「SaaSビジネスはもうからない」「売りにくい」「買いにくい」と言われるのはなぜか

日々さまざまな製品が生まれるSaaSは、目利きができなければ利用しにくい。販売する側もそれは同様だ。SB C&SがSaaSビジネスを支援するプラットフォームを強化した。

» 2023年03月30日 09時00分 公開
[原田美穂ITmedia]

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 SB C&SがSaaSビジネスを強化する。2023年3月27日、同社は「SaaSビジネス戦略説明会」を開催。2023年2月に発表した同社パートナー向けのビジネスプラットフォーム「ClouDX Platform Edition」および「Cloud Service Concierge」(クラウドサービスコンシェルジュ、CSC)を軸とした、今後のSaaS事業の展望を示した。

 同社は「付加価値提供型ディストリビューター」を標ぼうしており、SaaSビジネスにおいても、ベンダー、パートナー、エンドユーザーに対して「三方よし」のビジネス支援を目指すとしている。

ソフトウェア流通事業からSaaS事業への同社の歩みを説明するSB C&Sの草川和哉氏(取締役 専務執行役員)

「SaaSビジネスはもうからない」「売りにくい」「買いにくい」と言われるのはなぜか

 ClouDX Platform Editionは、パートナー企業におけるリカーリング型ビジネスの管理とEC販売を支援するプラットフォームだ。もともと「ClouDX」として顧客の契約情報を管理するプラットフォームを提供してきたパートナー向けサービスにSaaSビジネス用のECサイト構築と運用の基盤を追加した形だ。

 自社独自の販売サイトをすぐに構築でき、取り扱い商材の発注やライセンス申請、契約に関する業務手続きを一括して管理し、直接同社と連携する。顧客ごとの更新案内などのアラートも契約情報を基に同プラットフォームから提供する。

 プラットフォームサービスは、ビープラッツとSB C&Sが合弁会社「ITplace」を設立して執り行う。

 ECサイトやWebセミナーの顧客情報については、SB C&Sは保有せず、各パートナーが保持する形で運営する。単価設定やパッケージ化は個別に設定可能だ。現在は無償のエントリー版のみの提供だが、将来的には同社取り扱い商材以外も組み合わせた、より柔軟性の高い有償プランの提供も予定する。

ClouDX Platform Editionの概要(出典:SB C&S提供資料)
ClouDX Platform Editionの料金体系(出典:SB C&S提供資料)

 CSCは、取り扱い商材の有資格者など専門知識を持った専任チームがパートナー企業のSaaS販売や営業活動、マーケティング施策を支援するサービスだ。Webセミナープラットフォームや同社グループ企業から得られる市場トレンドの情報も提供する。

 ソフトウェア流通事業をルーツとする同社は現在、約4000のITベンダーの商材を取り扱い、全国に約1万社のパートナーを抱える。同社はこれらのパートナーにソフトウェアを御として取り扱い商材の情報を提供し、マーケティング活動を支援する立場にある。同社はSaaSビジネスが今後さらに拡大することを見込んでおり、同社SaaS事業は、パートナー企業各社の販売活動の支援体制を強化する狙いだ。

 「現在の市況を見ると、コロナ禍を通じて遅れていた日本企業のデジタル化が進んだ状況にある。一方で、流通や金融事情は混乱が続く。日本企業のIT投資においても、環境の変化への柔軟な対応を目指して所有から利用へのシフトが本格化しており、投資額は縮小傾向にあるものの投資先の6割超がDX推進となっている。われわれのビジネスにおいてもサブスクリプション型のリカーリングビジネスが5割を占めるまでに成長している(2022年度末見込み)。リカーリングビジネスの割合がここまで高いのはソフトウェア流通の事業者においては特別だ。ソフトウェア調達の在り方、IT部門ではなくユーザー部門がオンラインで直接発注する流れが主流になりつつあるため、パートナー支援においてもECの支援が重要になる」(SB C&S 取締役 専務執行役員 草川和哉氏)

 同社 執行役員の守谷克己氏は、現状のパートナー企業がSaaSビジネスを強化する際に「2つの壁がある」と指摘する。「管理」と「販売」がそれだ。

 「売り切り商材と比べ、サブスクリプション型の商材は収益を上げるまでに時間がかかる。単体の商材でビジネスを展開するのではなく、クロスセルでさまざまな業務課題に応えることがビジネスのカギとなる。だが、SaaS商材はベンダーや商品ごと、顧客との契約ごとにルールや課金体系が異なり、顧客が増えれば管理が困難になる。ECチャネルでの販売を強化するにはサイト構築や運用、取り扱い商材の品ぞろえや鮮度の維持、ECサイトへの集客にも注力しなければならないが、人手不足の中で自社ですべてをまかなうことは困難だ」(守谷氏)

SB C&S 執行役員の守谷克己氏。富士キメラ総研の調査を基に、ソフトウェア市場が拡大すること、その7割近くがSaaSであることを示した

 リカーリングビジネス統括部は2021年に発足したSaaS特化型の組織だ。同組織の狙いを、CSCを担当する同社リカーリングビジネス推進統括部長の田中政和氏は同部門の役割を「SaaSベンダーの直販モデルは自社リソースの制約があるため顧客の対応にも限界がある。パートナーは多様な商品を扱う中で個々の商材の売り方を把握できない。エンドユーザーも多様なSaaSから何を選べばよいかが分からず、導入しても使いこなせない。CSCはそれらの課題を解決する組織」と説明する。

パートナーと顧客が抱える課題を示すSB C&S リカーリングビジネス推進統括部長 田中政和氏

 CSCは販売支援や仕入れに加えて新規取引の創出を支援として、Webセミナープラットフォームの提供や販売戦略構築、複合提案の支援も手掛ける。市場トレンドにはグループ企業のメディアの情報も活用する計画だ。併せて、取り扱い商材のトレーニングを受けた自社営業人材によるフィールドセールス支援も行う。

 「顧客課題を聞き出し、複数のSaaSの知識を基にした複合提案なども可能だ。希望するパートナーがあれば、セールス人材育成も支援したい」(田中氏)

フィールドセールス営業支援の概要(出典:SB C&S提供資料)

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