Amazon vs. TikTokが実現 ショート動画は小売をどう変えるか：Retail Dive

低迷している小売分野において、ソーシャルコマースを取り入れることは新たな活路になるかもしれない。

[Dani James，Retail Dive]

　Amazonは2022年12月、ソーシャルコマースの強化に向け、「Amazon ショッピングアプリ」内で「Inspire」という新たなサービスを開始すると発表した（注1）。

　同サービスでは、ユーザーが商品を発見、探索でき、ブランドやインフルエンサー、その他一般ユーザーが作成したコンテンツが「いいね」機能付きのスクロール式フィードで表示される。また、コンテンツ内のリンクから商品の購入ページに遷移できるようだ。

Amazonの新サービスの背景には同社の”低迷”？

　Inspireは同年12月上旬より米国の一部ユーザーを対象に提供が開始され、今後数カ月で同国の全ユーザーに提供される。

　アプリ内の下部に表示される電球マークのアイコンからはペットやゲーム、メークアップなど、自身に合ったコンテンツを表示でき、Inspireが今後、インフルエンサーが商品を宣伝する「TikTok」や「Instagram」などの競合になることは明らかだろう（注2）。

　Amazonのインフルエンサーであるプラクティカリー・プルシア氏は（注3）、「魅力的で楽しいショート動画コンテンツは、視聴者の興味関心を引き出す最も簡単な方法です。Inspireは、視聴者が欲しいと思った商品を「探す手間なく」アプリ内からそのまま購入できます。この利便性に優れたサービスは、私がAmazonを活用して築いたビジネスをさらに拡大するでしょう」と話した。

　このサービスの立ち上げは、Amazonの小売部門における業績が低迷する中で行われた。実際に、同社は複数のフルフィルメント倉庫の開設を中止または延期し（注4）、同社のCEO（最高経営責任者）であるアンディ・ジャッシー氏は小売部門におけるレイオフや雇用凍結を発表している。2022年には食料品以外の多くの実店舗も閉鎖している。こうしたことからも、同社にとって小売部門の強化は必須だったといえる。

　ソーシャルコマースは以前から多くのソーシャルメディアアプリやブランドで注目を集めている。

　2022年10月には、TikTokがフルフィルメントセンターの求人募集を開始した（注5）。これは、アプリ上に表示させる商品広告にTikTokがより直接的に関与していくことを示唆している。また、フォーマルウェアの小売業者であるDavid's Bridalは、2022年6月にTikTokで買い物ができるキャンペーンを開始し（注6）、平均の2倍のクリック率を獲得した。

　アパレルメーカーのPacsunも（注7）、TikTokの顧客リーチに強い期待を持っており、実際に2022年8月には「TikTokのフォロワー数を200万人にする」という目標を達成している。ソーシャルコマースは今後もさらに広がっていくだろう。

（注1）Amazon「Inspire」

（注2）Retail Dive「The Weekly Closeout: Saks.com raises more capital and Outdoor Voices could sell itself」

（注3）Amazon「Practically Pursia」

（注4）Retail Dive「Is Amazon done disrupting retail?」

（注5）Retail Dive「TikTok’s latest venture appears to be e-commerce fulfillment」

（注6）Retail Dive「David’s Bridal weds TikTok videos with commerce to drive click-throughs」

（注7）Marketing Dive「Pacsun hits 2M TikTok followers in brand identity push」

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