人が倉庫を駆けずり回るのはもう終わり? ウォルマートが最先端配送センターを開設Retail Dive

世界最大規模のスーパーマーケットチェーン、Walmartが最先端の配送センターを開設したと発表した。ロボットやAIと人間が協業する配送センターは商品をどのようにさばくのか。受注から配送に至る4ステップを見てみよう。

» 2023年07月20日 08時00分 公開
[Nate Delesline IIIRetail Dive]

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 Walmartは2023年6月15日、米国インディアナ州インディアナポリス近郊のマッコーズビルに220万平方フィート(約20万平方メートル)のフルフィルメントセンターをグランドオープンした。2022年に起きたフルフィルメントセンターの全焼後に数千人を一時解雇した同社は、今回のグランドオープンに伴って大量のスタッフを雇用した。

AIやロボットはどのように荷物をさばくのか

 フルフィルメントセンターとは注文が入った商品のピッキングから梱包(こんぽう)、発送、配達後の返品などの対応までの一連の作業を担う施設だ。同社はプレスリリースで「今回開設するフルフィルメントセンターはこれまでで最大のものとなる。より多くの注文により迅速に対応できるようになる」と述べた(注1)。新施設の開発や開設にかかった費用への明言は避けた。

 Walmartは2023年6月3日の発表で(注2)、4つの最先端のフルフィルメントセンターが、現在オンライン注文を処理するために使用している31のインターネットショッピング向けフルフィルメントセンターと4700の店舗を補完する」と述べた。

 Walmartは、倉庫とフルフィルメントセンターの労働力を再集中させているようだ(注3)。

 今回開設した新拠点は、同社が2022年に発表した、今後3年間で4つのフルフィルメントセンターを開設する計画の一環だ(注4)。フルフィルメントセンターは、人とロボット工学と機械学習(ML)を含めたAI(人工知能)を組み合わせて、フルフィルメントのスピードに新たな基準を設けるという。次世代型フルフィルメントセンターの開設によってWalmartは管理技術者や監査アナリスト、工程管理を行うフローマネジャーなど技術に特化した新たな職種の雇用を見込んでいる。

 Walmartによると、新しいフルフィルメントセンターが開設した後は、米国人口の95%に注文の入った翌日、または翌々日の配送が可能になるという。

 Walmart U.S.のカリサ・スプラグ氏(フルフィルメントネットワークオペレーション担当シニアバイスプレジデント)は、声明で次のように述べた。「オンラインで買い物をする顧客が増えている中で、われわれは最先端技術を活用して配送スピードを向上させる。同時に、従業員に技術力を身に付ける機会を創出している」

 同社によれば、新しいフルフィルメントセンターにおける4段階のプロセスは以下の通りだ。

(1)スタッフがフルフィルメントセンターでトラックからケースに入った商品を降ろし、ベルトコンベヤーに載せて入荷に回す

(2)入荷担当者がケースを開封し、個々の商品を荷箱に入れる。荷箱は大型の自動保管システムに追加され、指定された場所までシャトル輸送される。この保管システムは、在庫保管庫における床から天井までの全ての空間を管理できる

(3)顧客がオンライン注文をすると、システムが自動的に商品を取り出し、ピッキングステーションにいるスタッフの下に運ぶ。Walmart は「1日当たり9マイル(約14・5キロ)も歩き、数万平方メートルのスペースに広がる複数のフロアの棚から商品をピッキングしてきた従業員にとって、かなり楽になるだろう」と述べた

(4)注文された商品の寸法にぴったりと合うカスタムボックスが作成される。Walmart によると、スタッフは同時に最大4つのカスタムボックスを組み立てることができ、顧客の注文から30分以内に出荷できると見込んでいる

(5)最後に、完成した注文は自動的に密封され、ラベルが貼られ、最終目的地へ配送するために指定されたゾーンに送られる

 新しいフルフィルメントセンターは、マッコーズビルで約1000人を雇用する予定だ。マッコーズビルフルフィルメントセンターのジェフリー・アップルビー氏(部長)によると、マッコーズビルセンターで働く従業員の約半数は、以前はインディアナ州プレーンフィールドにあった同社の配送センターで働いていた。2022年春に、プレーンフィールドの配送センター(約120万平方フィート)は火災で全焼した。重傷者は出ていない。地元の報道によれば(注5)、1年以上たった現在も出火原因は調査中だ。Walmartは市と地元当局に数百万ドルの損害賠償を求めている。

 Walmartはインディアナ州に約4万3000人の従業員と127の小売店舗を抱えており、2023会計年度にはインディアナ州のサプライヤーと11億ドルの取引を見込んでいる。荷主から荷物を預かって注文への対応から発送、返品までの一連の作業を請け負うサードパーティーフルフィルメントサービス部門であるWalmart Fulfillment Servicesも(注6)商品を配送するために新しいフルフィルメントセンターを使用する。

 2023年初頭にWalmartは複数の州で配送センター、倉庫、フルフィルメントセンターの従業員数千人を一時解雇した(注7)。

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