富士通、NTTデータ、NECの取り組みから探る「ITサービスベンダーはなぜコンサルティングに注力するのか」Weekly Memo(2/2 ページ)

» 2023年07月18日 14時10分 公開
[松岡功ITmedia]
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求められる「経営変革」へのコンサルティング能力

 NTTデータは、2年目に入った中期経営計画(2022〜2025年度)の重点戦略の一つとして、「Foresight起点のコンサルティング力強化」を掲げている。同社の本間 洋氏(社長)は2023年5月11日に行った記者会見で、次のように説明した。

NTTデータの本間 洋氏(社長)

 「この戦略ではForesight、あるべき姿を起点としたコンサルティングによって、お客さまと新しい価値を共創する取り組みを進めている。例えば、保険業界のForesightを基に『ヘルスケア共創ラボ』を設けて、お客さまやパートナー企業との共創の機会をつくっている。当社ならではの取り組みとして、経営からITまで一体となったコンサルティングブランドを確立していきたい」

 さらに、この会見の質疑応答で「当社ならではの取り組みとは何か」と聞いた筆者の質問に、同氏は次のように答えた。

 「当社にとってコンサルティングは、とりわけ、お客さまのDXを支援する上でますます重要なケイパビリティとなっている。当社としては、提案しっ放しではなく、確実にシステムとして実現させることで、お客さまから確固たる信頼を得ることを重視している」(図3)

図3 Foresight起点のコンサルティング力強化(出典:NTTデータの「中期経営計画(2022〜2025年度)」会見資料)

 本間氏は、2023年3月27日掲載の本連載記事「『SIerはもう古い?』という問いにNTTデータの本間社長はどう答えたか DX時代のSIerの在り方を聞いてみた」でも、「コンサルティング分野では、グローバルで事業を展開する大手のコンサルティング会社がSI(システムインテグレーション)も手掛けて事業を成長させている。私たちも負けないようコンサルティング力を強化したい」と、コンサルティング会社への対抗意識をあらわにしていた。

 NECは、3年目に入った中期経営計画(2021〜2025年度)で高成長を見込んでいる「コアDX」事業において、グループ会社のアビームコンサルティングを軸にコンサルティング事業の強化を図っている。同社の森田隆之氏(社長 兼 CEO)は2023年6月1日に行った記者会見で、次のように説明した。

NECの森田隆之氏(社長 兼 CEO)

 「DXは単に共通技術基盤の話だけでなく、オファリングのモデルやメソトロジーなども含めてどんどん広がっていく。そうした中で、当社は上流のアジェンダ設定から課題抽出、DXテーマの設定、システムの実装、運用までをアビームと連携しながら提供していく。当社は国内のグループで現在7000人規模のコンサルタントを抱えており、こんなITサービスベンダーは他にない。コアDX事業で高成長を見込んでいるのは、共通技術基盤を活用することによって従来の個別SIを置き換えていけると考えているからだ。そうすると、人月商売のモデルが変わり、お客さまとの関係がプロジェクト単位ではなく、戦略アジェンダを共に解決する形に変わる。そうした変化に向けて、私たちは今、確かな手応えを感じている」

 さらに、「企業におけるDXの取り組みは、かつてはIT部門の仕事として捉えられていたが、今は経営そのもの。すなわち、CEOの仕事だと認識されるようになってきた。それに伴って、私たちもこれまでとはお話しする相手が変わってきている。さらに、これまでお付き合いのなかったお客さまとの取り引きが広がっている。当社としてはこうしたニーズにしっかりと対応していきたい」とも述べた(図4)。

図4 コアDX事業の拡大に向けてコンサルティングを強化(出典:NECの「中期経営計画(2021〜2025年度)」会見資料)

 以上が、ITサービスベンダー大手3社のコンサルティングに向けた取り組みだ。とりわけ各社の経営トップの思いを聞いていると、なぜITサービスベンダーがここにきてコンサルティングに注力しているかが見えてくる。それは、顧客ニーズの多くが「DXを推進するため」であり、そのDXがデジタル技術を活用した「経営変革」であるからだ。従って、デジタル技術の活用法もさることながらビジネスとマネジメントの変革に向けたコンサルティング能力が今、強く求められているのである。

 加えて、もう一つ重要なキーワードが顧客との「共創」だ。DXは顧客であるユーザー企業が主導すべき取り組みなので、コンサルティングもかつての先導型でなく「伴走型」であることが望ましい。この点はITサービスベンダー各社も試行錯誤を重ねているようだ。もう後戻りすることはないだろうから「伴走型コンサルティング」を追求していくしかない。

 伴走型コンサルティングの追求については、コンサルティング会社も同じだ。とりわけ、冒頭で紹介したIDCのレポートで国内ITサービス市場にインパクトを及ぼすようになってきたアクセンチュアが、今後どのようなアクションを起こしていくかにも注目していきたい。

著者紹介:ジャーナリスト 松岡 功

フリージャーナリストとして「ビジネス」「マネジメント」「IT/デジタル」の3分野をテーマに、複数のメディアで多様な見方を提供する記事を執筆している。電波新聞社、日刊工業新聞社などで記者およびITビジネス系月刊誌編集長を歴任後、フリーに。主な著書に『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。1957年8月生まれ、大阪府出身。

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