Amazonの労働環境は"ブラック"? 安全違反で相次ぐ警告Supply Chain Dive

Amazonの倉庫内労働環境に違反が相次いでいる。労働者の安全を確保するため多額の投資を行っていると主張するAmazonだが、改善の兆しは見られるのだろうか。調査によれば筋骨格系障害などが多数確認されている。

» 2023年03月13日 08時00分 公開
[Sarah ZimmermanSupply Chain Dive]

この記事は会員限定です。会員登録すると全てご覧いただけます。

Supply Chain Dive

 米連邦政府の安全検査官は2023年2月2日(現地時間)、Amazonが3つの倉庫で労働者の安全を守らなかったとして警告を出した(注1)。これで1カ月足らずの間に2回目の労働違反となる。

 労働安全衛生局は「Amazonがコロラド州オーロラ、アイダホ州ナンパ、ニューヨーク州キャッスルトンの倉庫で、労働者を腰痛や筋骨格系障害などの高いリスクにさらしている」と指摘しており、Amazonに4万6875ドルの罰金を言い渡した。Amazonは他の6つの倉庫でも同様の違反があったとして調査を受けており、6万269ドルの罰金を命じられた。

度重なる警告 Amazonは安全管理に力を入れていると主張するが果たして

 検査官によると、倉庫作業員は長時間労働にさらされ、物を持ち上げるために体をねじったり不自然な姿勢で屈んだりしなければならない状況だったという。OSHA(国際安全衛生センター)が現場の負傷記録を調べたところ、労働者は高い確率で筋骨格系障害を起こしていたと確認された。

 OSHAのダグ・パーカー氏(労働安全衛生次官補)は「Amazonの運営方法は危険な労働条件とプロセスを生み出し、労働者の負傷が深刻化している」と警鐘を鳴らす。Amazonはこれらの負傷を真剣に受け止め、予防可能な危険から従業員を守るために全社的な戦略を実施する必要がある。

 しかしAmazonはこの警告を不服とする意向だ。同社の広報担当であるケリー・ナンテル氏は、同社が2019年から2021年にかけて米国内の負傷率を15%近く引き下げたと述べている。

 「私たちは従業員の安全と健康を非常に重視しており、政府の主張が私たちの現場の実態を反映しているとは考えられない」(ナンテル氏)

 オーロラ、ナンパ、キャッスルトンの各施設に対する調査は2022年8月に始まったが、これはOSHAが同様の労働災害違反で他の6つの倉庫の点検を開始した直後のことだ。OSHAによれば、Amazonは2022年12月に傷病の記録を怠ったり、一部では傷病の分類を誤ったりしており、3万ドル近い罰金を科させられる予定だ。

 筋骨格系障害は業種を問わず最も多い労働災害の一つだ。2022年春に労働組合連合から発表された報告書によれば、OSHAのデータに基づいた分析によってAmazon倉庫の負傷率は他企業の倉庫の2倍であることが判明している(注2)。

 Amazonは2022年6月に全米安全評議会の誓約に署名し、2025年までに筋骨格系障害の負傷を25%削減すると表明した(注3)。同社は2021年にも2025年までに全ての記録可能な傷害の数を半減させることを目的とした安全プロジェクトに3億ドルを投資すると発表している(注4)。

 Amazonは従業員の肉体的負担を軽減するため、倉庫用ロボットに多額の投資を行っている(注5)。Amazonは同社のブログで「安全性を向上させ、けがが発生した際の追跡を容易にするために世界中の特定の施設で技術テストを行っている」としている(注6)。

 労働者の安全確保に投資するAmazonだが、度重なる警告でその改善はいまだ見られない。

© Industry Dive. All rights reserved.