AppleがBNPLの初期サービスを提供開始 規制が強まる業界でどう戦うのかPayments Dive

Appleは2022年に参入を発表していたBNPLサービスの提供を始めた。消費者の経済的負担が懸念されるBNPLだが、Appleは環境整備に努めサービスを普及させていくようだ。

» 2023年05月12日 08時00分 公開
[Lynne MarekPayments Dive]

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 Appleは2022年、昨今人気を集めている金融サービスBNPL(Buy Now Pay Later)に挑戦すると発表した。そして2023年3月に「Apple Pay Later」と呼ばれる新たなBNPLサービスの初期バージョンの提供を開始した。同社の発表によれば、同サービスは米国内のユーザーに対して提供されている(注1)。

 Apple Pay Laterを利用すると、ユーザーは購入した商品を6週間にわたり4回に分けて支払うことができる。利用にはデジタルウォレット内でAppleの融資部門に融資を申し込む必要がある。

 Apple Pay Laterはデビットカードとのみ連携でき、Mastercardの分割払いプログラムを通じて提供される。発行者はGoldman Sachsだ。

BNPLへの規制強化が懸念される中、Appleが見据える今後とは

 Apple Pay Laterは手数料や利息がかからず、この点は従来のBNPLも同じだ。審査に通ったユーザーはAppleの「iPhone」と「iPad」を通じて利用できる。Appleの発表によると、デビットカード口座にローンを支払える資金がない場合は、ユーザーの銀行が手数料を請求する可能性がある。

 Appleは「2023年3月29日より、Appleは一部のユーザーを対象にApple Pay Laterのプレリリース版の提供を開始し、今後数カ月で全ての対象ユーザーに提供する予定だ」と発表している。対象となる初期のユーザー数については不明だ。

 発表によれば、新サービスのユーザーは50〜1000ドルの融資を受けられ、アプリケーション内でローンの支払いを追跡、管理できる。ユーザーとして承認された後の支払いで『Apple Pay』を選択すると、「後払い」のオプションが表示され、Apple Pay Laterを利用できる。

 BNPLは約10年前から広がりを見せ、スウェーデンのKlarnaとオーストラリアのAfterpayがその成長をけん引してきた。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の大流行で消費者がオンラインショッピングをする機会が増え、BNPLはさらに普及した。

 Appleは2022年からBNPLサービスの提供を発表しており(注2)、Appleのファンからは「どのようなサービスになるのか」と期待されていた。しかし、現時点でApple Pay Laterは競合サービスを模倣しただけに見える。

 BNPLの業界は近年競争が激しくなっており(注3)、Appleの登場によってサンフランシスコに本社を置くAffirmやシドニーに本社を置くZip(注4)、ミネアポリスに本社を置くSezzleなどの競争がさらに激化するとみられる。ライバル会社のAfterpayはサンフランシスコに拠点を置くSquareの親会社であるBlockを2021年に290億ドルで買収している(注5)。

 BNPLの需要は世界的に高まっている一方で、各社は収益確保に苦労している(注6)。コロナ禍のeコマース需要が衰えた現在、各社は新たな施策を考えており、BNPLを店頭のPOS端末で利用できるように取り組んでいる。

 一方、世界中の規制当局は消費者が過剰な債務を負う可能性を懸念し、この融資手段に対する監視を強めている。景気後退の可能性が高まる中、経済と消費者の間でこの懸念が強まる可能性がある。

 企業や政府の信用格付けを行うFitch Ratingsのマイケル・タイアノ氏(シニアディレクター)は電子メールによる声明で「Appleがクレジットカードとの連携を認めないのは、BNPLでの購入金額が支払い能力を上回る可能性があり、他の金融機関からの借り入れで返済を行うことは制限すべきだからだ。また、BNPLのビジネスモデルは長年、構造的・循環的課題に直面しており、ユーザーの懸念を払拭できていない」と述べる。

 米国消費者金融保護局は2022年、BNPLに対する規則や指針を検討していると発表した(注7)。同局は信用調査機関に対し、消費者の信用プロファイルにBNPLを考慮するプロセスを開発するよう求めているが、現時点で進展は見られない(注8)。

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