人やコストに限りがあるのは各国共通の悩みだ。特に金額的に大きな挑戦となることの多いDXで、どこにどれだけのリソースを投入するかに頭を悩ませる企業は多い。DXの実践段階にある中国企業はどのような選択をしているのか。アンケート調査結果を見てみよう。
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世界有数のデジタル大国となった中国。先進的な工場や世界の時価総額ランキングで上位に入る企業が目立つ一方で、日本では中国企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)の現状はあまり知られていない。
この連載では、「組織構造」「企業文化」「DX実践」という3つの視点から、DX実装(DX推進)における中国企業の特徴を考察する。
この連載の第1回では「組織構造」を、第2〜3回では「企業文化」を考察した。今回は中国企業で実際どのようにDX実装が行われているのか、その活動に触れる。
まずは中国先行企業に共通する取り組みのスタンスを3つ紹介する。なお、これらはいずれも筆者の見立てであり、“唯一解”ではないことをお断りしておく。
本来の意味:量的変化から質的変化へ移行すること
ここでは転じて、DXにおける実装は投入資金やトレーニング期間、導入する技術の種類などが一定量以上になってこそ質が高まるものだということ。また、最初から完璧を追求するのではなく、行動力(量とスピード)を求めるべきだとの意味。
本来の意味:統一して計画し、利害関係者に配慮すること
ここでは転じて、DXの企画や調達、実施においては、統一部署による一元管理を行うことでコストダウンを図るという意味。
中国の中期政策大綱である「第十四次五カ年計画」(2021〜2025年が対象)で初めて提案された造語。クラウドコンピューティング(上雲)やビッグデータ(用数)、人工知能(賦智、AI)の活用を促進することを指す。
具体的には政府主導やプラットフォーム援助、トップ企業引率、協会サービス、第三者機構サポートといった聯合(連合)型推進体制を構築して、デジタル技術利用の障壁(利用コストや人材トレーニング、汎用《はんよう》プラットフォームの利便性など)を打破することで、中小企業でも容易に始められる包摂的サービスを提供する。
サービス提供に当たっては、以下の3つの「一般企業が抱えやすい悩み」の解消を目指す。
DX政策に関連する内容は、次回以降で紹介する。
上記で紹介した「3つの言葉」では抽象的すぎて分かりにくいと思う読者もいるだろう。「組織構造を改革した」「企業文化も定着しつつある」企業が次にやるべきことは何か。DXを実装する時、リソースが限られている中でまずどんなことに注力すべきなのか。
これらを明らかにするために、清華大学グローバル産業研究院(Institute for Global Industry,Tsinghua University)が2021年11月に発表したアンケート調査結果の「中国企業におけるデジタルトランスフォーメーション研究報告書」(2021)(注1)から、「DX実践」に関連する内容を抜粋して実例とともに紹介する。
まず、DX実装のための投資額で1000万〜1億元未満は約49%、1億元以上は約26%で合計約65%の企業が過去3年間で巨額投資(為替レート:1元≒20円)したことが分かる。
そして、2020年売り上げに占めるDX投資比率をみると、「0.5〜1%未満」は約35%、「1〜5%未満」は約32%だった。「5%以上」の4.1%を合わせると、売り上げの0.5%以上をDX実装に投資している企業の割合は7割を超える。中国企業の多くがDX実装に注力していることがうかがえる。
さらに、DX実装投資額の年次増減傾向では、2020年の投資額が前年比増加している企業の比率は合計約66%であり、特に「50%以上増」と超えた企業は約25%もあった。
今後3年間のDX実装投資額見込みを聞いたところ、投資額を増加させる企業は合計約85%(「小幅な増加予定」:54.5%、「大幅な増加予定」:30.1%)で、今後も継続的に資金投入する意欲を強く感じる。
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