Google CloudはAIとデータ活用に注力 パートナービジネスも強化される

Google Cloud事業戦略説明会では、同社における今後の取り組みやその中での重点領域などが解説された。

» 2023年03月02日 08時00分 公開
[関谷祥平ITmedia]

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 グーグル・クラウド・ジャパンは2023年2月28日、「Google Cloud事業戦略説明会」を実施した。本稿は同説明会で語られた「Google Cloudの重点領域」「Google CloudにおけるML(機械学習)/AI(人工知能)」「Google Cloudのパートナー事業」をレポートする。

Google Cloudのミッションは「変革を加速させる」こと そのための取り組み

 2022年はあらゆる業界でデータ活用の高度化と利用が拡大した――。説明会の冒頭でこのように2022年を振り返ったのはグーグル・クラウド・ジャパンで日本代表を務める平手智行氏だ。非構造化データの活用やAIなどを用いたデータ分析に関して、「2022年はそれらに関連するサービスを導入する段階から応用する段階に進んだ」というのが同氏の意見だ。

 このような背景もあり、API接続による「トータルGoogle」実現に向けてGoogle Cloudが2023年度の重点領域に据えたのが「データ利活用」「リスキリング&コラボレーション」「内製化支援」の3つだ。流通や小売業を例にすると、「Google レンズ」で商品を撮影してその商品のデータを取得できるといったAIサービスがある。これをAPIを介してeコマースに連携させれば、企業やユーザーの利便性を高められると平手氏は解説した。

 業種を問わずデータ活用の重要性は増しており、その中でサービスの品質向上や顧客体験の高度化が求められている。Google Cloudではこれらを支援するだけでなく、「スピードの掛け算」を実現するという。スピードの掛け算とは、新たな施策を他社に先駆けて推進することで何倍もの速さで事業を成長させることができるという意味だ。「他社と同じスピードで事業に取り組んでも、この掛け算は使えません。一方、他社が先駆けて事業を推進すればあっという間に差をつけられます」と平手氏は警鐘を鳴らす。

 「諸外国と比較して、日本のデジタルスキルは遅れていると指摘されます。Google Cloudはスキルの認定制度などを提供し、企業を支えていきます。また、企業における内製化支援も強化します。あらゆる組織が挑む、デジタルによる変革を加速させるのがGoogle Cloudです」(平手氏)

データ利活用の課題 どのようにBIツールのユーザーを増やすか

 Google CloudのAI事業について、「AIは限られた一部の人が使えればよいわけではありません。エンジニア以外でも、さまざまな業種や立場の人が使えることことが重要です」と話すのはグーグル・クラウド・ジャパンの小池裕幸氏(上級執行役員 カスタマーエンジニアリング担当)だ。

 Google CloudのAI利用における基本指針は「社会にとって有益である」「不公平なバイアスの発生、助長を防ぐ」「安全性確保を念頭に置いた開発と試験」「人々への説明責任」「プライバシー・デザイン原則の適用」「科学的卓越性の探求」「これらの基本理念に沿った利用への技術提供」であり、AIのユーザーエクスペリエンスを向上させることにGoogle Cloudはフォーカスしていく。

 小池氏によれば、このような考えの背景にはデータ利活用の課題である「BIツールユーザーの9.8%しか毎日利用しておらず、ユーザーの34.8%第三者からの依頼に対応するために用いている」というものがある。小池氏は「BIツールは本来であれば、毎日使ってリアルタイムデータを確認しなければなりません。多くのユーザーはデータの利活用ができていません」と指摘する。BIツールのユーザーエクスペリエンスを高めるためにも、AI活用の拡大は欠かせない。

 Google Cloudは今後、BIツールに関する継続的な教育や成果共有の機会を設け、活用方法の獲得や価値の認識を促すことが重要だと考えており、小池氏は「ツールを提供するだけでは十分ではありません。うまく活用できたら『褒める』ような機会が必要なのです」とコメントした。

新たな「Partner Advantage」とは

 「Google Cloudはパートナーファーストだ」

 グーグル・クラウド・ジャパンの石積尚幸氏(上級執行役員 パートナー事業本部)はこのように発言し、同社における新たなパートナープログラムの解説を行った。パートナーの課題を迅速に解決するためにGoogle Cloudは何ができるのか。このような考えのもと誕生したのが「Partner Advantage」だ。同プログラムは2023年1月に発表され、同年7月より実装される予定だ。

 このプログラムは「パートナーのデリバリースキルの強化」「より適切なパートナーを選択」「ユーザーの成功=パートナーの成功」を特長としたパートナー支援策だ。

 現在のPartner Advantageプログラムが発表されたのは2023年1月だが、それ以前も同じ名前でPartner Advantageは存在した。古いPartner Advantageでは「Google Workspace」やGoogle Cloudが一緒に分類されていたが、新たなPartner Advantageではこれらが分割される。サービスが違えばユーザーも異なり、それぞれの目的も違うことを反映した結果だ。

 Google Cloudのパートナー認証については従来と同じで、個人を認定する「認定資格」、組織を認定する「エキスパティーズ」、第三者組織が組織を認証する「スペシャライゼーション」の3つだ。

 各種認証を持っているパートナーを容易に見つけられるように、Google Cloudは「Partner Directory」というサービスもローンチする予定だ。これを使うことでパートナーがどの分野で認証を受けているのかを確認できる。石積氏は最後に「パートナーファーストで今後も取り組んでいきます」と話した。今後、Google Cloudはどのような影響を社会に与えるのか、注目が集まる。

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