「ソーシャルエンジニアリング攻撃」とは? 銀行破綻が“絶好な機会”になるワケCybersecurity Dive

相次ぐ銀行破綻は、サイバーセキュリティにも多大な影響を与える可能性がある。脅威ハンターやセキュリティ専門家が警告する「ソーシャルエンジニアリング攻撃」とは何か。

» 2023年04月23日 07時00分 公開
[Matt KapkoCybersecurity Dive]

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Cybersecurity Dive

 Silicon Valley Bank(以下、SVB)とSignature Bankの経営破綻は、さまざまな分野にパニックをもたらすことが懸念されている。サイバーセキュリティもそのうちの一つだ。

「ソーシャルエンジニアリング攻撃」とは?

 これらの深刻なニュースをきっかけに、「ソーシャルエンジニアリング攻撃」の新たな手口が生まれる恐れがある。

 セキュリティ企業であるProofpointの研究者は、暗号資産(の事業者)を偽装した攻撃者が今回の“銀行危機”を悪用して展開する「フィッシングキャンペーン」を観測した。複数の企業で脅威ハンターやサイバーセキュリティ担当者として活動する専門家が、悪意のある活動に注意するよう警告している。

 攻撃者はただ単にこうしたパニックが起きそうなニュースを追いかけるだけではなく、社会における関心が高まっている瞬間を捉えて、潜在的な被害者を狙うための新しい方法を見つけだす。フィッシングやビジネスメール詐欺の攻撃は、しばしば大事件に関する恐怖や不確実性に乗じる形でカスタマイズされる。それが「ソーシャルエンジニアリング攻撃」だ。

危機に乗じる攻撃者

 米サイバーセキュリティ・社会基盤安全保障庁(CISA)の担当者は「われわれは状況を注意深く監視している。しかし、現在、SVBに関連したサイバー攻撃や事件は追跡していない 」と述べる。

 サイバーセキュリティの専門家は、攻撃者が今回の銀行危機をサイバー攻撃のきっかけにする可能性があるとみている。

 サイバーセキュリティサービスを提供するArctic Wolfのアダム・マレルCISO(最高情報セキュリティ責任者)は電子メールで「結局のところ、こうした危機は緊急性を生じさせることにつながり、攻撃者にとって良い機会になり得る」と述べた。

 Arctic Wolfは目立った脅威は観測していないものの、2023年3月10日に連邦規制当局がSVBの預金者を保護すると発表した後、SVBに関連する新規登録ドメインの増加を確認した。同社は、これらのドメインの一部がフィッシング攻撃のハブとして機能することを予想している。

 「専門家は、偽装されたメールアドレスや、緊急対応を促すために作成された詐欺メールに対して細心の注意を払い、あらゆるやりとりに慎重になるべきだ」(マレル氏)

 企業は金融取引に特に用心し、フィッシングやビジネスメール詐欺を防ぐために注意を払う必要がある。

 2023年3月10日に発表された年次報告書によると(注1)、2022年にFBI(米連邦捜査局)のインターネット犯罪苦情センターに報告されたサイバー犯罪の種類としてはフィッシングが最も多かった。フィッシングは約30万件報告されており、これは2022年にFBIに報告されたサイバー犯罪のほぼ5分の2を占める。

フィッシングは脆弱な従業員をターゲットにする

 請求や支払いのために銀行情報へのアクセス権限を持つ財務担当者は、フィッシングやビジネスメール詐欺を攻撃者にとって最適なターゲットだ。

 Cynetの共同設立者兼CEO(最高経営責任者)のエヤル・グルナー氏は「財務部門のノートパソコンへのアクセスを許すと、攻撃者に大きな利益をもたらす恐れがある。SVB破綻によって混乱と恐怖が渦巻いている今、SVBの顧客企業で勤務する従業員は特に無防備な状態にある。被害者がSVBの顧客で口座が凍結されている場合、別のアカウントが奪われると事態はさらに急速に悪化する可能性がある」と話す。

 セキュリティサービスを提供するExpel のグレッグ・ノッチCISOは「詐欺の機会は膨大にある。標的にされるのはSVBの顧客だけではない。SVBの顧客と取り引き関係にある全ての人が対象だ」と述べる。

 「ビジネスにおける取引の支払い情報に多くの変更が生じ、カウンターパーティーリスクが生じる。今後数週間、取引先に対して緊急対応が増えるため攻撃者が取り引きに気づかない場合もある」と同氏は付け加えた。

 数日のうちに2つの銀行が破綻し、銀行危機が拡大するとの懸念が広がっている状況は、混乱につけ込んで悪事を働く攻撃者にとって絶好の機会が到来した。

 「攻撃者は常に新たな“機会”を窺っている。混乱し、どこに頼ればいいか分からないような混沌(こんとん)とした状況の中で、人は役に立つかもしれない電子メールをランダムに開く傾向がある。人々が混乱しておびえ、答えを探し求めるほど攻撃者にとっては有利な状況になる」(グルナー氏)

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