IT老舗のRed Hatが成長戦略を発表 “25”という数字の先にあるクラウドビジネスとは

ハイブリッドクラウド市場での競争が激化する中で、Red Hatは何を主軸にビジネスを展開していくのか。未来を見据えた事業戦略を同社日本法人の岡社長が語った。

» 2023年04月28日 08時00分 公開
[松井玄ITmedia]

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 Red Hatの日本法人レッドハットは2023年4月25日、事業戦略説明会を開催した。説明会では2022年度の振り返りとともに2023年度の戦略が発表された。IT業界では「老舗」ともいわれる同社は今後、日本でどのようにビジネスを拡大していくのだろうか。

IT老舗のRed Hatが成長戦略を発表 “25”という数字の先にあるクラウドビジネスとは

岡 玄樹氏

 「(他の外資系IT企業と比較して)日本市場に早い時期に参入したRed Hatは時に“老舗企業”といわれます。そんなわれわれと他社との違いはオープンソースです。Red Hatはこれまでオープンソースの理念や考えを『いかに市場に浸透させるか』をミッションとして取り組んできました」

 発表の冒頭、Red Hatの強みをこのように話したのは同社の日本法人社長の岡 玄樹氏だ。同氏によれば、レッドハットは2022年度に全ての四半期で2桁成長を遂げた。「Red Hat Enterprise Linux」(以下、RHEL)のサブスクリプションでの提供や「Red Hat OpenShift」(以下、OpenShift)「Ansible」などのビジネスが好調に推移した結果だ。

 岡氏は説明の中で“25”という数字を強調し、以下のように述べた。

 「クラウドの時代が到来していることは疑いようがありません。その中でIT資産をクラウドに移行した企業は全体の25%程度、そしてレッドハットが主戦場だと考えるハイブリッドクラウド市場は年間25%程度成長しています」(岡氏)

図1 ハイブリッドクラウドの25(出典:レッドハットの提供資料)

 ハイブリッドクラウド市場において成長率25%は決して大きな数字ではない。実際に岡氏はこの数字について「まだまだ成長見込みがあります」と期待を見せた。

2023年の戦略はどうなる?

 岡氏は2023年度におけるレッドハットの戦略を「コアビジネスの拡大」「クラウドサービスの確立」「エッジビジネスの基盤を構築」の3つに大別した。それぞれの説明は以下だ。

コアビジネスの拡大

 これまでRed HatのコアビジネスはOSがメインだったのに対し、現在はRHELが同社のメインビジネスになっていると岡氏は強調した。ディストリビュータやOEM、クラウドプロバイダーなどを通じてあらゆるチャンネルやプラットフォーム、提供形式で顧客を支援し、今後もRHELの拡大を図る。

 実際に発表の中で岡氏は、「RHELに『Oracle Cloud』という選択肢が登場しました」と喜びを見せた。「Oracle Cloud Infrastructure」(OCI)におけるRHELの実行を可能にする「Red Hat Enterprise Linux on OCI」が新たに提供されることで、新たな層にアプローチできる。

 コアビジネスの一つであるOpenShiftについても岡氏は「Red Hatの開発部門とパートナー企業の協業を加速し、ミッションクリティカルなシステム領域への実績を拡大していきます」と説明した。

図2 コアビジネスの拡大(出典:レッドハット提供資料)

クラウドサービスの確立

 岡氏はクラウドサービスの確立に向けて、OpenShiftのマネージドサービスを「Red Hat Cloud Services」として展開している。日本国内で100社以上の企業に採用されており、岡氏は「IT人材がインフラではなくアプリケーション側にフォーカスでき、結果として企業はDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進できます」と話した。

 同氏はクラウドサービスと同時にオンプレミスのソリューションも重要だと強調した。Red Hat Cloud Servicesはオンプレミスソリューションも持っており、クラウドで構築したサービスをコンテナ化してオンプレミスにデプロイできる。

 「Red Hatであれば、真のハイブリッドクラウドが実現できます。われわれはクラウドとオンプレミスの両輪が重要であると捉えています」(岡氏)

図3 クラウドサービスの確立(出典:レッドハットの提供資料)

エッジビジネスの基礎の構築

 エッジビジネスの基礎を構築するために、岡氏は「クラウドで開発したものをエッジにデプロイできる体制を整え、継続的にアップデートするという仕組みを実現したいと考えています」と話した。

 Red Hat OpenShiftでは開発やテストを実施し、コネクテッドエッジネットワークである「Red Hat Device Edge」などにデプロイするのがこれに当たる。将来的には「Red Hat In-Vehicle Operation System」にもデプロイできるようになる予定だ。

 「中長期的な事業としてエッジビジネスの基礎を構築し、いまだにクローズドなエッジの領域をオープンにします」(岡氏)

図4 エッジビジネスの基礎を構築(出典:レッドハット提供資料)

 同社は企業におけるDXを進展させるために「Red Hat Open Innovation Labs」などを立ち上げ、本格的なアジャイル支援プロバイダー企業を目指している。岡氏は最後に「ユーザーや開発者、パートナー企業の懸け橋となり、オープンソースの力で優れたテクノロジーを作り出していきます」と話し、説明を終えた。

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