日本オラクルが開催した「Oracle CloudWorld Tour Tokyo」にトヨタが登壇し、同社のDX課題と克服するための取り組みを解説した。
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日本オラクルは2023年4月14日、「Oracle CloudWorld Tour Tokyo」を開催した。同イベントはOracleの年次イベント「Oracle CloudWorld」の東京ラウンドであり、Oracle Cloudに関連して同社の最新情報や顧客事例などが紹介された。
本稿は同イベントの基調講演「変化の激しい世界でビジネス成果を上げるために」から、トヨタ自動車(以下、トヨタ)の岡村達也氏(情報システム本部 IT変革担当CPL)が解説した「DX(デジタルトランスフォーメーション)課題とその克服への取り組み」を紹介する。
岡村氏は講演の冒頭、トヨタのDXについて「前社長である豊田章男(現会長)は2021年に、『今後3年間で世界トップになれるようにデジタル化を進めよう』と話しました。DXに取り組むのはもちろんですが、世界で1番を目指す姿勢には驚きました。トヨタは『デジタルネイティブの自由な発想』を重要視してDXを推進しています」
岡村氏はこのように話し、講演を始めた。デジタルネイティブに自由にDXに取り組んでもらうために、トヨタは社内公募で人材を集めてDXに取り組み始めた。「社内公募制度で本当に人材が集まるのか?」という不安もあったというが、結果的に150人を超える人材が集まったという。
トヨタにおけるDXは「ヒト」「モノ」「カネ」の3つの軸に分かれており、ヒトに関しては「デジタルネイティブを後押しする活動」「デジタル化になじめず困っている人の支援」に取り組んでいる。
モノに関しては「投資・効果」「従業員の満足度」などを優先付けし、DXリーダーの育成やデジタル案件の増加などを実現している。
カネに関してトヨタは、予算を一元管理に取り組むことで投資対効果の明確化し、それが「顧客体験の改革」「自動車開発の改革」「社内業務改善」「デジタル企業文化の醸成」「セキュリティ対策向上」などにつながっているという。
トヨタのDXは進んでいると思われがちだが、決してそんなことはない――。岡村氏はこのように指摘しながら以下の図4を示した。
組織や人材、システム、プロセス、ルールが複雑に絡み合っており、この点について岡村氏は「どれかを推進しようとすると他のどれかが障壁になる、といった事が往々にして起きていました」と話した。
トヨタはこのような課題を解決するための取り組みを愚直に積み重ね続けている。
「トヨタは改善の文化を持っています。目の前の課題に対して真摯に向き合い、克服していくことが大切です。それを繰り返していけば『北極星』を見つけられます」(岡村氏)
トヨタは「2030年の北極星」を定めており、その目標に向けてバックキャストに取り組みを推進している。以下の図5は、2030年にどのように北極星に到達するかを示した図だ。
「デジタル化が『競争』なのか、『協調』なのかは悩むことがよくあります。トヨタを含めDXに悩む企業は多いのが現状です。トヨタは工場などを持ち、レガシーなシステムが活躍しているのも事実で、これを一概にクラウド化すればよいとは思いません。Oracleはトヨタを知っているパートナーであり、レガシーとクラウドが上手に共存するシステムを提供しています」と話し、講演を終えた。
日本を代表する企業のトヨタでさえDXに関して多くの課題を抱えている。大事なことは企業規模に関わらず、課題解決に愚直に取り組む姿勢だとトヨタは示した。
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