シリコンバレーに乗り込んだNEC「4年半」の成果 グローバルを見据えた新事業開発の進め方とはWeekly Memo(1/2 ページ)

NECが新事業の開発に向けて、自社が持つ技術を武器に米国シリコンバレーに乗り出して4年半。その成果とともに、同社の「グローバルを見据えた新事業開発の進め方」に注目したい。

» 2023年01月23日 15時50分 公開
[松岡功ITmedia]

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 NECは2023年1月19日、米国シリコンバレーで新事業の開発を行う子会社「NEC X」(エックス)の活動状況について、オンラインで記者説明会を開いた。NEC Xは、NECがシリコンバレーのスタートアップ企業によるエコシステムと連携し、NECが持つ技術を生かした新事業開発を進めるために2018年7月に設立された。会見では、その成果とともに、グローバルを見据えた新事業開発の進め方にも言及した。その内容が興味深かったので、本稿で取り上げたい。

 会見での説明役には、NECの中島輝行氏(コーポレート・エグゼクティブ)と井原成人氏(NEC X CEO兼プレジデント)が登壇した。

左からNECの中島輝行氏(コーポレート・エグゼクティブ)と井原成人氏(NEC X CEO兼プレジデント)

NECの「事業イノベーション」の考え方

 NEC Xの話に先立ち、中島氏が新事業の創出に向けたNECの「事業イノベーション」について、「これまでの新事業創出のプロセスを体系化するとともに、世界中から集めた質の高いアイデアを体系化したプロセスに流し込み、そこから創出した事業を最適な形で世の中に送り出していく」との基本的な考え方を示した(図1)。

図1 NECの「事業イノベーション」の考え方(出典:NECの会見資料)

 同氏は図1における「出口戦略」の形態として、縦軸にオープンイノベーションかどうか、横軸に自社が市場に影響力を発揮できるかどうかを示した4象限からなる図2を紹介した。

図2 事業イノベーションにおける出口戦略の形態(出典:NECの会見資料)

 左下は自社の新規事業、右下は他社との事業連携、左上はスピンイン(事業の買い戻し)、そして右上がスタートアップの事業化といったように、4つの進め方の選択肢を説明した。NEC Xの活動は右上に相当する形となる。

 このように事業イノベーションの進め方を説明した上で、中島氏は「いずれにしても最も重要なのは激戦市場に追随するスピード感だ」と強調した。

 NEC XはNECの人材と技術を核に、先述したエコシステムの中でオープンイノベーションによる事業を推進している。アントレプレナーシップ(起業家精神)を備えた人材や競争力を持つ技術を育成し、それらにより支えられた事業をNECへ還元し、新たな社会価値を生み出す狙いだ。

 グローバルに拠点を持つ研究所を中心に、AI(人工知能)を駆使した最先端技術と研究者を多く有しているNECだが、これまではそうした強みを自社内での製品開発や事業化に主に活用してきた。

 これに対し、NEC Xはシリコンバレーのアントレプレナーやベンチャーキャピタルの参画を促し、アクセラレーター(加速支援者)などの事業創出支援を受けながら、新事業開発のエコシステムに参加。こうした環境の中で、技術や新事業のアイデアを積極的に提供することで“アウトバウンド型”の事業を推進している(図3)。

図3 NEC Xの取り組み(出典:NECの会見資料)
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