Microsoft Build Japanが開催 企業のAI活用を支援する新たな取り組みを紹介(2/2 ページ)

» 2023年07月03日 08時00分 公開
[大河原克行ITmedia]
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デジタル庁、弁護士ドットコム、三菱UFJ銀行もAIを活用

 基調講演にはデジタル庁の山本教仁氏(クラウドユニット シニアエキスパート)の山本教仁氏、弁護士ドットコムの市橋 立氏(執行役員 技術戦略室長兼クラウドサイン事業本部 副本部長)、三菱UFJ銀行の各務茂雄氏(デジタルサービス企画部部長 CDTO補佐 兼 特命経営企画部部長)も登壇した。

デジタル庁の山本教仁氏

 山本氏はガバメントクラウドにおけるIaC(Infrastructure as Code)の考え方を説明した。デジタル庁はガバメントクラウドにおけるIaCテンプレート開発に、生成AIを活用する実証実験を行っており、山本氏は「GitHub CopilotによってIaCテンプレートを自動的に生成できる。テンプレートに関する疑問も生成AIに聞けば説明してくれる。ガバメントクラウドの管理にも生成AIを活用できる」と話した。

弁護士ドットコムの市橋 立氏

 市橋氏は弁護士ドットコムが2023年5月にα版の提供を開始した「チャット法律相談」を紹介した。同社はもともと利用者の質問に対して弁護士が回答する「みんなの法律相談」を提供しており、ここに蓄積された約125万件のデータをチャット法律相談に活用している。

 「AIは専門性のある領域と相性がいいと考え、2016年から『IBM Watson』を活用した実験に取り組んできた。その経験を生かしてAzure OpenAI Serviceを活用し、チャット法律相談を開始した。ユーザーは24時間365日、すぐに回答を得られる。このサービスは弁護士を代替するのではなく、依頼者と弁護士の間を取り持つサービスになると考えており、『二割司法』(十分な司法サービスを受けられる人が2割しかいない問題)と呼ばれる状況を打開したい」(市橋氏)

三菱UFJ銀行の各務茂雄氏

 各務茂雄氏は「(三菱UFJ銀行の)全行員がAIを活用することで、アナログな『おもてなし』の価値を最大化できる。DXとデータドリブン経営はほぼ同義語であり、生成AIは情報の分断を解決できる。また、日本人特有のあいまいさを許容してくれるのがChatGPTの特徴であり、さまざまな仕事の行間を埋めて、可処分時間をリスキリングなどに投資できるようになる」と述べた。

 三菱UFJ銀行では生成AIを活用することで、稟議アシストサポートで44%、手続き照会で60%の行員が効果を実感しているという。また、金融レポート要約サポートでは作業時間が40%削減できている。

 講演の冒頭に発表されたMicrosoft AI Co-Innovation Labは世界で5拠点目だ。2023年秋の設立を予定している。また、岡嵜氏はAzure OpenAI Serviceレファレンスアーキテクチャの公開も発表した。日本マイクロソロフトが推奨するAzure OpenAI Serviceの活用シナリオとアーキテクチャを示したものであり、「Microsoft Base」のコンテンツポータルを通じて2023年7月から順次公開していく。

 日本マイクロソフトは「Azure OpenAI Serviceレファレンスアーキテクチャ賛同パートナープログラム」を立ち上げ、賛同パートナー各社の実績やソリューションを紹介するとともに、顧客に対して最適なパートナーの選定を支援するようだ。賛同パートナーには既に45社が参加を表明している。

 岡嵜氏は講演の最後に「生成AIの効果については疑う余地がない。ポイントは『どこで活用するのか』『どうやって作るのか』『いかにスピーディーに実現するのか』『なぜやるのか』という点だ。生活や世の中をよくするために、MicrosoftはAI事業を開発者とともに推進していく」と話した。

左から津坂氏と岡嵜氏
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