Copilotを使いたいならクラウド移行一択 MicrosoftのERP移行支援プログラムの中身

Copilotを使いたいならクラウド移行は急いだ方が得策のようだ。MicrosoftがERPのクラウド移行支援プログラムを始める。Dynamicsファミリーの既存ユーザーはメリットを得られるだろうか。

» 2023年08月24日 12時00分 公開
[Jim O'DonnellTechTarget]

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 「Microsoft AIM」は、オンプレミスの「Dynamics ERP」ユーザー企業のクラウド移行を支援する新しいプログラムだ。Microsoftとパートナー企業からユーザーにガイダンスやツール、サービスを提供する。

 Microsoftは2023年7月の年次パートナーカンファレンスにおいて、オンプレミスの「Dynamics 365」を利用する企業に対してクラウド移行を支援する新しいプログラムを発表した。

 「Accelerate Innovate Move」(AIM)プログラムはMicrosoftのERP「Dynamics AX」「Dynamics CRM」「Dynamics GP」「Dynamics NAV」「Dynamics SL」「Dynamics 365 Business Central」をオンプレミスで利用する企業を対象としたクラウド移行サービスとツールを提供する。

Copilotのメリットをいち早く獲得する近道

 Microsoftのバイスプレジデントであるジョバンニ・メジェック氏はブログ記事において「Dynamicsの製品ポートフォリオ全体にも組み込まれる『Copilot』をはじめとした生成AI(ジェネレーティブAI)の急速な普及に伴い、同サービスのメリットを享受するにはオンプレミスのDynamicsユーザーもクラウドへの移行が求められている」とAIMプログラム提供の意図を説明した。

 メジェック氏はまた「オンプレミスのアプリケーションに依存するユーザー企業は、クラウドでAIを導入して活用する同業他社との競合に苦戦するだろう」とも指摘する。

 「重要なビジネスプロセスをクラウドに移行することが、ユーザー企業にとって今の最重要課題だ」(メジェック氏)

 AIMによるクラウド移行プロジェクトには以下の3つの特徴がある。

  • クラウド移行の評価:ビジネス上の価値、期待される導入効果、オンプレミスからクラウドへの移行に必要な手順を把握できる
  • Microsoftのサービスとサポートの利用:ユーザーは「Dynamics 365」アプリケーションを設計、構築、使用するための体系的なガイドである「Success by Design」をはじめ、Microsoftと認定パートナー企業が提供する導入ガイダンスとサービスを利用できる。また「Microsoft Dynamics 365 Implementation Portal」の使用に関するガイダンスや、対象となるユーザー向けの「Microsoft FastTrack」アプリケーションアーキテクトとの連携も利用できる
  • ライセンス提供によるクラウド移行の拡大:ユーザー企業は必要に応じて基幹業務システムを段階的に移行できる

Microsoft AIMは「Rise With SAP」と同様のクラウド移行パスなのか

 IDCのエンタープライズアプリケーショングループ バイスプレジデントであるミッキー・ノース・リザ氏は、オンプレミスERPユーザー企業のクラウド移行を支援する上で、Microsoftが目指す移行パスは、Rise With SAPと類似していると指摘する。

 「SAPも同様にパートナー企業と連携してオンプレミスユーザー企業のクラウド移行を支援している」と同氏は述べる。

 ERPのクラウド移行の必要性はますます差し迫ったものになっている。リザ氏は、「IDC SaaSPath 2023」レポートにおいて、企業の44%が今後3年間でERPをオンプレミスからSaaS(Software as a Service)ERPソリューションに移行する計画を立てていることが判明したことをその根拠に挙げている。同レポートは、23のエンタープライズアプリケーションのユーザー企業2875人から回答を得たものだ。

 「Microsoftのパートナー企業は『AIM』を活用すると、ユーザーが移行前に状況を評価できるよう支援するツールとリソースを利用できるようになる」とリザ氏は説明する。

 リザ氏は「このツールでは、オンプレミスERPからクラウドERPへの移行のみならず、『Microsoft Dynamics 365』アプリケーションの設計、構築、導入に関する規範的ガイダンスも利用できる」と説明し、「パートナー企業は、企業が体系的にクラウドに移行できるよう『Success by Design』の(導入)ツールとガイダンスを利用できる」とそのメリットを強調した。

 Technology Evaluation Centersの主席業界アナリストであるプレドラッグ・ヤコヴリェヴィッチ氏も、「AIM」とRise with SAPの類似点を指摘する。同氏によると「AIM」はMicrosoftのパートナー企業が利用可能な「クラウド移行ツールの商用パッケージのようなもの」だ。

 「(どちらにせよ)ユーザーのクラウド移行を支援するものであれば多少は有益なはずだ」と同氏は述べる。しかし、ユーザーのクラウド移行に関して見ると、Microsoftは一般的に見て大規模なオンプレミスのレガシーシステムを持つ企業をユーザーとするSAPと同様の問題を抱えているわけではない。

 「(Microsoft Dynamicsのユーザーは)、1990年代に導入したSAP(のユーザー)よりもはるかに小規模な企業で、カスタマイズもあまり必要とされない」と、ヤコヴリェヴィッチ氏は言う。「今後、『Dynamics GP』や『SL ERP』などのレガシーシステムのユーザー企業がクラウドへ移行する際、『NetSuite』や『Acumatica』などの他社製品に移行させないようにすることが、Microsoftにとってますます重要な問題となる」

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