超高速低遅延ネットワークがいよいよサービスの提供を開始する。
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NTTはIOWN(Innovative Optical Wireless Network)構想の第一弾となるIOWN1.0のサービスを2023年3月16日から開始する。対象エリアは日本全国(ただし、現段階では起点と終点が同一の同県内エリアに限定)。
IOWNは光電融合の通信技術(オールフォトニクスネットワーク、APN)と「デジタルツインコンピューティング」「コグニティブファウンデーション」の3層からなる次世代通信技術だ。
このうち、ネットワークから回線の終端装置までを丸ごと光を使った通信技術であるAPNサービス「APN IOWN1.0」を2023年3月16日から開始する。
利用するには100Gbpsの専用線回線をIOWN APN専用の端末装置で引き込む。端末装置は富士通やNEC、Ciena、三菱電機が製造しており、NTT東日本、NTT西日本が販売する。遅延の測定や調整を担う端末「OTN Anyware」も同日より提供する。IOWN APN1.0の提供価格は198万円/月、OTN Anywareは645万7000円〜/台で提供する。
従来の通信ネットワークは、ネットワーク部分は光ケーブルを利用してきたが、終端は電気的な処理に頼ってきた。APNはごく端的に言えば回線の終端装置に光電融合素子を使い、光をそのまま処理する仕組みだ。
IOWN APNは低消費電力、大容量かつ高品質、低遅延の通信環境を目指す。具体的な目標値は、伝送容量を従来の125倍に相当する光ファイバー1本あたり1000Tbps。エンドツーエンドでの伝送遅延は従来の通信の200分の1、電力効率は従来通信の100倍だ。
低消費電力で遅延のない通信は、モビリティや機械の遠隔制御を実現する上で不可欠な技術といえる。将来的には仮想空間を使った遠隔手術や装置の遠隔メンテナンスのように、従来、人が現地に赴かなければ対応できなかった問題をリモートで解決するための使い方も考えられるだろう。
一般ユーザーがIOWN APNを利用するにはまだまだ価格面のハードルが高いが、低消費電力化を進めるデータセンターや、MaaS、IoTソリューションなどを大規模に展開する企業にとってはメリットが出てくると考えられる。
例えばデータセンター事業においては伝送遅延の問題からデータの発生源やエンドユーザーからなるべく近い拠点を利用することが一般的だが、遅延の問題を解消できれば、自然エネルギーの発電量を加味したデータセンターの切り替えにより、「天候がよい地域にデータ処理を集中させることによって消費電力量を削減してCO2を削減するオペレーションも可能になる」(NTT副社長の川添雄彦氏)。
2023年2月の段階でIOWN Global Forumには117の組織が参加しており、その中にはKDDIやOracle、シスコシステムズ、Red Hat、VMwareやNEC、富士通、日立、ソニー、トヨタ自動車、アイシンなどが名を連ねる。
サービス発表に当たり、NTT東日本は遠隔でのダンスレッスンのデモを、NTT西日本は遠隔での漫才を披露するイベントを企画する。また、NTTe-Sportsはeスポーツのイベントを企画する。産業向けではないがどちらも人間の感覚において遅延が大きな違和感を与えるものであるため、IOWN APNの実力を図るには分かりやすいサンプルとなるだろう。
なお、NTTは2025年の大阪万博開催に合わせてIOWN2.0のサービスを発表するとしている。「PC本体を持ち歩くことなく、キーボードやマウスを直接遠隔のデータセンターにある仮想デスクトップに接続してもストレスなく利用できるようになる」(川添氏)というように、今後低価格化が進み、一般的な用途でも利用できるようになれば個人の働き方も大きく変わる可能性もある。
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