デジタルツイン時代の新ビジネスか 注目のスタートアップ「DressX」が1500万ドルを集めるRetail Dive

「デジタルファッション」と呼ばれる聞き慣れないビジネスが注目を集める。DressXが複数の投資家から1500万ドルもの資金を調達した。Z世代以降の新しいビジネスは立ち上がるのだろうか。

» 2023年04月24日 08時00分 公開
[Xanayra Marin-LopezRetail Dive]

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Retail Dive

 デジタルファッション小売のスタートアップ企業DressXは2023年3月14日(現地時間)、資金調達ラウンドのシリーズAのフェーズで1500万ドルを調達したと発表した。『Retail Dive』編集部に送られたプレスリリースによれば、同社はこの資金をアプリケーションとNFT(非代替性トークン)マーケットプレースの改善や、デジタルアイテムの相互運用性の確保に活用するという。さらに他の仮想プラットフォームやソーシャルメディア、ゲームとの提携にも使われる予定だ。

DressXのWebサイトでは著名なファッションブランドとのコラボレーションアイテムも販売される(出典:DressXのWebサイト)

Z世代やミレニアル世代の注目を集めるデジタルファッションの将来性

 DressXは、提供するサービスをデジタル専用衣料やNFTファッションアイテム、あるいはAR(拡張現実)風の仮想空間におけるクローゼットであると説明している。同社と外部ブランドの双方が、提供される服やアクセサリーをデザインする。

 女性主導で経営を行うDressXは2020年の立ち上げ以来、Meta、Roblox(オンラインゲーミングプラットフォームを運営する会社)、Google、Farfetch(ファッションを取り扱うデジタルマーケットプレース)などと連携してきた。同社はデジタル専用ファッションの最大のプラットフォームであり、3500以上のアイテムがライブラリに用意されているという。

 DressXの資金調達ラウンドは、ヨーロッパの暗号投資会社Greenfieldが主導し、Slow VenturesやWarner Music、The Artemis Fund、Red Dao、その他の投資家が支援した。

 Greenfieldの創業パートナーであるヤッシャ・サマディ氏はプレスリリースで次のようにコメントしている。

 私たちがバーチャル環境で過ごす時間が増えるにつれて、物理的な領域を超えた空間ではNFTとブロックチェーン技術によって真のデジタル所有権が保証され、自分のアイデンティティーが高まっていく。われわれは今後5〜10年の間に仮想空間がどのように進化していくのか注目している。DressXはバーチャル環境における変化を形成し、促進する最前線に立つ企業だと信じている

 同社が販売するデジタルファッションは、ARや写真着せ替え、ビデオ通話、3次元仮想空間ブラウザ「Decentraland」やメタバースのアバター作成システム「Ready Player Me」のアバターで着用できる。また、Roblox、Zepeto、Metaのプラットフォームマーケットプレースでも入手が可能だ。近いうちにDressXは「Snapchat」でもデジタルファッションを販売する予定である。

 一部の消費者にとって、メタバースで人々が着ているものは、物理的な現実社会と同じように重要なものになるかもしれない。同社が引用した、Webサービスを提供するSquarespaceの2021年の調査によると、米国ではZ世代の60%、ミレニアル世代の62%は、リアルで対面する時よりもオンラインでの自分の見せ方の方が重要だと考えている。さまざまなプラットフォームにおけるアバターは、その人自身やプレイヤーを具現化するものであり、特に10代から成人までの大半をインターネットの影響を受けながらテクノロジーの成長と共に過ごしてきたZ世代にとっては、オンライン上での見せ方が自己表現における1つの手段となっている。

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