SAPから中堅・中小企業向けの発表が相次いだ。国内ではSAPのグローバル顧客800万社が参加する商取引ネットワークを生かした中小企業のビジネス支援の実証も進む。「SAPのビジネスアプリケーションは高価で大手企業向け」という印象を払拭できるだろうか。
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SAPによる中堅・中小企業向けのソリューションへの取り組みに動きが出てきた。中堅・中小企業向けにクラウドERPを短期間で提供するプログラムを発表。その翌日にはクラウド型調達・購買システムを介した中堅・中小企業の商取引のデジタル化に向けた戦略的イノベーション創造プログラムで実証実験への参加を発表している。従来のSAPシステムは高価で手が出ないというイメージが強かったが、クラウド型での提供によりコストを抑制しながら、大企業のサプライチェーンとの取引を効率化する狙いもありそうだ。
SAP SEは2023年3月21日(米国時間)、クラウドERPを導入する中堅・中小企業に向けた施策「GROW with SAP」を発表した。「SAP S/4HANA Cloud, public edition」と、導入促進サービス、専門家のグローバルコミュニティー、無料の学習リソースを組み合わせており、最短4週間で本稼働できるとしている。SAPが蓄積したナレッジに基づき業界固有のベストプラクティスの業務プロセスを組み込んでおり、導入後、すぐに利用できる形で提供する。AI(人工知能)と自動化の機能も組み込んでおり、迅速に成果を得られるとしている。
GROW with SAPには「SAP Business Technology Platform」も含まれるため、「SAP Build」を使ってクラウドネイティブな方法で独自のプロセスを定義でき、新しいアプリケーションの構築にも取り組みやすい。エンタープライズアプリケーションの作成やプロセスの自動化、ビジネスサイトの設計もプログラムコードの記述なしに取り組める。
こうした動きを受け、日本でも独自の取り組みが進む。SAPジャパンは2023年4月7日、「SAP Ariba」が内閣府総合科学技術・イノベーション会議の「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第2期/ビッグデータ・AIを活用したサイバー空間基盤技術」に係る事業「分野間データ連携基盤技術の社会実装に向けた外部仕様書の作成・公開および相互接続性実証」で、パートナーであるザイナスが実施する「産業・商業で利用されるデータ基盤技術との相互接続性実証」のクラウド基盤として選定されたと発表した。
今回の事業では、NECとエブリセンスジャパン、日立製作所、情報・システム研究機構国立情報学研究所(NII)、ザイナスの5者が、CADDE(Connector Architecture for decentralized Data Exchange:分散型データ交換のためのコネクタアーキテクチャ)と産業・商業向けデータ基盤、スマートシティー向けデータ基盤などを相互接続させたデータ活用に関して実証を実施した。分野を越えてデータを連携する上での実装面での課題を抽出し、それに対応する解決策を取りまとめた。
SAPジャパンはザイナスとともに、中小企業が世界的な調達案件への参入を可能にしていくために、SAP Aribaを含む「SAP Business Network for Procurement」を活用し、CADDEの社会実装に向けた課題について実証を実施した。同実証では、CADDEのデータ連携機能を活用することで、全世界で800万社が参加するSAP Business Networkに連携できることや、商取引へのCADDEの活用が可能であることを確認したとしている。
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