これからPaaSの時代が来る――そう感じさせるServiceNowの“動き”とはWeekly Memo(2/2 ページ)

» 2023年07月03日 13時10分 公開
[松岡功ITmedia]
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アプリケーション開発に求められる4つの変革とは

 ここまで見てきたように、ServiceNowの勢いは業績に表れている。筆者が日本における同社をめぐる動きで注目したのは、富士通やNECなど日本のITサービスベンダー大手が相次いでServiceNowのグローバルパートナーとして本腰を入れ始めたことだ。特に、富士通は2023年度(2024年3月期)内にServiceNowの認定資格保有数を1万以上とすると明言した。この動きは、まさしく富士通がServiceNowのPaaSを中心としたソリューションについて、今後のDXビジネスに不可欠と判断した証だ。これからPaaSの時代が来るのではないかと感じさせる動きである。

 果たしてPaaSの時代は来るのか――。この問いかけに対し、今回のイベントの基調講演で鈴木氏に続いてスピーチを行ったIDC Japanの木村伸一氏(リサーチマネージャー)が興味深い見解を述べていたので紹介しよう。

 1つ目は、これからクラウド上で新しく開発されるアプリケーション数の推移を予測したものだ(図3)。木村氏によると、「DXの進展で企業は社内外に向けて多くのアプリケーションを展開していくのが必須になっていく。IDCは2025年までに7.5億本以上のクラウドネイティブアプリケーションが開発されるとみている」とのこと。その推移は、図3の左グラフのようになる。

図3 これからクラウド上で新しく開発されるアプリケーション数の推移予測(出典:「ServiceNow Creator Day 2023」の基調講演資料)

 さらに、「過去約40年間に開発されたアプリケーションと同程度のアプリケーションが、この4〜5年間で開発される」とも木村氏は述べた。「こうした大量のアプリケーションを開発するに当たっては、開発の手法や環境を抜本的に変革する必要がある」(木村氏)

 もう一つが、ではどう変革すればよいのかという点だ。木村氏は4つのポイントを挙げた(図4)。開発手法が「ウォーターフォールからアジャイル、DevOps(開発と運用の連携)へ」、アーキテクチャが「モノリシックのクライアント、サーバーからクラウドネイティブなマイクロサービスへ」、開発環境・プラットフォームでは「統合開発環境に加えてローコード/ノーコード開発プラットフォームも」、開発者は「ソフトウェア開発者やソフトウェア開発会社への外注に加えて市民開発者(開発の民主化)も」といった内容だ。

図4 これからのアプリケーション開発に求められる4つの変革(出典:「ServiceNow Creator Day 2023」の基調講演資料)

 「これら4つの変革によって、企業組織はデジタルビジネスにおける大量のアプリケーションを開発できるようになるだろう」との見解を同氏は示した。

 そして、これら4つの変革を実施する舞台こそがPaaSというわけだ。

 クラウドサービスと言えばIaaS(Infrastructure as a Service)とSaaSが目立ちがちで、その間のアプリケーション開発基盤となるPaaSはそのどちらかに含まれて語られるようになった印象がある。だが、DXの進展に伴ってこれからPaaSの時代が来るのではないか。ServiceNowの勢いからそう感じた次第である。

著者紹介:ジャーナリスト 松岡 功

フリージャーナリストとして「ビジネス」「マネジメント」「IT/デジタル」の3分野をテーマに、複数のメディアで多様な見方を提供する記事を執筆している。電波新聞社、日刊工業新聞社などで記者およびITビジネス系月刊誌編集長を歴任後、フリーに。主な著書に『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。1957年8月生まれ、大阪府出身。

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