Snowflakeでアプリ開発? 進化を遂げるDWHの最新技術動向(1/2 ページ)

クラウドDWH「Snowflake」は、データドリブン経営などデータ活用のためのプラットフォームとして注目を集めている。新たにアプリ開発ができるようになったSnowflakeは、どのような進化を遂げたのか。

» 2023年03月13日 07時00分 公開
[吉田育代ITmedia]

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 デジタルトランスフォーメーション(DX)推進企業にとって、データ活用は今や必須課題だ。データプラットフォーム市場をけん引するSnowflakeはこれをどのように支援するのか。

 Snowflake日本法人は2023年2月14日、リアル/オンラインイベント「SNOWDAY JAPAN」を開催した。本稿はその基調講演の様子から、同社の最新技術動向をお伝えする。

データエクスチェンジをSnowflake上で実現する「データクラウド」を提唱

Snowflake日本法人の東條英俊氏

 最初に登壇したのは、Snowflake日本法人の東條英俊氏(社長執行役員)だ。同氏は「Snowflakeは“データクラウド”という概念を提唱しています。これはデータのコラボレーションやデータのネットワークを意味しており、データウェアハウスやデータレイクといった基本的なデータプラットフォームを提供するだけでなく、顧客同士のデータシェアリング、データエクスチェンジを『Snowflake』で実現しようというものです。ここ3年ほどでこうしたデータの結び付きは非常に加速しており、日本においてもデータクラウドは始まっています」と語る。

 企業間でのデータ活用の動きが活発化する中、データプラットフォーム市場をけん引するSnowflakeはどのように成長してきたのか。具体的な数字に触れながら解説したのは、Snowflakeのマイク・スカペリ氏(最高財務責任者)だ。

Snowflakeのマイク・スカペリ氏

 「2022年会計年度の第3四半期、グローバル2000社のうち28%の企業がSnowflakeの顧客企業になりました。顧客企業の総数は約7000社、そのうち約400社が日本企業です。将来的には日本市場の売上割合は、グローバル売り上げの10%を占めるだろうと予測しています」

 Snowflakeは、2020年9月のニューヨーク証券取引所での新規株式公開(IPO)において、50億ドル以上のネットキャッシュを獲得している。当時エンタープライズソフトウェア分野のIPOとしては最大規模と評された。2022年の会計年度は68%成長を果たし、データクラウドについても前年比112%と伸びている。「顧客満足度を表すネットプロモータースコアは業界としての平均が21%に対し、当社は72%です。プロダクトの質を表している数字だと思います」(スカペリ氏)。

Snowgridを介した「クロスクラウド」がコラボレーションのカギ

Snowflakeのクリスチャン・クライナーマン氏

 次に登壇したSnowflakeのクリスチャン・クライナーマン氏(プロダクト担当上級副社長)は「プラットフォームの中核の在り方」「データクラウドのコンテンツ」「Snowflake上でのアプリケーション開発」という3つの側面からSnowflakeプラットフォームの特徴を解説した。順を追って見ていこう。

 まずプラットフォームの中核の在り方だが、Snowflakeが何より重視しているのが単一のプラットフォームである点だ。セキュリティシステムやモニタリングシステムなどとも一度統合してしまえばそれ以上の作業は必要なく、ユーザーはデータ分析から洞察を得ることに注力できる。

 単一のプラットフォームであるためには「クロスクラウド」が重要なコンセプトとなる。Snowflakeによるとクロスクラウドは複雑な作業なしで、複数のパブリッククラウド間でデータを簡単に移動できることを指す。

 そしてクロスクラウドを実現するSnowflakeのコア技術が「Snowgrid」だ。Snowgridはデータとストレージを分けることで、マルチクラウドやマルチリージョン間でのデータ共有をETLなしで可能とする技術だ。これによってマルチクラウド間でもガバナンスを効かせながらSnowflakeは1つのシステムとして機能する。

 クロスクラウドであることは事業継続性の実現にも貢献する。Snowflakeはデータのレプリケーションだけでなく、メタデータのレプリケーション、つまりユーザー、ロール、クラスタなどの定義を、1つのリージョンから別のリージョンに、また異なるクラウドに対しても実行でき、フェイルオーバーやフェイルバック、再接続までもサポートする。加えて、クロスクラウドならではの強みが企業内外でのデータコラボレーション、データ共有を容易に実現できる点だ。

 クライナーマン氏は「意外に意識されていないのですが、データ共有はFTP接続や電子メールでの表計算ファイルのやりとりなど、日常的に発生しています。こうした方法ではセキュリティを確保しにくく、ガバナンスも難しいものです。Snowflakeを利用すれば、A社がアクセスを許可したデータについて、変更され次第アクセス制御を有効にした状態で、B社はそのレコードを確認できます。どちらの企業も暗号化や復号、データ取りこみ、アップデートを考える必要はありません」と語る。

Snowflake日本法人のKT氏

 この様子は、Snowflake日本法人のKT氏(マーケティング本部 シニアプロダクトマーケティングマネージャー兼エヴァンジェリスト)によるデモビデオでも紹介された。画面で利用可能なデータが検索できるようになっており、選んでボタンを押せば、データが取得でき、自社のSnowflakeウェアハウス上ですぐさまサンプルSQLが実行できる。このような仕組みによって、企業にとってはデータでマネタイズするマーケットプレースに進出する道も開かれる。同社のいう3つの側面のうちの「データクラウドのコンテンツ」とは、こうしたマーケットプレースを意味するものだ。

データコラボレーションをけん引するのはSnowgrid(出典:Snowflake発表資料)
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