宇宙局)やBlue Origin(Amazonの創設者であるジェフ・ベゾフ氏が設立した宇宙航空企業)など、宇宙を目指す企業の多くをサポートしている。彼らの限界をなくし、成功に導きたい」

 クロジエ氏は、今後の宇宙への取り組みに対して「現在、Blue Originは宇宙ステーションの建設を進めている。ここでもクラウドの活用が重要になる。そのために、AWSはクラウドケイパビリティの強化に取り組む必要がある。企業は地球でも宇宙でもクラウドが必要になっている。私たちの挑戦は始まったばかりだ」と話し、インタビューを終えた。

インタビュー中のクリント・クロジエ氏(筆者撮影)

(取材協力:アマゾン ウェブ サービス ジャパン)

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