では、DXの予算を確保するために、中国企業はどのような取り組みをしているのか。下記に一例を紹介する。
広州汽車集団では、データ情報本部がグループ会社および各主要子会社(広汽研究院、広汽乗用車、広汽埃安の3社。3社合わせて「G3」と呼ぶ)のDX需要をまとめて総合的に企画したり予算を立てたりした後、DXサービス業者と年度計画を立てた上で契約を結ぶという、グループ全体で一括した購買活動を実施している。
DX予算は、段階的に子会社に責任を負わせるよう工夫している。
こうして広州汽車集団ではそれぞれ関連企業の売り上げ収入や経営原価、従業員人数、業種、デジタル推進度合いにフィットしたDX実装資金の投入体制を整えている。
では、資金を投入後、やらなければならないことは何だろう。筆者は下記2つの努力が重要だと考える。
トップレベルのDX人材を複数採用することが重要だ。ただし、従業員全体のDXへの意識を高める方が大切であることは、アンケートに回答した企業に共通する認識のようだ。そこで、2019〜2020年にDX関連の研修費用と研修期間がどのように変化したかをみてみよう。
図6によると、「0~50%増」した企業は「研修費用」では約67%、「研修期間」では約59%と最も高かった。「50%以上増」した企業も「研修費用」では約11%「研修期間」では約18%で3位に食い込んだ。つまり「従来よりも研修期間を延長して研修費用を増やす」という手法は広く採用されているといえる。
では、研修内容は具体的にどのようなものなのか。下表で3例挙げる。
一方、外部から調達する製品やサービスに関して、中国の有力企業は次のように投資している。
投資する企業の割合が高い順にみると、「ソフトウェアの導入」(93.5%)、「ハードウェアの構築」(65.0%)、「専門性サービスの購入」(53.7%)がトップ3で、どれも半数以上の企業が実施している。特に目立つのが9割以上の企業が実施した「ソフトウェアの導入」だ。当たり前のようだが、「ソフトウェアの導入」「ハードウェアの構築」はDX実装に不可欠だ。
では、どのようなDX技術が実際に活用されているのか。下表でみてみよう。
「活用されているDX技術」「成果を上げたDX技術」ともに「ビッグデータ」が最も多く、クラウドコンピューティングとAI(人工知能)が続いた。クラウドコンピューティング技術の応用に積極的なのは中国企業の特徴の一つだ。以下、クラウドコンピューティング技術の応用事例を幾つか紹介する(図10)。
なお、次回(最終回)は下記の3つの視点から「DX実践」の成果をまとめ、「アンケート調査結果に見る中国企業のDX推進トレンド」の連載を締めくくる。
(注1)清華大学グローバル産業研究院は2018年から「中国DXパイオニア企業ランキング」と「中国企業におけるDX研究レポート」を年1回発表している。3回目の発表となる2021年版は、123社を対象として2021年9〜11月の間に実施されたアンケート調査および個別ヒアリングの結果をまとめたものだ。調査に回答した企業のプロフィールはこちらにまとめている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.